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いちばん高い切符が行く町の旭湯

「券売機で一番端の一番高い切符が行く町を僕はよく知らない」

というのは、BUMP OF CHICKENの『車輪の唄』の歌詞の一節ですが、この曲が入ったMDを友人に頂いた19歳の頃は、券売機で一番端の切符など気軽に買えませんでした。

しかしながらそれから20年くらいが経った今、いつのまにやら、「券売機で一番端の一番高い切符が行く町」、つまり、電車の終点が行く町を、それなりには知ってしまいました。少なくとも京阪神間においては。

阪急電車と阪神電車の果ては神戸の三ノ宮、山陽電車の果ては姫路、京阪電車の果ては京都の出町柳。

南海電車の果てはそれなりに遠い和歌山、近鉄電車の果てはかなり遠く名古屋だけど、これらも体験済み。

そんなことを考えていた祝日の新大阪駅。3連休の最終日だからか、いつもよりも人が多い。

ここから地下鉄の御堂筋線に乗れば、なんば駅や天王寺駅といった繁華街の駅を行き交う人の群れを見ることになるが、果たしてその先まで電車に乗って、いちばん端のいちばん高い切符が行く町、つまり御堂筋線の終点のなかもず駅まで行ったら、どんな景色が見えるだろう。

というわけで、長居駅を過ぎると随分と人が少なくなる御堂筋線に揺られて、終点のなかもず駅に到着。

なかもず駅は……、うん、ふつうでした。なんかふつうの駅前という感想しかない。ここ数年やたらと堺市が推している大仙陵古墳があるのは、もっと北の三国ヶ丘だしな。

とはいえ、ここからそれなりに近いところなので、もっとこのあたりでも宣伝してみてはいかがだろうか。ちなみに、「なかもず」は漢字だと「中百舌鳥」と書きます。「放出」「喜連瓜破」などとともに、大阪の難読地名クイズの常連。

その地下鉄なかもず駅は、南海電車の高野線に接続しています。南海電車そのものはそれなりに乗ってきたが、最終的に和歌山の山地へと向かう高野線となると、あまり馴染みがない。

とはいえ今回はそこまで遠出はせず、2つ先の初芝駅で下車。近隣は戦前に南海電車が開発した分譲住宅地の名残があり、スーパーやクリニックが点在する、のんびりした雰囲気。

そしてこののんびりした住宅地の中には、銭湯が2件。初芝温泉と旭湯。以前は千寿の湯というスーパー銭湯もあったそうですが2021年に閉店。至近距離に銭湯施設が3つもあったことになる。

さて、そのうちの初芝温泉のほうは定休日だったので、今回は南海電車の線路ぞいに店舗がある旭湯へ。

初芝駅は改札口を出るとすぐに小さなロータリーがあり、そこから大通りへと出ることもできますが、旭湯の路地に向かう交差点に信号も横断歩道もなく、けっこう危険。なので、初芝駅前のロッテリアがある側の地下道から迂回して、踏み切りを越えて線路沿いの道を歩いて行ったほうが無難です。

というかあそこに信号がひとつもないの、歩行者側からしても自動車側からしてもだいぶ危ないと思う。堺市の交通政策担当の皆さま、よろしく頼む。

それはそれとして、ついこのあいだ京都の西院旭湯を訪れたところですが、こちらは大阪の旭湯だ。そして、西院旭湯ほどではないにしろ、目立たない通りに入り口がある。自分が銭湯めぐりを始めなかったら、まず歩くことはなかったであろう道だ。

パッと見は完全にふつうの民家であり、「旭湯」の看板もさほど主張の強いものではなく、随分とクールな佇まい。

扉を開けてすぐに券売機があり。通常の入浴料金520円、サウナ付き料金620円、らくらくセット780円。この券売機がなんともしょぼくて(超失礼)、なんか昔のタバコの自販機くさくて好きだ……。

っていうか、近年に改装されたところは別として、街の銭湯の券売機ってなんかエモみがある。出てくる券が紙ではなく、無駄に分厚い札だったり。

浴室は「花の湯」と「森の湯」の2種類があり、偶数日と奇数日で男女が入れ替わる。

今日は男湯は「花の湯」のようです。こちらには極楽風呂と呼ばれる2連のジェット付きの寝転び湯があり、これがなかなかマッサージ力が高い。

香りの湯というのがあるそうですが、ラドン風呂みたいに密閉されている浴槽がそれなのだろうか。だとするとこれはラドン風呂ではないのだろうか。しかし、ラドンの設備はあるはず。

というのも、サウナはラドンサウナと表記されており、実際にラドン発生器も設置されているのです。さらに、ここはどうやら乾式のラドンサウナの模様。自分が今まで訪れたラドンサウナのほとんどはスチームサウナだったので、ちょっと新鮮である。

「森の湯」のほうはどうかわかりませんが、「花の湯」のほうのサウナはかなりヘンテコな構造をしていて、ベンチが横一列ではなく、両サイドにある斜め席と真ん中席のみの構成というか、左右のバッターボックスと真ん中のキャッチャーの位置のみというか……。

左バッターボックスの位置からでないと、テレビがまともに見えない。どういう経緯でこの形状になったんだ?というかこの構造ならテレビはいらんような気がするが、まあ配慮なのだろうから、ありがたく受け止める。

とはいえ、サウナそのものは心地好く、ラドンの澄んだ空気もなんとなく味わえます。自分にしては珍しく、1周めで深いととのいを覚えた。

あと、電気風呂の配置もけっこう謎。主湯を越えないと電気風呂の浴槽に辿り着けないという。なので、主湯に人がいっぱいで塞がっていたら電気風呂に行けない。そしてこの電気風呂がアホみたいに強い。選ばれし者だけが踏み込めるゾーンなのだろうか。

なかなかにディープだ。いずれ「森の湯」の日にもお邪魔したい。あと、なかもずは意外とそんなに遠くないことが今日わかりましたね。こうしてまた大人になっていくんだ。

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ぷらーな
サウナはたのしい。

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