蚊さんはうざいが刺されたい
なくて七癖、あって四十八癖といいますが、自覚しているところでもそうでないところでも、人には癖というものがたくさんあります。
自分の癖はといえば、親指の爪をやたら触る、親指の第二関節を定期的にポキポキ鳴らす、右足親指の第二関節に毛が生えていないかチェックする(そして生えていたら抜くのですが、ここ半年ほど生えてこない)、などで、指の関連だけでもこれだけ自覚しているので、つまり「あって」側の人なので、たぶんすべてのメンバーが揃えばKSE48がプロデュースできるはずです。
わりと最近になって気づいた癖は、蚊に刺された部位をやたら触るというものですね。基本的に夏季限定でしか発現しないのでずっと気づかすにいたのですが、昨年から自覚し出しました。
刺されてプクッと膨らんでいるのを触るのがなんとも心地好いのです。膨らみは数十分もすれば勝手に消えてしまうので、時間制限があるというのも楽しい。
あいつらが狙ってくるのは腕が多いのですが、先日は非常に暑かったので、踝の見える短い靴下を履いて外出したところ、踝の横の部分を刺してこられて、なかなかに新鮮でしたね。
蚊さんに刺されやすい人の特徴としては、お酒をよく呑む、体温が高い、黒い服をよく着る、足が臭い、などが挙げられるそうです。
このうちで自分が当てはまると思われるのは、お酒をよく呑む、だけかな。体温は平均的だし、もうWEG○とかで売っている1500円の十字架ネックレスなどを着けて田舎の高校生みたいなイキりをしなくなったので、黒い服はあまり着ないし、足は……銭湯に行くたびに洗うので、そんなに臭くはないと思うんだよ、たぶん。
O型の人は刺されやすいという話は昔からよく聞きますが、自分はA型なのに、子供の頃からかなりの頻度で刺されます。10分につき3回は刺されていると思われる。蚊さんの献血に貢献しすぎている。
刺された膨らみを触るのは好きとはいえ、別に蚊さんに血液を与えたいわけではないし、それ以前に、蚊さんたちの存在そのものに対してはうざいと思っています。
ダーウィン先生は、地球上のすべての生き物を愛することが人として尊いと説かれましたが、残念ながら私はそこまで尊くなれない。
なんなら人間ですら、生き物として好きかどうかというと微妙だ。まあその話はスケールが大きすぎるので蚊さんサイズの話をしますが、まあ大抵の方は蚊さんのことがあまり好きでないと思います。
もちろんこの多様性の時代ですから、もしかしたら蚊さんをペットとして手懐かせて可愛がっているという方もいらっしゃるかもしれません。というか過去には、4000匹の蚊さんを飼育している青年が『マツコの知らない世界』に出演したことがあるらしい。
しかし残念ながら私は蚊さんと仲睦まじくなるつもりはない。でも蚊さんに咬まれた部位を触る趣味をやめるつもりもない。
だからというわけではなく、なんとなく昔からそうだというだけですが、我が家では蚊取り線香を焚きません。自分の記憶にある限り、一度も焚いたことがないかもしれない。あるいは、自分が家を空けている間に他の家族だけでこっそり焚いているのかもしれんが、内緒にする理由がわからないので、おそらくないと思われる。
「蚊に咬まれた部位を触るのが好きなんだ」などという特殊性癖を唐突に口にしたら家族会議が始まってしまう可能性が全くないわけでもないので、家族は誰もこのことを知らないはずである。
ということは、家族は蚊さんのことをそこまで疎んじてはいないということになる。Gキブリさんに対しては、年中ずっとブラックなキャップを撒いたり人工罠ホイホイを忍ばせたりと日頃から入念な対策を施しているのに対して、蚊さんにはなかなか寛容である。
ちなみに、我が家ではあまり、Gキブリさんは出没しません。もちろんブラックなキャップの効果もあるのでしょうが、我が家ではそれなりに巨体のアシダカグモさんを飼っているからです。
クモさんは害虫を食べてくれるとよくいいますが、おそらくこのアシダカさんが我が家に侵入したGキブリさんの大半を消費して、日に日に巨体化しているのでしょう。今も家のどこかでのどかに暮らしているはずです。
具体的にいえばたぶん、ベッドの奥に積まれた、古い漫画が大量に詰められた段ボールの底などにいると推測されます。その横で寝酒などをよくするので、Gキブリさんが好きそうな環境が見事に構築されている。まあ、知らぬ間にやってきて、知らぬ間に補食されているのでしょう。たぶん。
クモさんはもちろん蚊さんも食べるのですが、実際のところは、他に餌が見当たらない時にしゃあなしに食べる、くらいの温度のようで、たいして好みの味ではないというのが実情のようです。
今日もいつの間にやら蚊さんに刺されていました。挨拶もなしに、いつの間にやら俺の腕に微かな膨らみを残していきやがった。シャイな野郎だぜ。
おっと、耳元でブンブンと音が聞こえる。こいつはシャイじゃない蚊さんのようだ。シャイじゃない蚊さんはうざいので、アシダカさんに食われろ。