
「Cubic Chiverb」による空間演出/Susumu Kunisaki
PSYCHOSISとDowserによる「音像空間劇」シリーズは2022年10月上演の「艶恨録-阿部定調書-」からスタートした。その公演時のパンフレットにも書いたが、RITTOR BASEには「Cubic Chiverb」というさまざまな空間をシミュレートできるシステムがあり、そもそもは音楽イベント用のそれを朗読イベントにも活用できないか、と思ったのがきっかけであった。
「Cubic Chiverb」とは、電子音楽家でありリバーブ偏執狂として知られるKatsuhiro Chiba氏によるソフトウェアベースのマルチチャンネル・リバーブである。もともとChiba氏はCYCLING'74 Maxで「Chiverb」というステレオ(2ch)のリバーブ・エンジンを作られており、それをベースにRITTOR BASE専用の8chバージョン=「Cubic Chiverb」としてカスタムメイドしていただいたのだ。
RITTOR BASEはドイツのCODAというメーカーの小型スピーカーD5を天井に4個、床に4個、客席を取り囲むように設置している。8個のスピーカーによるこの配置は、立方体の形状ゆえ8ch Cubeと呼ばれ、立体音響再生の基本フォーマットの1つとして知られている。2個のスピーカーで左右の音像を表現できるように(いわゆるステレオだ)、8個のスピーカーを使うと、左右のみならず前後、上下などあらゆる方向の音像を表現できるようになるのだ。
Cubic Chiverbは、この8ch Cube配置のスピーカーのために作られたリバーブなのだ。通常のステレオ・リバーブが前後の奥行きのみの表現になるのに対し、上下の表現も可能になり、お世辞にも高いと言えないRITTOR BASEの天高をはるかに超える空間を現出させることができる。プリセットとして用意されているのはルーム、シアター、ホール、チャーチ(教会!)、ケイブ(洞窟!!)などなど。それらを演目に応じ、場面に応じ使い分けることが可能なのだ。
「JINMENSO-人面疽-」は、谷崎潤一郎の「人面疽」をベースとしながら、「刺青」や「白日夢」などさまざま谷崎作品が立ち現れる。そのメタ構造を演出するのにCubic Chiverbは大きな役割を果たす予定である。
今回、客席設営の関係上、後方床面の2個のスピーカーは設置せず、8chではなく6chのシステムとして運用する。ただ、配信は8ch Cubeをステレオにたたみ込んだHPLによるバイノーラル配信となるので、ひょっとしたら会場以上の没入感が得られるかもしれない。
そして長嶌寬幸氏による音楽は、フロント左右のGENELECのスピーカーS360A×2、同じくGENELECのサブウーファー7380A、そしてCODA D5×6という、2.1.6chというシステムで再生される。長嶌氏の繰り出すサウンドとCubic Chiverbにより空間演出された俳優陣の声……それらがどんな世界を召喚するか、ぜひ会場で、配信で体験していただきたい。
2024.12.26
國崎晋(RITTOR BASEディレクター)
Katsuhiro Chiba
8ch Cube
HPL
PSYCHOSIS with Dowser
音像空間劇「JINMENSO-人面疽-」
原作 谷崎潤一郎
演出・構成 森永理科(PSYCHOSIS)
音楽・脚本 長嶌寛幸(Dowser)
2025年1月17日(金)〜19日(日)17日(金) 19:00
18日(土) 13:30/17:3019日(日) 13:30(※アフタートーク有) ※17日、19日のチケットは完売しました。
会場 御茶ノ水RITTOR BASE
〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台2丁目1 お茶の水クリスチャン・センタービル B1
TICKET(Peatix前売りのみの取り扱い)
会場入場券(配信視聴券/整理券番号付き):4,400円
配信視聴券:2,200円
※受付開始は開演の30分前
※入場開始は開演の20分前より行います。
※整理券番号順でのご入場です。
CAST
森永理科/國崎馨/小坂知子/嬉野ゆう/武田治香(深海洋燈)
Staff
絵 岡庭秀之
音響 Nancy
配信 國崎晋(RITTOR BASE)
照明 南雲美香(PSYCHOSIS)
制作 RITTOR BASE/高田ゆか(PSYCHOSIS)
写真 嬉野ゆう
企画 國崎晋(RITTOR BASE)
主催 リットーミュージック
公演特設ページ
https://www.psychosis13.com/2025-01-jinmenso