女1人北インドの記録 ⑤ジャイプルで映画館に行く
ジャイプルを観光してたらプロポーズされたけど即フラれたよ!という話
インド1週間目、倒れる
ジャイプルに着いてから、ずっとゲロを吐いていた。
吐き気がある程度収まった後もホテルの部屋で1日中寝込んでいた。
ちょっとだけ良いホテルを予約していたのが不幸中の幸いで、イギリス統治時代の建物を利用した部屋はとても広くて居心地が良かった。
支配人である銀髪の美しいおばあちゃんは、食堂で会っても「I don't feel good」しか言わない私にバナナとリンゴを切ったものを届けてくれた。
2日目の朝、日本から持ってきたルルアタックEXとビオフェルミンを飲んで、昼過ぎまで寝たら熱は下がったように思えた。
「これはイケるぞ」とリキシャを捕まえ、ジャイプルの名所City Palaceに行ってみた。
ダメでした
ピンク色の土壁に細かい細工が施された美しい建物を観ながら、やはりゲロを吐いていた。
風邪のだるさどころではない半端ないだるさ、全身から血の気が引いて冷や汗が出て、胃に何も入っていないのに吐き気は止まらずしばらく動けなかった。
美しいCity Palaceの側溝に吐きながら(本当にごめんなさい)、やっとのこさリキシャを捕まえてホテルに舞い戻った。
運転手は青い顔で震える私を見ながら「一晩寝たら大丈夫だ!帰ったらすぐ寝ろ!明日迎えに来てやるから朝からジャイプルツアーするぞ!」とうるさい。
早く静かになってほしかったので黙って頷いていた。
ジャイプルツアー
次の日目が覚めると、昨日の運転手の言った通り本調子ではないが大分回復していた。
運転手は約束の時間から30分遅れてやってきて、半日5000円くらいでジャイプルの主要な観光地を巡ってくれた(多分ちょっとボラれてるけど、まあいいや)。
途中ブロックプリント(版で布に模様をつけるインドの伝統工芸)の工場で出会ったBabaとは日本に帰った後もWhatsappで連絡を取り合っている。
この半年後コロナで工場の経営が危ういと連絡が来た時は、私と日本の友人何人かで彼の工場の布やマスクを買った。柄がとても可愛いのだ。
ピンクシティ
ピンクシティの中心でツアーは終わった。
まだホテルに帰るには早いのでぶらぶらしていると、Gudduという青年が話しかけてきた。
「ジャイプル名物の宝石を見せてあげるよ」
ピンク色の建物の3階にある、小さな宝石工房を見せてもらった。小さな宝石やそれを加工した指輪が500円前後から買うことができるようだ。
私が全く宝石を買おうとしないので諦めたのか、すぐ横の建物にあるルーフトップバーに連れて行ってくれ、一緒にキングフィッシャーを飲んだ。
「僕は日本人と結婚したいんだ。日本人と結婚すればビザが貰えるだろ?日本で働いてお金を稼いで、大学に行きたい。エンジニアリングを学びたい」
「この下には教会があって結婚式を挙げることができるんだよ。今すぐ行こう」
「ぼくは君みたいな女性が好みなんだ。日本人の女の子は優しいんだろ?結婚しよう」
と、お菓子の包み紙をねじってゴミ婚約指輪を作ってくれた。
私は、ふんふん、日本人なら誰でも良いのね、と話半分に聞いていたが、だんだん「異国で全然知らない人間と突然結婚して帰ってくるのって、結構面白いんじゃないか?」という気持ちが湧いてきた。
もちろんGudduが冗談半分で私にプロポーズしているのは分かっていたが、「よし結婚しに行こうや!」と店を出た。
が、予想外に乗り気な私を見て引いたのか、Gudduは「ごめんウソ。マジでウソ。バイバイ」と言って逃げるようにそそくさとどこかに行ってしまった。
ぇえ。フラれた。
さてどうしたものか。
ピンク色の街並みを見ながら1人寂しく何をしようか考えていたが、ふと、インド映画を観に行ってみようと思いついた。
沢木耕太郎の「深夜特急」で彼はインドで映画を観て「言葉が分からなくても不思議と物語が分かった」というような事を書いていたし、そもそも私はインド映画が大好きだ。一緒に踊りながら観るほど好きだ。
おじいちゃんが運転するリキシャを捕まえて、近くで1番大きな映画館に連れて行ってもらった。
インド映画を観る
予想以上に映画館は大きかった。
まるでテーマパークの中のような嘘みたいに華美なホールにはたくさんの人がいて、ポップコーンや飲み物を買っていた。
天井も壁もきらきらしていて、立ち話をしたりジュースを啜ったりしている人々もとっても楽しそうだ。
ホールの周囲を囲むように大階段がぐるっと伸びていて、上がっていくと1000人くらいは余裕で座れそうなこれまた巨大なシアターが現れた。
チケット売り場で「1番安いの!」と叫んだけど「VIP席以外売り切れだ」と1番高い席を買わされた(絶対嘘だろ)私は、後ろの方にある赤いビロードのボックス席の中に座った。
映画のオープニングが流れると同時に客席からどよめきが起こった。
Dabangg3 というその映画はみんな大好きサルマーン・カーンが出ているというのもあって人気のようだ。
時々歓声が起きたり、笑うシーンでは皆声をあげて笑って盛り上がる。
シリーズものの3作目、しかもヒンディー語。
だが何故か日本語と英語しか分からない私でもストーリーだけはある程度理解できる。
サングラス姿のムキムキのダバングがテンポ良く敵を倒していく。ダバングとヒロインの出会い、どうしてダバングがダバングになったのか?などが感情たっぷりに描かれ、確かに面白い。
途中ヒロインが悪役に捕まり崖から落とされて殺されたところで休憩になった。
インド映画は長いので休憩時間があるのだ。
休憩時間には皆シアターの外に出てサモサなどのスナックを買って戻ってくる。
私もサモサが食べたかったけれど、おそらく前回食べたサモサのせいで体調を崩したので何となく辞めておいた。
休憩が終わり映画が再開する。
ハリウッド映画だとヒロインが死んでも最後の方で「実は死んでませんでした〜!」と出てきてヒーローと結ばれて終わり、みたいな展開が多いのでそれを期待していたが、ヒロインは死にっぱなしで二度と出て来ることはなかった。
ともあれ面白い映画だった。