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知って納得!腰椎不安定症について!


1.英文紹介

Tsukamoto M, Morimoto T, Kobayashi T, Muranaka K, Yoshihara T, Maeda K, Sonohata M, Kasai Y, Otani K, Mawatari M. The relationship between traction spurs, Modic change, vacuum phenomenon, and segmental instability of the lumbar spine. Sci Rep. 2022 Jun 15;12(1):9939. doi: 10.1038/s41598-022-14244-4. PMID: 35705718; PMCID: PMC9200777.

2.はじめに

 椎体不安定性の指標としての画像所見は、骨棘、モディック変化(椎間板:MC)、バキューム現象(VP)などである。しかし、動態X線撮影と椎体不安定性の指標(骨棘、MC、VP)との関係は明らかではない。
 本研究では、X線、CT、MRIによって検出された各セグメントの不安定性と変性所見との関係を評価することである。

3.対象と方法

 対象者、105人(男性60人、女性45人、平均年齢68.0±12.8歳)、疾患内訳は、腰部脊柱管狭窄症72例(68.6%)、腰椎椎間板ヘルニア15例(14.3%)、変性性脊椎症9例(8.6%)、その他9例(8.6%)である。全患者に対して、X線撮影、CT、MRI検査を実施した。
 X線撮影パラメータより、椎間板前面高さ(以下:ADH)、椎体すべり角(以下:ST)、すべり距離(以下:SA)などを測定、ADHは、座位と立位の差を求めた。STとSAは、屈曲時と伸展時の滑り距離や角度の差で表した。さらに、腰椎の前方骨棘を葛西らの分類に基づき骨棘-をA群、B・Cをclaw spur群、D・Eをtraction spur群に分類した。椎間板の評価は、Roosら分類に基づきT1・T2矢状面から、なし・Type1・2・3に分類した。ガス像は、CT画像によるガス状領域の有無で判断した。

 ADHは、上下終板の最も前方の点間の距離として測定された。

 αは、患部の椎間板の終板における2本の線の間の角度。屈曲・伸展位の椎間すべり角の差をSAとした。bは、平行線cとdの垂直距離を測定し、この2本の平行線間の距離をとした。屈曲・伸展位の間の距離の差をSTとした。
 先行研究を参考にADH>3mm、SA>10°、ST>2mmを不安定性ありと定義した。

4.結果

 ADHと骨棘(Spur)、椎間板(MCs)、ガス像(VP)との間には有意差を認めた。STと骨棘(Spur)、SAとガス像(VP)に有意を認めた。

ADH>3mmの各項目とORを検討するとガス像+(VP)で有意差を認め、AOR:調整オッズ比1.94であった

ST>2mmと各項目のORを検討するとtraction spurで有意差を認め、AOR:調整オッズ比4.74であった

SA>10°と各項目のORを検討するとガス像(VP)で有意差を認めたもののAOR:調整オッズ比0.174であった。

5.興味深い点

 今回の結果を踏まえると下記の図のようになると考えられる。

 つまり、ADH(座位と立位の差)が3mm以上であるとガス像が約2倍生じやすいということ。これは、垂直軸の圧縮の力を反映していると思われ長軸方向の不安定性の所見であると考えられる。
 一方、STに関しては、一般的にすべりの程度の指標である。これが前後屈動作の動態撮影によって、2mm以上であればTraction spurが約5倍生じやすいということ。これは、矢状面の剪断力の力を反映していると思われ、前後方向の不安定性の所見であると考えられる。

 自分自身高齢者の腰OAに関しては、どちらかというと関節の変性によって安定性が増していると考えていたが、そこには分節的な不安定性が生じているのだと改めて考えさせられた。レントゲンから骨棘とガス像が散見されれば、不安定症の存在をある程度評価ができると思われる。さらに、臨床所見と照らし合わせて、不安定性による痛みなのかどうか、体幹の安定化を図るべきなのかなどが分かると思われる。

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