腰-臀部痛 評価と治療
本記事は下記の文献の内容を参考にしました。
筋力評価を通して腰殿部痛の治療組織が
「大腰筋」にも及ぶ可能性があることについて述べていきます。
「腰からお尻が痛い」
坐骨神経が絡んでそうな発言ではありますが、
何を評価し、どう解釈していくか悩んでいる方もいると思います。
まずは、問診からです。
患者さんにいつ痛むか? 安静時や運動時痛の確認
どうしたら痛むか? 症状誘発動作など
どうしたら楽になるか 症状軽快の条件
その際、過去に
「ここ(梨状筋辺り)をほぐすと楽になる」と聞いたことがあります。
で、そこをほぐすと
治療直後は軽快する場合が多いですが、翌日には症状が再燃したり、
一定時間歩くと、歩行時痛が出現するといった経験もしました。
「坐骨神経痛」は症状の名称であり、
病態としては、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症
(変性すべり、椎間孔狭窄含む)が代表的です。
ですので、画像所見も確認します。
次に、
腰椎椎間板ヘルニアの方を対象とした研究を紹介します。
神経根とヘルニア含む周辺組織との癒着が生じている場合、
神経根はほとんど動かず末梢側が伸長され緊張すると報告されており、
炎症後の癒着は神経根の可動性を低下させ、
末梢の後根神経節にストレスが加え、疼痛を誘発すると述べられています。
評価
まず、SLRテストを確認します。
基準値として70°以上挙上可能か、
その際に神経領域の沿った疼痛が出現しないか評価します。
(ガイドラインでは高齢者は陽性になるとは限らないと記載)
角度が小さければ神経根の影響
角度が大きければ末梢性(大坐骨孔以遠)の影響が大きいと推測します。
次は、骨盤内レベルで坐骨神経の絞扼がないかの評価です。
梨状筋は股関節の外旋・外転作用を有しますが、
60°以上では内旋筋に作用が逆転します(カパンジー機能解剖学より)
梨状筋レベルでの絞扼・坐骨結節レベルでの絞扼がないかも確認します。
で、ここからが本題です。
①股関節外転の筋力低下の捉え方
股関節外転の主動作筋は中殿筋・小殿筋・大腿筋膜張筋であり、いずれも上殿神経(L4-S1)支配で梨状筋より高位で仙骨神経叢より分岐しています。
術後・廃用・神経筋疾患など極端な筋力低下を除き、
左右差を比べてみて下さい。
腰-殿部痛の病態が梨状筋より末梢の場合、
梨状筋より中枢にある上殿神経は温存されているはずです。
しかし、外転筋の筋力低下がある場合
上殿神経の障害→神経根症の示唆しているということになります。
②母趾伸展の筋力低下の捉え方
長母趾伸筋の筋力低下に対しては、深腓骨神経の障害が疑われ、
この筋肉はL5神経根症の標的筋であると言われています。
梨状筋より遠位の障害として
坐骨神経/総腓骨神経レベルの障害の可能性があります。
これらの理学所見を合わせてみていくと、、
理学所見の足し算
梨状筋より近位の障害➡外転筋の筋力低下
L5神経根症の標的筋である長母趾伸筋の筋力低下
同時に認めると
L5-S1神経根障害の可能性が高いといえます。
次は、腰部痛と絡めた話です。
腰部の筋は、椎間孔から出た後
後枝内側枝/外側枝からの支配を受けています。
L5-S1神経根障害の捉え方
図の赤×で障害(今回はL5での障害を想定)が起きると、腰痛+殿部痛が誘発される可能性があり、
脊髄神経前枝障害から捉えた神経根障害
腰・殿部痛を脊髄神経後枝内側枝由来と考えてみます。
つまり、片側の下肢筋力低下(前枝障害)と
腰-殿部痛(後枝内側枝障害)と考えることで、
L5-S1神経根障害の可能性が高いことが理解できます。
最後に、治療についてですが、
前枝・後枝内側枝に対するアプローチ 両面から行います。
治療
①大腰筋
前枝に対してのアプローチは、
腰神経叢の腹側に位置する大腰筋を治療組織として捉えています。
どう触れ、どの方向へ動かしていくか説明していきます。
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