マガジンのカバー画像

短編小説1000字

100
大体1000字くらいの短編小説です
運営しているクリエイター

2021年11月の記事一覧

短編小説 麗しのボジョレーヌーボー

ナズナはクールでいつもサクラを見ない。二人で乾杯をする時だって視線を合わせたりはしない。チン、とグラスが重なったような音がするとその方にちらりと視線をやり、そしてワインを口に含む。口の端を軽く舐めるのを見たくてサクラはグラスを持ったまま、ナズナに向かって微笑んでいる。
「なに?」
ナズナはグラスを置くとサーモンカルパッチョに手を付け始める。サクラは早く口に含んだところが見たい。口腔内に溜まった唾

もっとみる