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シェア型書店についての話

 シェア型書店という言葉がある。最近、少しづつ増えているようなのでそれについて考えてみたいと思う。
 なお、下記記事によると、シェア型書店は2021年に40店舗ほどあるらしい。

どこまで広がるか

 結論から言うと、そこまで広がらない、と私は思っている。
 なぜならば、そこまで読書が好きな人の人数がそれほど多くないからだ。
 シェア型書店の棚主になるような人は、よっぽどの読書好きで、自分の好きなものを他の人へお勧めしたいとか、布教したいという欲求によって、月数千円を払いながら棚主をしている。
 そこは決して儲かりそうだからとか、ちょろい商売だからという理由は入ってこないし、実際大多数の人は儲からない。もちろんインフルエンサーのような人が、アフィリエイトの一環のように使った場合は儲かるかもしれないが、それだってコストを引いた後の利益はごくわずかだろう。
 シェア型書店が広がるのかどうかというのは、そういった、「読書を愛する人々」が、日本にどれだけいるのかといった話になる。 

読書好きな人の規模

 上記リンクは2023年の調査だが、半年に11冊以上本を読むという人は全体で12.4%程度で、60代男性が20.9%と抜きんでている。なお、各年代別のサンプル数が110とそろっていたので、人口構成比が考慮されてないか? と思い、人口統計と合わせて計算したら、全体の数字に一致したので、どうやらそこは考慮した数字にされているらしい。
 20~60代の全人口7554万人に対して、936万人が半年で11冊以上読む(つまり月2冊程度は読んでいる)人ということになるが、うち269万人が60代となり、「読書好き」の30%を占めている。
 現在の棚主の年齢構成はわからないが、今のところは新しい商売なのでまだ若い人たちが対象だろう。そしてその本屋の利用者側もまだ若い人が多いんじゃないかと思う。
 なのでもう少々年齢層的には広がる余地はある。だが、全国に広がるには、「読書好き」の絶対的な人数が少なすぎるように思う。

12%ってどれくらいの規模なのか

 12%程度というのがどういう数字なのかというと、下の調査によると、過去1年間でスポーツをスタジアム観戦した人の割合が13.4%だそうだ。

https://www.murc.jp/wp-content/uploads/2022/11/news_release_221027_01.pdf

 つまり、スタジアムでスポーツ観戦する人よりも「読書好き」は割合としては少ないということになる。しかも、「読書好き」に地域は関係ないので、おそらく全国各地に散らばっていることだろう。場合によっては他の娯楽が比較的に少ないからという理由で、地方の方が比率は多いのかもしれないという気すらする。
 一方でシェア型書店は、つまり「読書好き」が同じ「読書好き」のために展開するサービスであるので、見に来る人の人数が集まる都市圏でしか成り立たないだろうし、今の本屋にとって代わる未来はなかなか感じられない。

本屋の1コーナーなら

 ただ、現在の本屋さんが一部をそういうコーナーにするというのはあり得ると思っている。本屋さんによっては、今でも中古本や文具を売っているところもそれなりにあるし、棚の一部をレンタルにして、それなりに定期収入が見込めるならばやる価値のある1手段だろう。
 毎月それなりの棚のレンタル収入があり、仮に売れた本があれば決済手数料も入ってくる。仕入れもやるのであれば、仕入れたものは棚主が買ったことになるのだろうし……(その場合、棚主は中古販売をしていることになるが、古物商許可証とかの問題はどうしてるのだろうか……シェア型書店のHP見ただけではわからなかった)
 不動産経営と同じなので、空室率が低ければ商売にはなりそうだ。
 今の内に、シェア型書店用の、スペースを貸し出す人に向けた管理システムと在庫管理、決済管理システムをセットにしてサービス提供できるようにしておくべきかもしれない。
 そういったハイブリッド書店ができると、その店の品ぞろえには別の個性が生まれる。それはそれで楽しそうではあるので、無責任ないち読者としてはそういう店が増えてほしいなと思う。

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