貧血の種類と原因
貧血とは
貧血は、体内の赤血球量が減少し、ヘモグロビン(Hb)またはヘマトクリット値が正常よりも低い状態と定義されます。具体的には、以下のように定義されます:
赤血球の総数または血液中のヘモグロビンの割合が減少する状態です。
通常、ヘモグロビン(Hb)またはヘマトクリット値が女性で12 g/dl未満、男性で13 g/dl未満の場合に診断されます。
貧血は、末梢組織への酸素供給が不十分な赤血球量の減少によって引き起こされるとも定義されます。
症状
疲労感:最も一般的な症状で、体力の低下や日常活動への参加が困難になることがあります【Brandberg, 2002】。
呼吸困難(呼吸障害):運動時や休息時にも呼吸が困難になることがあります【Patel, Sabat & Kanekar, 2016】。低酸素状態になり、呼吸数増加、心拍数増加を引き起こします。
めまい:平衡感覚が乱れ、立ちくらみやふらつきを感じることがあります【Family, 2018】。
食欲不振:食事に対する興味が減少することがあります【Baldass, 2001】。
筋力低下:筋肉の弱さや活動に対する耐性の低下が見られることがあります【Turkoski, 2003】。
集中力の低下:認知機能が低下し、注意力が散漫になることがあります【Rao & Pereira, 2005】。
睡眠障害:睡眠の質が低下し、夜間の目覚めや不眠を経験することがあります【Agrahari & Yadav, 2018】。
頭痛:慢性的な頭痛や偏頭痛が発生することがあります【Goyal et al., 2020】。
蒼白:血色素(ヘム)の減少でおこります。
貧血の種類
1. 小球性貧血
鉄欠乏性貧血:最も一般的なタイプで、主に胃腸系の出血や栄養不足が原因です。症状には、蒼白、弱さ、疲労感が含まれ、免疫状態や身体能力、認知機能にも影響を及ぼす可能性があります【Agrahari & Yadav, 2018】【Camaschella, 2015】。鉄欠乏によるヘモグロビン産生量減少が原因です。鉄欠乏の原因としては、
胃切除で胃酸による鉄代謝ができなくなることや、胃十二指腸潰瘍・出血・月経による鉄喪失の増加による絶対的な鉄欠乏
妊娠・成長期による鉄需要増加による相対的な鉄欠乏
サラセミア:遺伝性の血液疾患で、赤血球の異常なヘモグロビンによって引き起こされます【Pettitt et al., 2022】。
炎症性貧血:慢性炎症に関連し、鉄の利用不良によるものです【Haurani & Meyer, 1976】。
2. 大球性貧血(巨赤芽球性貧血、悪性貧血)
葉酸欠乏:葉酸不足により引き起こされ、神経管欠損症のリスクを高めることがあります。
ビタミンB12欠乏:ビタミンB12不足が原因で、神経障害や精神的な問題を引き起こすこともあります。
妊娠・悪性腫瘍などで需要が増大して相対的に欠乏したり、摂取不足、小腸疾患、胃摘出、萎縮性胃炎などで吸収障害を起こし、絶対的欠乏することでおこる
3. 再生不良性貧血
骨髄の機能不全により赤血球の産生が低下します。原因は、遺伝性疾患や骨髄抑制の影響など多岐にわたります【Valka & Čermák, 2019】。
赤血球減少により貧血症状が出現します。
白血球減少により易感染状態になります。
血小板減少により出血傾向になります。
4. 溶血性貧血
赤血球が通常より早く破壊される状態です。遺伝性の要因や免疫系の障害が原因となることがあります【Wallerstein, 1976】。ビリルビンが大量に作られるので、代謝が間に合わず黄疸がでることがあります。
不適合輸血、自己免疫、薬剤性に起こることがあります。
5. 骨髄障害性貧血
骨髄の機能低下により、赤血球が十分に産生されない状態です。これには、白血病や骨髄異形成症候群などが含まれます【Wallerstein, 1976】。
再生不良性貧血に含まれます。
6. 腎性貧血
エリスロポエチンが低下し、赤血球産生が不足することでおこります。
検査項目
貧血の診断には、赤血球数、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値、MCV(平均赤血球容積)、MCH(平均赤血球ヘモグロビン量)、MCHC(平均赤血球ヘモグロビン濃度)などの血液検査が用いられます。必要に応じて、鉄の代謝やビタミンの状態、骨髄検査なども行われます【Kundrapu & Noguez, 2018】。