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出版社で営業や編集などの経験を経たのち、上場しているエンタメ企業で経営管理として15年…

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出版社で営業や編集などの経験を経たのち、上場しているエンタメ企業で経営管理として15年働き、事業管理、グループ管理、IR、M&Aなどをやってました。出版、アニメ、映像、ゲーム事業等は一通りわかります。今は小さな会社に転職し管理全般やIPのライセンスを担当。

最近の記事

ランキング頼りのレコメンドシステムの危うさと、結局そこから脱せないWeb

  下記記事はごく狭い領域の話をしている。しているのだが、私もこういったことを感じることは結構ある。  運営はおそらく投稿される作品の多様性を確保したかった、なぜなら異世界もの1本だとジャンルがすたれてきた際にどうしようもなくなるから。  で、作品の多様性を確保するには、評価の多様性を確保する必要があり、そのために、異世界系を隔離したんだろうと思う。  本来なら、ランキングという多様性を担保できないレコメンドシステムそのものに手を入れなければいけなかったのに。  そして、こ

    • 株式公開のメリット・デメリット

       先日オーバーラップ吸収合併のニュースについて書いた。  オーバーラップはIPOを目指しているとも聞いていたが、私は正直コンテンツ産業は公開株にしない方が良いと思っている。  その理由をつらつら書いてみようかと思う。 株式公開のメリット  株式を市場公開すると何が良いのか?  一番は株主がキャピタルゲインを得られることだ。市場で売買されるようになれば、その株式を求める人が増え、結果株価が上がり、元の株主はそれを売却することで大きな益が得られる。  多くのベンチャー企業はこ

      • オーバーラップの吸収について

         本日気になるニュースが出ていたのでちょっとメモ書きがてら書いてみようかと思う。  オーバーラップは、KADOKAWAに買収される際にメディアファクトリーから分離した人たちが作った会社で、やっていることは昔のメディアファクトリーと同じく、ラノベ、マンガ、ゲーム、アニメの企画制作だ。  近頃では、ネット小説派生のコミックをいっぱい出していて、ぱっと見は好調のように見えていた。   だが、オーバーラップHDの2期(2023/8期)決算公告は純利益▲2億1603万で赤字。となっ

        • フリーランス新法と出版契約の話

           ホットな話題に乗ってみようかと思う。  2024年11月から施行されるフリーランス新法と、出版社と作家との契約についての話だ。  上記、河野弁護士の一連のポストが論点整理されていてわかりやすいので詳しくはこちらで見てほしいが、ざっくり編集者と一緒になって原稿を作る過程は業務委託にするべきか否かという話。  こちらについて、私は業務委託にしたら多くの作家さんは逆に苦しむことになると思っている。主な理由は締め切り、つまり納期だ。 作品創作における納期の難しさ  業務委託契

        ランキング頼りのレコメンドシステムの危うさと、結局そこから脱せないWeb

          「文化を支え」ていたのは何も本屋さんばかりではなかったはずだ。と思った話

           近年書店数はどんどんと減ってきている。店舗数の減少はもうずいぶん前からだ。  上記の出版科学研究所の報告は2003年からしかないが、1997年の市場のピークと連動するように、そのあたりから減少の一途をたどっていたように記憶をしている。  ただ、上記統計を見てもらえばわかるとおり、2018年ぐらいまでは、駅前や商店街等に合った狭小店舗がなくなり、ショッピングモール等で大型店ができるといった形で大型店は増えており、売り場坪数のピークは2013年だ。  この大型店の地方展開と

          「文化を支え」ていたのは何も本屋さんばかりではなかったはずだ。と思った話

          朝日出版社の騒動に見る後継問題

           出版社の多くは株式会社で非上場企業だ。多くは創業者が株主であり、経営者としてやっている。  なので、そのオーナー経営者が好き勝手出来てしまう。すべての意思決定の権限を持っているので。それは利点であり、問題でもあるのだが、ある程度順調なこういった会社において一番厄介な問題は後継問題だろう。  朝日出版社は従業員数52名の中堅の出版社で、もともと創業者であるオーナー経営者が100%株主で、オーナー兼経営者として会社にまつわる意思決定を行っていた、本当に世の中によくあるパターン

          朝日出版社の騒動に見る後継問題

          ゲームやアニメと出版の大きく異なる権利構造について

           先日、ゲーム関係の方から出版周りの権利構造について聞かれることがあった。そこで改めて思ったことを簡単に書いてみようと思う。 ゲームやアニメのコンテンツ要素の大部分は権利買い上げである  ゲームやアニメなどの絵や音声などが複合的に合わさっていて、さらに制作に関わる人数の多い作品というのは、多くの場合そのクリエイティブに関わった人たちからそれぞれの著作にまつわる権利を買い上げて制作される。  具体的には、制作委託契約上、納品又は発生時より、権利の帰属を発注者にして、人格権は

          ゲームやアニメと出版の大きく異なる権利構造について

          縦スクロールコミック(Webtoon)の現状について改めてまとめてみる

          米国上場したWEBTOON Entertainment Incのニュースが流れてきた。  上記記事を読む限り、期待値(上場時の目論見と、投資家の期待値)に業績が届かずという感じのようだ。  なるほど、大本となる韓国ではユーザーが減り、グローバルでは横ばい、日本でのみ売れているという状況のようだ。  日本では確かに縦スクロールコミック市場は2022年~2024年にかけていろいろなプラットホームが出現して、それに合わせてコンテンツ提供者も増え、市場は活性化しているといえる。

          縦スクロールコミック(Webtoon)の現状について改めてまとめてみる

          輸送コストを把握することって大事だなと思ったという話

           書店員さんの嘆きと怒りのNoteをいまさら読んだ。もう2か月も前のポストだ。  ざっくり言えば、お客さんに注文された商品が入荷するまで時間がかかりすぎる! というお話。    ぶっちゃけ、正直に一般的な商売の視点で見ると、使えない取次(卸業者)変えれば? という話になるように思う。  そして、Amazonが翌日配送を実現するためにどれだけの投資してるのか、宅急便があの速度でものを運ぶのにどれだけの企業努力があるか、この人は知らんのか? とも思った。きっとそんなことはないん

          輸送コストを把握することって大事だなと思ったという話

          小説の電子化が進まない理由

           小説家になった方の素直な疑問の記事を拝見した。  私も明確には理由を掴み切れていないが、実際の数字を織り交ぜてなぜなのかを考えてみたいと思う。  ちなみに最初に言及しておくと、最大の要因は年齢層が高いからだと思っている。  現在、一般文庫を買う人は60代あたりの人が多い。これは書店さんが提供している購買者統計をみれば明らかで、ここに出せる証跡はないが、業界にいる人ならわかっていることだろう。  なので、ここではそれ以外の要因について考えて見よかと思う。 ジャンルによる電

          小説の電子化が進まない理由

          文芸編集者が今、本当に考えなければいけないこと

           下記記事を読んだ。  熱意があり、いろいろと行動も起こしていて、とても良い編集者さんなんだなと思った。  ひとりでも多く、こういう編集者が増えてほしいし、応援はしたいと思う。切に。  ただ、それと同時に、ビジネス面にはほとんど触れられていないところに違和感を感じたので、ちょっとそのあたりを書いてみようかと思う。   文芸は市場環境が全く良くない  このアカウントではさんざん愚痴的に書いてきたが、文芸作品の市場は結構厳しいものがある。  上記の作品は受賞作家さんなのでま

          文芸編集者が今、本当に考えなければいけないこと

          海賊版対策に正規版を流通させるハードルについて

           以下記事を読んだ。ちょっと思っただけのことがあるので短い記事を1点。  コンテンツ産業にいる人間にとっては海賊版は頭の痛い問題だ。対策するだけでも膨大なお金と手間がかかり、かといって放っておくと徐々にちゃんとしたお客が減っていき、産業が衰退する。  そして、海賊版対策の最たるものは、公式が、きちんと有料、公式でコンテンツを楽しめる環境を作ることだと言われる。  だが、考えても見てほしい、きちんと有料サービスとして多言語、多文化対応するのは非常に大変なことなのだ。  海賊

          海賊版対策に正規版を流通させるハードルについて

          ターゲティングと3本の柱

           その昔、情報雑誌を作っていたことがある。その時にいろいろと学ばせてもらったことは多いが、その中の企画の立て方などは、どんな商品を作る上でも言えるマーケティングの基礎だったように思う。  今回はそこのところを書いてみようかと思い立った。 雑誌=ブランド=ユーザー層  雑誌というのはどの雑誌においてもブランドとして運用される。ファッション雑誌などが顕著だが、雑誌にはそれぞれのカラーがあり、そのカラーが特定の読者層を形成し、結果それがブランドになる。  そしてそのカラーを作り

          ターゲティングと3本の柱

          小説の英語圏輸出のハードルの高さ

           英語はグローバルな場でもっとも使われている言語であり、母語として英語を使っている人は少ないが、多くの人が読み書きできる言語である。  だが、英語への小説のIP輸出は非常に難易度が高い。  今回はそのあたりの話を書いてみようかと思う。 翻訳出版の状況  小説の英語翻訳のハードルが高いというのは、昔からそうで、唯一講談社は講談社インターナショナルなどを作って細々と自社の作品を英訳出版していた。  現在、多少状況は変わっている部分があって、東野圭吾などの大人気作家の作品は少数

          小説の英語圏輸出のハードルの高さ

          隙あれば自分語り(好きあれば自分が足り)

           たまにはちょっと自分語りをしてみる。といっても仕事にまつわるキャリアの話だ。 1社目:小さい出版社  自分が最初に就職したのは小さな出版社だった。雑誌、小説やコミックなども出している会社で小さいながらもいろいろな種類の出版をやっていた。  学生時代からゲームを中心にエンタメコンテンツが好きだった私は、建築学科にいたものの、当時の建築業界のスーパー不況の状況と、その中で発生していたスーパーブラックな話を聞き、とても自分は行く気にならないとあっさりと人生の方針展開を行い、エ

          隙あれば自分語り(好きあれば自分が足り)

          アニメビジネスで収益を上げるということ

           アニメ産業は割と目立っている産業である。みんな割と見ているし、アニメが割合好きだったり、それなりに見るという人は20年前に比べると大きく増えただろう。  そもそも深夜アニメのスキームが定着したのは1990年代後半以降。その頃10代後半だった人たちは、今は45~50歳程度でそれ以上の世代はあまりアニメを見てこなかった世代となる。それがそのまま年齢が持ち上がっていって、結果として幅広い年代で楽しまれるコンテンツになったというイメージだ。  今回はそんなアニメのビジネス的側面から

          アニメビジネスで収益を上げるということ