300年の歴史をもつ石畳が残る「由布市湯平地区」住民主体のチームが発足し、災害にあったまちを立て直す
1.動き始めたゆのひらんプロジェクト
パブリックプラスチームでは中間支援組織という役割で、地域運営組織の設立支援や運営支援を行っています。
大分県内でもいくつかの地域を支援しておりますが令和5年からは大分県由布市湯平地区でのまちづくり協議会が正式に立ち上がり、初年度の活動をスタートさせました。
「まちづくり協議会」という名称は大分県由布市での事業名ですが、湯平地区は、「ゆのひらんプロジェクト」という名称で結成しました。対象とする主なエリアは湯平地域の3つの自治区。人口で言うと約250人が住む地域です。
そのうち2つの自治区は、湯平温泉街が中心で、現在では14の旅館が営まれています。
湯平温泉は、令和2年7月に大分県を襲った線状降水帯により壊滅的な被害を受けました。旅館を営む一家が避難中に増水した川に流され亡くなるという悲しい出来事も起こりました。
あれから3年が経った今でも当時の爪痕からの復興事業が続けられています。
また昨年の台風でも復興途中の河川も再度被害を受け、住民の防災に対する意識もますます高まりを期待を見せているところです。
プロジェクトが立ち上がろうとしたのはまさにその令和2年7月豪雨から立ち上がろうとして1年が経った頃でした。
観光地でもあったことから、復興は地域にとっても大きな課題です。一方で、人口250人の小さな地域に、様々な組織があり、復興に向けての情報連携をスムーズにしたいという理由から、今回まちづくり協議会設立の話があがり、私たちのチームの方へ依頼が来ました。
2.地域で新しい組織を立ち上げるために
地域運営組織(まちづくり協議会)の立ち上げに当たっては、地域主導である場合と行政主導で始まる場合があります。
多くは行政主導できっかけを作り、少しずつ地域主導に移行する形で立ち上げまでをデザインしていきますが、今回湯のひらプロジェクトを立ち上げるにあたり苦労したところは、
・行政がどこまで踏み込むのか
・どこまで準備をしていくのか
・私たち中間支援どこまでサポートしどこまでを作業していくのか
というバランスです
行政がお膳立てしすぎると地域の主体性が損なわれ、またはお客様状態となり一向に主体性というものが培われません。一方で適切なハンドリングがないと、立ち上げにかける貴重な時間をただ無駄に過ごしてしまうことになります。
できるだけサポートする側が一方的な指示のような形にならないよう注意を払い、会議の進め方や内容、そして進む方向性については、地域の皆さんに決めていただけるように選択肢を準備するなど会議運営の工夫を行っています。
湯平地区は他の地域と大きく違う点として、観光地を有していることが挙げられます。
それゆえに地域の中に、多くの組織が地域内に存在しています。また、観光振興にあたって、これまでも様々なプロジェクトが動いていました。
湯平という地域のなかでも、観光地とそうでない地域との境界が生まれていることも皆さんの声から見えてきました。
一方で、湯平地区の皆さんは、湯平のアイデンティティとして温泉街や石畳の景観を大事にしていることも、アンケートの結果から見えてきました。
3.湯平の歴史を紐解く、情緒ある石畳
湯平を代表する景観の一つが、「石畳」です。400年前に、工藤三助(くどうさんすけ)という人がここに石畳を敷きました。
この方は、江戸時代、田んぼの水を引くための井路を作った郷土の偉人です。この井路工事にあたっても、様々な伝説が残っています。ここ湯平にも情緒ある石畳という形で歴史を残してくれています。
石畳を中心に温泉旅館が立ち並び、胃腸に効くという効能を持つ非常に質の良い温泉を資源に、湯平温泉の一時代を築き上げてきました。この湯平温泉に癒され、活躍した著名人も多くいるそうです。
そういった歴史を守り、次につないで、さらに活性化していこうと湯平地域の皆さんは、昔から住民や観光客が一体となってまちづくりに励んできた土地でもあります。
しかし、今回、このまちづくり協議会「ゆのひらんプロジェクト」を作るにあたり、地域の現状や課題、そして将来像などをざっくばらに話し合う中で計画を作っても長続きしないという声が聞こえてきました。
どうすれば計画が続くようになるのか、そこにゆのひらんプロジェクトが取り組むヒントが眠っているように思いました。
様々な課題があることは分かっている、そして課題をクリアしようとする計画もあるだけれどもその計画が続かない。これまで作った計画も2年くらいで自然になくなってしまったそうでした。
ここに対しての解決策は、やはりチーム(組織)で動くことが必要なのではないかと思うのです。
4.組織であることとはどういうことか
組織であること、とはどういうことか、というのを少し考えてみました。
・チームであること
・仲間がいること
・役割があること
・自分の意志が言えること
・やりたいことに取り組めること
・能動的に動くこと
・主体的であること
私も、会社以外にいくつかの組織に参加していますが、どの組織も上記のポイントが少しずつでも含まれているように思います。また組織は、「地縁型」「テーマ型」があり、特にまちづくり協議会は「地縁型」の組織としての代表格の一つ。
地縁型の組織づくりの難しさは、「自分ごとにいかにするか」というところです。地域には様々な人が暮らしていますが、興味関心が関わるメンバーも違います。同じ地域で暮らしていても、やはり興味関心のある範囲で関わりを持つ方がそれぞれのやる気を引き出せると思います。
次に、興味関心があっても、そこから行動に移せるか、というのはまた別の話です。そのためには、課題認識が同じ人や、同じ興味関心を持つ仲間が必要。
「3人寄れば文殊の知恵」とも言いますが、最低3人の気持ちを同じくする仲間を集めることが様々なチームにおいて前に進めていくエンジンになるのではないかと思うのです。
余談ですが「文殊の知恵」の発祥と言われる文殊仙寺は、大分県国東市にあります(笑)
5.湯平暮らしの編集局の編成とこれから
チームの次に「役割」が必要だなと、最近つくづく感じます。主体的に動くことがよしとされる昨今、ですが、やはり主体的に動く、というのは、やはりなかなか難しいこと。
それを期待してしまうと、歯がゆくなったり、ヤキモキしたりしませんか。一方で、主体的に動くメンバーに負担が集中したり、、と。
地域のまちづくり活動については、活動を長く、無理なく続けていくことが
大切です。そのためには、皆で協力しあいながら工夫しながらが欠かせません。
「ゆのひらんプロジェクト」を動かしていく中心チームを「湯平暮らしの編集局」とネーミングしました。それは、これからの「湯平地区」での地域づくりは観光だけでもなく、暮らしとも一体となった湯平らしい暮らし方を再編集していこう、という思いを入れています。
編集局のメンバーは、現在、地域おこし協力隊1名を含めた6名。
下記のnoteで日々の記録を綴ってくださっています。
またゆのひらんプロジェクトの設立支援については下記の動画でもご覧いただけます。
今、現在は、ゆのひらんプロジェクトの中でテーマ別の小プロジェクトを作り、湯平暮らしの中での困り事や課題解決に向けて、小さいチームで動いていくように、みんなで思考錯誤している最中です。
情報発信の工夫として連絡ツールをdiscordを活用して行っています。
みなさんそれぞれ忙しい中で、少しでもエネルギーを持ち寄って、前に進もうとする、コミュニケーションの量と質で、チームは成長していくのだと思います。
これは、すべて人と人との関わり合いで生まれてくるもので、やはり湯平の地域がもつ人のあたたかさや、おもてなしの気持ち、懐の深さが、良いチームになっていくのではないかなとこれからを楽しみにしています。
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Written by Eri Sakai