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関根ママの過去書評まとめ(2024/07/01〜2024/12/10)

こどもホスピスの奇跡 石井 光太

(2024/07/01)

ホスピスで起こる奇跡の話ではありません。

完全民間型のホスピスができるまでの医師、患者たちの保護者、そして本人の子どもたちの思いと葛藤と挑戦の記録。

短くとも深く生きるということは、、、

子ども達、それも幼い幼い子どもたちの闘いの記録。少し大きい子どもたちの闘病生活の思い。

志半ばで命の灯火が消えていく子どもたちの姿に、涙が溢れて止まらないけど、それだけで終わらない続いていく物語が素晴らしかった。

書店主フィクリーのものがたり ガブリエル ゼヴィン

(2024/07/01)
読み始めはA.J.フィクリーが嫌でダメなやつすぎてやめようと思ってたんだけど、赤ちゃんの「マヤ」の登場でこんなに変わる?そして、この展開!!

子とパートナーと本への愛が溢れるA.J。

読み始めは、島とフェリーの影響なのか、イメージは「ザリガニの鳴くところ」そして話が進んでくると、「水車小屋のネネ」そしてラスト前はアルジャーノンを思い起こされ、「ああ、最後はこんな風に終わらせるのか」と心に染みる。

登場人物全てが素晴らしく、最後は「彼ら」に託されるのねとしんみり。

号泣本ではなく、じわじわ染みる本。とても良かったです。

出てくる本を全然読んでなくて、本当にごめんなさい。まずは、ダールかな。

まいまいつぶろ 村木嵐

半身麻痺で口も上手く回らず尿も堪えられない世継ぎの君。なのに聡明。いや、悲劇だよね。

この若者の苦悩を救うもう1人の主人公は、ただ一人言葉を聞き取る耳を持つ二つ上の少年。

この二人の二人三脚で将軍への道を一歩一歩進む涙の止まらない前半と、難しい政を解決するために登場する様々な人々と協力していく後半。

時代物でありながら、現代の私たちにも同じことをしていると突きつけてない?麻痺があって話せないからと言って下に見ている心はないか。

ただ感動、号泣本だと言わせない、深い物語でした。ラストシーンで、この二人に話をさせるのか!と思わず唸る。うん、このラストは蛇足では無い。

しかし、江戸幕府の将軍たちの一連の物語をよしながふみの「大奥」で読んで歴史の流れを掴んでいた私としては、どの将軍の名前が出てきても「あの女性(ひと)か」と思い浮かべて しまって困ったわ。

特に将軍吉宗さんは大奥で1番かっこいい女性だったからねぇ

「かがみの孤城」奇跡のラストの誕生 北村正裕

図書館で借りてきて、3時間足らずで一気読みしたこの本の感想は残しておかねばなりません。

まずは、この本は「序章」にも書いてありますが、「かがみの孤城」の本を読んだか映画を見た人でなければ1章の1ページ目からネタバレになってしまうので、お勧めできません。なので、読みたいと思った方は、映画でいいのでみてから読んでね。

さて、本編「かがみの孤城」は、単行本化になる前に雑誌(?)連載がされていたとは知らなかった。それも11回で連載終了。しかも終了になったのはほぼ真ん中へんの9月の章。そこを書いているときにラストシーンの設定を思いついて、連載終了後、全編を大幅に書き換えしたのだそうだ。

最初の1章については、連載時のものと単行本を比べて、設定変更とラスト設定との整合性を合わせるために、こんなに書き直されたのかと、作者の思い入れに頭がさがる。うーん、このくらい作品に「愛」を込めなくちゃ感動作品にはならなのね。
そして、そこここ重要シーンやセリフを「偶数ページの1行目に持ってくる手腕」ページをめくった最初に目に飛び込んでくるのが、あの言葉だなんて!!

最初の2行を読んですぐに本棚に飛んでいって「かがみの孤城」を引っ張り出して首っ引きする。読んでいる途中で「まどか☆マギカ劇場版」をネトフリで検索して流し見しながら読むという離れ技をやってのけました。

かがみの孤城が劇場版アニメ化されると聞いたときには、クラブハウスの読書仲間たちの間で賛否両論あったけど、結局観に行って、「ネタバレ絵葉書」ゲットしたのはいい思い出です。

そして、作者がかがみの孤城を連載していたときに話題になっていたアニメ「まどか☆マギカ」と「エヴァンゲリオン」の影響を受けていたのか否かの考察を考えながら、この本をふむふむと読むのは至福の時でした。

プリンシパル 長浦京


プリンシパル、読了しました。
すざましい物語でしたね。

始まりは昭和20年8月15日。駅で玉音放送を聞くところから始まり、疎開先から「チチキトク」と呼び戻される主人公は女学校の歴史教師。であって、東京では名の知れたヤクザの親分の末娘。

親分が危篤で、三人の兄のうち二人は徴兵に取られて、一人は心を病んで療養中。彼女しか兄が復員するまで組を率いる者はいないのだけれど、ヤクザが嫌で教師になったのだから、もちろん引き受けないつもりだったのに、初っ端に起こるある事件によって、跡目代理を引き受けることになる主人公綾女(あやめ)。

殺し殺されるヤクザの世界が嫌で逃げ出していたのに、ズブズブと引き込まれる綾女の葛藤と、戦後すぐの政治家とGHQと敵対勢力のヤクザたちとの知恵較べ。壮絶な殺し合い。

最終章「カーテンコール」読み終わったあと、思わず拍手してしまいました。終わった、終わったって(汗)

どうしてこんなタイトルつけたんだろうという疑問は解明されないまま読了。

ヤクザ映画を5本ぐらい立て続けに見たような感じの読後感でした。図書館本でしたので、読み終わったらさっさと返却しました。一秒も一緒にいたくない気分(笑)

それでも、読後感は悪くなかったよ。
ふむ。ヤクザ映画としてはいい出来じゃない(汗)
いや、映画じゃないけど、あんまり人が死んでいくので(惨殺)昔テレビで見た「任侠映画」と、どっちが私にとって「すざましい」のかと淡々と比べられました。

死体大丈夫なのであれば、ヤクザから見た戦後史として楽しめます。

ぼくのメジャースプーン 辻村深月

一気読みで読了しました。本当に良かった。
辻村本は、黒と白があると言われてて、この本は「真っ黒」に分類されるようだけど、確かに暗くてグロいけど「黒辻村」なのかは最後まで疑問。

というのも、私が「白よ!真っ白」と評価した辻村深月の「本日は大安なり」も「あの本読みました?」に出ていた木場の書店員さんたちの分類では「黒」だったから、私の感想なんて所詮自分の感じたもの。

さて、本題のこの本は、小学校4年生の「ぼく」が主人公。
小学校で起きたものすごくショックな事件で、仲良しで尊敬もしていた近所の友人「ふみちゃん」が心を閉ざして学校に来られなくなる。
「ぼく」は犯人に復讐をするために、「ぼく」の持っている力を使おうとするけど、お母さんに「ちゃんと力の使い方を教えてもらいなさい」と言われて先生のところに1週間通うことになり、そしてその時が来て、、、という内容。

小学校4年生の少年の一途でまっすぐな気持ち。何が正しくて何が悪いのか。罰とはなんなのか。悪意とはどういうものなのか。
事件をめぐり、事件の周りで起こる様々な「現象」をめぐり10歳なりの考えで最後の決断を導いていく。

淡々と進む先生との1週間に、気がはやって飛ばして先に進もうとすると、ちょっと前の会話に重要なことが隠されていて慌てて戻って読み返すを繰り返し。腰を据えてじっくり読まないと許してくれない物語の作り方は、さすが辻村深月。

各所、少年の純な思いに打たれてボロボロ涙を流し、先生の淡々とした対応に冷静さを取り戻してもらえる。号泣本とまではいかないけれど、涙で感情の浄化をさせてもらって、ラストシーンで「ああ良かった」と希望を感じられる物語。「面白かった」という感想では言い尽くせない、重くて暖かい辻村節が響く物語でした。

さあ、次に待っているのは、図書館で借りた辻村深月作「ドラえもん」だよ!

尖閣1945  門田隆将

こちらも一気読みしました。

壮絶な漂流記でしたね。
戦争末期、昭和20年7月初め、石垣島の人たちは最後の疎開船に乗って台湾を目指す。その時、機銃掃射にあって一隻は沈没。残された船を修理しつつ向かったのは尖閣諸島の魚釣島。
「あの島には真水がある」という言葉に導かれ魚釣島に上陸するも、食料はなく飢えていく日々。救助が来たのは8月18日、無条件降伏の玉音放送のあとの事だった。

いや、沖縄戦の悲惨さや、疎開船対馬丸の悲劇などは、8月の終戦記念日が近づくといろいろ特集とかあるから知っていたけどね。
こんな悲惨な遭難事件があったなんて本当に知らなかったわ。

100人を超える人達が漂流、遭難後、真水のある島で飢えと戦いながら、助けを求めるために協力する事実。そして、力尽きて無くなっていく人達。
それを、回想録として残してあり、そこから丹念に「尖閣戦時遭難事件」の全貌を聞き取りと記録からこの本にまとめた作者も素晴らしい。

尖閣諸島の話って言うと、中国との微妙な関係を思い起こすので、この書名だけだったら読もうとは思わなかったけど、書店のポップに「生きるための壮絶な漂流記」とあったので、思わず手に取って本当によかった。

本屋での本との出会いは、本当に一期一会ですね。
#尖閣1945

テスカトリポカ 佐藤求

次々とやってくる残酷シーンを潜り抜け、なんとか読み終わりました。
帯に宮部みゆきが「直木賞の長い歴史の中に燦然と輝く黒い太陽」とありましたが、本当に黒い!ドス黒いというか、輝きのな漆黒というか。

しかしその中でも私が最後まで読めたのは、多彩な登場人物の純粋さと哀しさのおかげ。

最初に出てくるのは暴力に溢れたメキシコから逃げる少女。純粋に暴力から逃れて未来を掴みたかったのに、流れ着いた日本で得た場所はやはり暴力の中。

次の出演者は彼女の一人息子。薬に溺れた母方育児放棄にあって、一人で黙々と生きる。そして母との切ない「別れ」
彼は、学校で教育を受けられなかった代わりに「少年院」で教育を受けることになる。

メキシコの麻薬組織の戦闘で組織の潰し合いの後生き残った4兄弟の3男バルミロも、ある意味純粋に兄弟の復讐のために暗躍する。その思想の背景に失われたアステカの思想があるのは祖母のおかげ。この祖母もまた悲しいアステカの歴史の生き残り。

そんな魅力的な登場人物の中で、ナイフを作る細工師パブロ。彼は技術はあっても仕事に恵まれずバルミロの組織に関わっていくことになる。特注品の材料がなんだか分かった時のパブロの苦悩。そして、弟子としてやってきた前述の少年コシモの純粋ながらもバルミロの思想に染まっていく過程を、何も言えずに見守るしかない思い。
私の中では700ページに及ぶこの本の中でほんの少ししか出番のないパブロが、漆黒の闇の中で燦然と輝く東の一番星に思えました。

こんな漆黒の暗闇の本を読んで泣けるとは一ミリも思っていなかったのですが、1週間で私の中で「推し」となったパブロの最後の「出番」にはうっすら涙が滲みました。

紙の本はいいですね。残酷シーンはほんの少しのつまみ読みでどんどん飛ばせるので最後まで読み切りました。
私みたいに、ラストを少しだけ読んでから先を読みたいと思っている読書の裏を描く最後の数ページも良かったです。

リボルバー・リリー 長浦京


読了しました!長かったぁ!
物語の始まりは、関東大震災で崩れ徐々に火災が広がっている東京の下町。
初っ端からかっこいい立ち回りのリリーこと百合さんは、元諜報部員で殺し屋。
しかし単純なハードボイルドドンパリストーリーにはあらず。
明治後期から昭和初期までにかけた、日本の軍と経済界とヤクザと政界のドロドロの裏社会の話の中に、世界中の株式相場を巻き込んだインサイダー取引による巨額な資産をめぐる攻防戦があった。
百合に助けを求める、細見慎太中学2年。床下で父母姉の他一緒に暮らしていた女中達が惨殺される様子を弟と二人で息を殺して聴く。その弟も火事に巻き込まれ焼け死んでしまい怒りと復讐に燃えながらも、百合と逃げていく。父に託されたものがなんだったのか。その秘密はなんなのか。
そして、物語のスタートがなぜ関東大震災だったのか。
逃避行の中で見えてくる陸軍関東軍の思惑と、それに対抗しようとする海軍大佐。
日本の歴史が大きく動く大戦前夜、この事件は本当にあったことなのか、それとも全てが作り物のフィクションなのか。
正確な現代史を学校教育で教えられていない私たちの世代には、何が本当なのかを判断する材料はないのだけれど、戦争をするための資金を稼ぐために「何か」をしていた「者」たちが必ずいて、あの戦争を回避しようと画策した「者」達もまたいたということ。
そして、その裏側では必ず汚れ役を引き受けていた誰かがいなくては、世界は相手にできなかったのだということを確かに感じられる物語でした。
最後に、映画化されたけど見ていないなぁと思って、探し回ってレンタルしてみてみたら、笑っちゃうほどロマンティック&正義と愛国に溢れる話にすげ替えられていました。
いやぁ、原作通りに映画化したら、夜道で刺されることになったのかも、、、
次には何を読もうかな。ワクワクしながら読了しました。

恋とか愛とかやさしさなら  一穂ミチ

(2024/11/08)

やっちまいました。今日は午前中に大体のことを仕上げて、昼過ぎに個人セッションを受けて、さあ温泉行こうと思っていたのにさぁ。

息子が行く気になってくれないから(って、息子のせいではない)サイン本だったビニールを剥がして、つい読みはじめちゃったのよね。一穂ミチさんの新刊。

いやあ、すざましい内容でして。始まりは純でラブラブな恋人の彼氏の方が「盗撮」で捕まるところから始まる、彼女の苦悩。

こちらが「恋とか愛とかやさしさなら」で、後半「恋とか愛とかやさしさより」は彼氏の方の苦悩。

どちらもすざましすぎる。泣いたらいいのか憤ったらいいのかわからない。そして、辿り着くところはここかよ〜〜〜!!!

思わず2時間半、一気読みしてしまいました。

やるなぁ、一穂ミチ(笑)新境地とか書いてあるけど、いつもの手口じゃん。そしてやはり一穂ミチさんは、短中編の女王でした。
(初回配本特別短編が、カバー裏に印刷されています。読んでもネタバレなはなりません)

婚活マエストロ   宮島未奈著

冴えない40のフリーライター猪名川健人。
フリーライターとは言っても、ネットに「○○のオススメ30選」なんて記事を書いては1文字いくらかで売ってるライター。
ひょんなことから婚活会社の紹介記事を書くことになり、そこにいたのは、ネットでも有名な「婚活マエストロ」だった。

という始まりから、冴えない中年独身男性、結婚なんかとっくに諦めていたのに、婚活会社と縁ができてなんとなく参加しているうちに、淡い恋をしてみたり、振られてみたり、、、

そして、、、

おい!宮島!ここで終わりにするのかよ〜
だんだんと机を叩きたくなるほどの思わせぶりなラストシーン。

デビュー一作目で本屋大賞を取った筆力は本物でした。
いやぁ〜やられたわ。
まさに、爆走エンタメ小説です😆
(この書評には「前振り」があります。詳しくはFacebook投稿へ


海と毒薬    遠藤周作

え?そんなにグロくなかったよ。

それより、医師たちのいろいろな思いが難しすぎて、ざっくり読んだだけじゃ何を言いたかったのか分からないよ〜遠藤周作さん!

この話は、生体解剖を医師が行ったという事実が問題なんじゃないんだな。それに関わった、助手や看護師などなどの戦争の最中に「そんなこと」が起こるまでのいろいろがきっと問題なんだろう。

夏川さんの解説を読んでもピンとこないわたしは、もう一度読み直すしかないかなと考える

エンジェルフライト  佐々涼子

新幹線で読了!
やっと読み終わったので、返却できます。高知市立図書館さんごめんなさい。

エンジェルフライトは、国際霊柩送還士という言葉の通り、海外から搬送された遺体を家族に会える姿にして引き渡す仕事。
その仕事そのものよりも、仕事を通してより「死」について深く考えさせられる本だった。

その「死」は、会社の創業者として、継承者として、そして取材している著者本人として、どのように受け止められそして考えられているのか。
その考えを本として見せられた私に何をうったえるのか。
形だけのものでなく、遺族の思いに涙するのでもなく、深く考えさせられる。

この人ならと秒で信頼される声と話し方 下間都代子

せっかく忘年会で会えるのに、持ってるだけで読んでないなんて失礼でしょ。というわけで、移動中に読んだ1冊目がこれ。

そして、さっさと読めばよかった〜。ビジネス書?自己啓発本?いやいやノウハウ本?どれにも当てはまる本で、素晴らしかったです。
話し方だけ、声の出した方だけの本はいろいろあるけど、だから信頼されるには話し方だけでなく、声の出し方にもテクニックがあるのよ、とプロの技を惜しげなく書いてくれていてありがたかったです。
うーん!これに私の学んでいる心理学テクニックも加えると無敵になっちゃうかな。
真面目にとよこさんのプライベートレッスン申し込みたいと思いました。
(そして、ソッコー申し込んだわ)

死都日本  石黒耀

一気に読みました。いやいや、そんなことをしている場合じゃないほど今週は忙しいはずなのに、そういう時にこそこんな本に出会っちゃうのよね

出所は、これも「あの本読みましたか」の作家インタビュー完全版で伊予原新さんの回に「地学といえば火山」と言って紹介された2冊の本のうちの1冊。実を言えば、この2冊とも紙の本がネットで手に入らずKindleで入手。東京弾丸ツアーにiPadまで持っていったら負け(何に?)と思って、留守番させていたけど、帰ってくるなり続きが読みたくて一気読みしました。

冒頭、ローマ帝国のリゾート都市ヘルクラネウムがヴェスヴィオ火山の火砕流で壊滅するシーンから始まる。

火砕流といえば日本人なら「雲仙・普賢岳」の大火砕流を思い浮かべるだろうが、あれは「大」などと名のつくような大きさではない中規模いやちょっと大きめの小規模火砕流なのだと、プロローグの後の第1章で、この物語の主人公である「火山ヲタク」の黒木教授が丁寧に説明してくれる。

その後、阿蘇のカルデラと同様の大規模噴火の跡が南九州に多くあることも、図解入りで説明され、そんな噴火がいつ起こるかもしれない話の後に、霧島山系の山々が一斉に火を吹くのである。

空高く立ち昇った噴煙柱はガラリと四方へ崩れ落ち、周りの都市を壊滅させる破局噴火となった。

物語は、その後の24時間を、いかに住民避難させるのか、いやそんなことも間に合わずにどんどん壊滅していく南九州の都市たちの様子。そして、このまま滅亡しつつある日本をどうやって世界の中で国として生き残らせるのかを経済的に手を打つ政界財界のトップたち。そのために進められていたK作戦の全貌。

K作戦の保険として宇宙に打ち上げられる秘密兵器。

そんな物語と並行して、主人公黒木教授が火砕流から逃げながらも、愛妻真理の勤務中の病院まで安否を確認する困難な道のり。

噴火までの前哨戦と、噴火後のジェットコースターのような速さでの各都市の崩壊、じわじわと火山灰の恐怖で慄く西日本。火砕流は海を渡って中国四国地方まで届いていく。

まあ、火山の専門用語「サージ」や「ラハール」などの説明を丁寧にしてくれながら、古事記にあるイザナミ・イザナギ・ヤマタノオロチなどと古代縄文時代に起こったであろう破局噴火との関係を絡めながら、立ち止まらせないスピードでラストまで一気に読まされました。

そして最後はこうくるのか〜!ここでこんなふうに希望を持たせるなんて、作者、やるなぁ〜!


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