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比叡山のオーラに包まれた雲母湯
京都の鴨川といえば、定番のデートスポットとして有名で、それぞれのカップルたちが同じくらいの間隔を空けて川縁でイチャつくという、いわゆる「鴨川等間隔」現象が今日も起こっているのですが、その鴨川の上流は、出町柳という場所でふたつに枝分かれしており、西側は鴨川と同じ読みの賀茂川、東側は高野川という名称に切り替わります。
その東側の高野川を越えてしばらく歩くと、白川通りという通りに出ます。歩道と車道の隙間を埋めるように立派な植樹が並び、その植樹の背がいずれも高いので、空があまり見えない。
観光地でもないので賑やかさもあまりなく、かといって古都の雰囲気もあまり感じません。
しかしながら、この白川通り周辺は、知る人ぞ知るラーメン激戦区。
関西の有名チェーンの魁力屋の本店や、関西では珍しいラーメン二郎(※二郎系インスパイアの店舗はたくさんあるが、ラーメン二郎そのものの店舗は少ない)に加えて、数多くの個人ラーメン店が鎬を削っています。
そして何よりもここには、みんな大好き、LUNA SEAのSUGIZOさんも大好きな、俺たちの天下一品の総本店がある。めちゃくちゃさりげなくある。ふつうのハイツの1階にふつうにある。なんなら、魁力屋の本店のほうがよっぽど目立つ。
昭和46年創業。まぎれもなく老舗ですが、あまりそれを感じさせません。総本店限定メニューの牛すじラーメンを注文。
やわらかくしっかりと味がしみるように煮込まれている牛すじですが、それでも存在感を消すことはなく、牛すじという存在を前に出しています。味の黄金比を作るために何度も何度も試作を重ねて出来上がったラーメン。……すみません、全文、天下一品さんの公式サイトからの丸パクリです。
しかしながら、この宇宙的で豊かな味わいは、私の語彙力では説明しきれないので、総本店の素晴らしさを具体的に知りたい方は、SUGIZOさんのユーチューブチャンネルを視てください。自分はLUNA SEAの『FEEL』を脳内再生しながら食しました。キミに触れたら、そっと触れたら、体中駆け巡った。キミに触れたら、そっと触れたら、戻れなくなりそうさyeah……、(そして流れる宇宙的なバイオリンソロ)。
その天下一品の総本店がある白川通りの北側には、高く聳える比叡山があり、北側に行くほどに坂道が増えます。この坂道の先には、徳川家康公のお墓があるらしい。
道中には、かつて宮本武蔵が吉岡清十郎と決闘した地、一乗寺下り松もあります。清十郎は総勢70名あまりの一門を率いて決闘に臨みましたが、武蔵はひとりで清十郎および70名あまりの一門をフルボッコにした……、と云われているが、真偽は定かではない。
まあ事実だと思ったほうがネタとして面白いですが、そのような血生臭いネタに思いを馳せているうちに見えるのが、滔々と灯る「雲母湯」の看板です。
「雲母湯」と書いて「きららゆ」と読みます。看板にもルビが振ってあります。つい数百メートル先では壮絶なバトルが繰り広げられていたというのに、唐突にきらら系である。
きらら系といっても、もちろん軽音サークルの美少女などひとりもいない。もしかしたら女湯にはいるのかもしれんが、残念ながらそちらを見ることはできません。
内部は特にキラキラしている感じでもなく、横一列に浴槽が並ぶ、オーソドックスな京都の銭湯という感じ。
奥のほうにあるサウナと水風呂は、手前の浴槽とは別ゾーンであるかのごとく、屋根のアーチで別け隔てられています。元々は浴槽のみの小型銭湯だったのを、後からサウナゾーンを増やして大きくしたのかも。
いちおうテレビが備え付けられていますが、電源が入っていません。あと、床に土鍋の蓋みたいな形状の謎の白い物体が置かれているのですが、なんだこれ。
ちなみに銭湯事業と並行して就労支援サービスを行っておられるそうで、ここの清掃はその支援を受けている方々が担当されているらしい。店舗の横に駐輪場兼駐車場(というか空き地)があるのですが、銭湯の来客用と就労支援サービス関係者用とで分けられていました。
水風呂が広くて深いのが嬉しい。優しめの温度なので無理なく入れますが、ちゃんとととのえます。とはいえ、大阪の銭湯のように湯船の縁に段がないので、湯船の近くに座るところがない。
洗い場用の風呂椅子を持ってきて座るしかない。実際にそうしていたのですが、風呂椅子を使わずに床に直に座って身体を洗っていらっしゃる方がいた。
どこで見たかは忘れたが、いにしえの銭湯はそういうスタイルだったみたいな記述を見たような記憶が朧気に、あるような、ないような。あの境地まではまだ行けないなあ。
湯上がりに扉を開ければ、本当のいにしえの京都の山麓の姿が。
天下一品総本店は夜中まで営業しているものの、辺りはもう随分と暗い。夜とは暗いものなのだ、という当たり前のことを思わせる。
しかし、この辺りの独特の静謐をもたらしているものは、一体なんなのだろうか。
ラーメン屋の灯りはともっているし、コンビニもマクドナルドもケータイショップもある。どこまでも現代的な街並みのはずなのに、どこかタイムスリップしたようなことな感覚になる。かといって、あまり古都の雰囲気もないんだけどなあ。
いつまでも変わらない比叡山のオーラがそうさせているのかもしれません。知らんけど。
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