【特集6月号】おすすめエンタメ-NOVEL-
梅雨はどこ行ったのかと首をかしげてしまうほど、六月にして猛暑が続いている。
そんな日はぜひ、クーラーの効いた自宅に引きこもって読書をしよう。
ちなみに、前回に書いたおすすめ映画の記事はこちら。
パラレルワールドラブストーリー / 東野圭吾
映画化もされた作品。ガリレオシリーズやマスカレードホテルシリーズに比べれば目立っていない東野圭吾の作品だが、私は好きだ。
何がいいって、そこにある人間ドラマだ。嫉妬や羨望、人間の身勝手さや投げやりさ、優しさ、様々な感情が混ざり合って起こった奇跡がここにある。
パラレルワールドを生み出した論理に、なるほどと思わされる。
この物語の人物たちのこれからが(決して幸せなものだばかりではないと推測されるが)とても気になる。
コンビニ人間 / 村田沙耶香
唐突だが、これは私の物語である。
普通に生きられない主人公の感性、五感、感情などが渦となって私を締め付けていくようだった。それでも、この社会で生きる為に「普通」を装う姿が生々しくて、それでも時折投げられる「なんで結婚しないの?」「なんで就職しないの?」が、とても痛い。ごめんなさい、と思いながらページを進めてしまう。
自分を痛めつける為にも私はこの作品を読まずにはいられない。愛読書のひとつだ。
BAD KIDS / 村山由佳
今ほどセクシャリティについて取り上げられていなかった時代の作品。中学生の頃、私はこの本に出会って衝撃を受けた。
それまで私は「異性に恋をする」事が当たり前なのだと疑う事すらしなかった。インターネットが栄えていない(もしくはまだ誕生していない)時代、それ以外のセクシャリティを知る術を持っていなかったのだ。
本の中で、同性を好きになったことで悩む隆之に都は言う。「無人島に男女を同じ数だけ放り込んだとして、必ずしも男女ペアができるわけではない」
その通りだ。この本によって私の価値観は変わった。そして、恋をすることもままならない私の心の拠り所にもなった。
残念なことに現在は絶版されているようだが、私の本棚には今も大切にこの本が仕舞われている。
同シリーズの「海を抱く BAD KIDS」もおすすめだ。
海辺のカフカ / 村上春樹
村上春樹の小説でどれが一番好きか、と訊かれれば、迷わず私は「海辺のカフカ」と答える。
まず作品のキャッチコピーおよび文中に何度も出てくる言葉がいい。「世界でいちばんタフな15歳の少年になる」。何度、選民意識を拗らせた青春時代の私を駆り立ててくれた事か!
村上春樹の何が好きか、と訊かれれば、迷わず私は「文章だ」と答える。
純文学らしく、たった一言で終わる説明が、時にはくどい比喩表現を用いられる事もあるのだが、それすら美しい。
生きていくという事、覚悟を持つという事、出会うという事、それらを噛みしめながら、私もまた読み返したい。
グラスハート / 若木未生
まだライトノベルという言葉がなかったように思われる(当時は少女小説などと呼ばれていたかもしれない)時代の小説。もとは集英社コバルト文庫で出版された作品だ。
中学生の頃にこの作品に出会った私の原点である。文章の書き方、句読点の使い方など、ずいぶんと影響を受けたという自覚がある。
バンドもの、と一言で片付かないほど、さまざまな人間ドラマが繰り広げられる。恋愛ひとつにしても一筋縄ではいかない、天才たちの攻防、そして天才ゆえの弱さ。世間を動かすほどの音楽は、いったいどれだけの犠牲を払って生み出されるのだろうか。それは、小説でも絵画でもきっと変わらない。
こちらも絶版になっているが、私はコバルト文庫版を今でも大切に保管している。
幻冬舎版で全5巻。