見出し画像

ゆーとも小松と陰キャのラーメン道

北大阪のベッドタウンの民、さらにはJR普段使い民の自分みたいな奴にとって、阪急電車の駅がある上新庄というところは、なかなか不思議でして。

区でいえば東淀川区なのですが、JRの東淀川駅からは川を挟んでおり、どっちが本物の東淀川なんだ?と、なんとなく化かされた気分になります。

いや、実際にはどちらも東淀川区ではあるのですが、川を越えた先にある上新庄は、なんだか別ジャンルのような気がする。

阪急電車の上新庄駅を中心に、飲食店がこれでもかとばかりに無限に建ち並んでいるので、なんとなく都会感がありますが、意外にも人口はさほど多くなく、8000人を下回るそうな。

そして、都会感があるのは駅の南口のほうで、実は北口のほうは、けっこうおとなしい雰囲気だったりします。

というか、上新庄駅そのものはそれまでも何度か来ていたものの、いつも南口から下りていたので、そもそも北口の存在を知りませんでした。

上新庄駅の建物は横にものすごーく長い構造で、南口と北口の間にはかなり広い道路をまたぐので、同じ駅の出口でありながら、かなり距離があるのですね。

北口を出るとまず見えるのは、スーパー銭湯の「天然温泉 満月」なのですが、今回はそちらではなく、そこから徒歩2分という至近距離にあり、2022年に閉業された、小松商店街に入ってすぐのところにあった「ゆーとも小松」です。

ゆーとも小松(旧小松湯)は昭和5年に創業された老舗であり、満月から徒歩2分のところにある、というよりも、ゆーとも小松から徒歩2分のところに満月を建てられた、といったほうが正しいか。

満月もクオリティーの高いスーパー銭湯なのですが、閉店された2022年の夏までは、ゆーとも小松のほうを贔屓にしていました。

わりと銭湯を覚えたての頃に知ったので、初めての来訪がいつだったかを正確に覚えていないのですが、当時はまだ、ロビーが広い銭湯が世の中に存在することを知らず、また、2階建て構造の銭湯というのも自分にとっては珍しかったので、なかなかに衝撃的でした。

しかもそれが、戦前から営業されている老舗銭湯だときた。もちろん何度も改装されてのことですが、その頃の自分にはまだ、銭湯というのはほとんどが古い建物で、基本的にご年配の方が通うところ、という偏見が残っていたので、リニューアルされて現代風にされているのを見た時点でカルチャーショックでした。

先述のように、とにかくロビーが広い。スーパー銭湯なみの広さ。ジャンプの最新号がいつも置いてある(これは地味にけっこうポイントが高い)。かつてはレストランやマッサージルームも併設されていたそう。

浴室は2階だてではあるものの、トータルの面積はおそらく一般的な銭湯と同じくらいかな。1階には半露天風呂があり、少しだけ洗い場があります。

商店街の中にある銭湯の露天風呂は、大抵の場合は天井にテントのようなものが張られており、このゆーとも小松も多分に漏れずそうです。

基本的に露天風呂は開放的になれる空間であってほしいし、天井を覆ってしまうのなら、外に造る意味なくね?とか思ってしまうので、この手のものは本来は好みではないのですが、なぜかここは、独特の隠れ家感というか、異世界感のようなものがあって、気に入っていました。

2階もまた、どこか独特の雰囲気がありました。「炭酸泉」とそっけなく貼られた紙のみがあり、壁のタイル絵なども特に無し。この情報量の少なさよ。

有料サウナとスチームサウナが両サイドに並び、真ん中に小さい水風呂あり。すべてぬるい。水風呂は20度で固定。

サウナーには向いていないでしょうね。5人くらい入れそうな広さの有料サウナのほうにも入ったことがありますが、いつも空いていました。

というかなぜかスチームサウナのほうが人気があり、常連さんはそっちにばかり入っているようだった。

しかし、木張りの有料サウナの雰囲気もなかなか悪くはない。テレビの音がけっこううるさいのもまた、サウナー的には評価が分かれそうですが、なんか昔の家の雑なステレオ音のテレビっぽくて、自分はけっこう嫌いではありませんでした。

そして、冒頭で書いたように上新庄駅周辺は飲食店が無限にあり、なおかつラーメン激戦区でもあります。風呂上がりにラーメンを啜る。これが謎の背徳感があって楽しい。

おすすめは「麺屋マルヨシ」。海鮮料理のレストランと隣接しており、マグロ節のラーメンをやたらと推しているので、もしかしたら両店舗は関係があるのかもしれません。

そのマグロ節ラーメンも良いのですが、そちらはちょっとクセがあるように感じ、個人的には鶏白湯ラーメンのほうが好みです。絶妙なクリーミーさがたまらない。

ちょうど1000円、ライスや煮玉子をつけると1150~1200円になってしまうので、お値段は張るのですが、絶対に踏み外さないという安心感がある。

あと、カウンター席が壁際にあるのも陰キャに配慮されていて(※たぶん、ただ単に店内の構造上そうなっているだけ)、実に落ち着く。

かつての上新庄は銭湯だらけで、銭湯の梯子ができたそうですが、現在も営業しているのは、満月と、反対側の住宅地にある新菊水温泉のみ。

寝転びスペースのある満月もいいところなのですが、あそこは陽キャの寛ぎ処なんだよなあ……。ゆーとも小松の隠れ家感が恋しい。と、陰キャの私はひとり麺を啜るのです。

サウナはたのしい。