【短編ホラーミステリー】奇妙な展示室
短編小説:「奇妙な展示室」
(5〜7分で読めます。)
エピローグ
これは、ある館に飾られた絵画です。
あなたには、この絵画の異常さが分かりますか?
絵画というものは、一見すると何の変哲もないものに見えても、正しく解釈すると、全く異なる意味を持つことがあります。果たして、あなたは本当の意味に気付き、真実に辿り着くことができるのでしょうか。
第一章:迷い込んだ館
ある雨の夜、都市伝説のジャーナリストである私は、古びた館の前に立っていました。館の内部は暗く、冷たい空気が漂っています。この館、新たな買い手が現れる度に、買い手が不自然な死を遂げるという噂がありました。管理者も手入れができず、放置された状態が続いているらしい。
「この館には何かある」そう直感した私は、中へと足を踏み入れました。壁には様々な不気味な絵が飾られており、その一つ一つが異様な雰囲気を放っています。
特に一枚の絵が私の目を引きました。そこには、豪華な舞踏会の場面が描かれていましたが、参加者の表情はどこか不自然でした。まるで全員が何かに怯えているかのよう。。
第二章:隠されたメッセージ
わたしはその絵をじっくり観察し始めました。近づいてよく見てみると、参加者の目が一点を見つめている。。?その視線の先は、窓の外。。窓の外にはただの風景が広がっているように見えるけど、あっ。。
わたしはふと、以前に聞いたアニメの制作秘話を思い出しました。「アニメは、描かれたもの全てに意味がある」。それは、全てのものが作者がわざと描いた以外にそこに存在する理由がないからです。絵画も同様。。。では、なぜわざわざこのような表情と目線にしたのでしょうか?
ここで、絵画に詳しい知人の梨川さんに連絡してみることにしました。
梨川「なるほど、確かに絵画も描かれているものには全て意味があります。描き手は見ている人の知性を信じて絵を描くからです。参加者が見ている先、もう少し詳しく教えてくれませんか?」
私「それがただの風景なんです。あまりよくわからないですが、背の高い木が生えています」
梨川「その絵、その館の昔の姿なんじゃないですか?だったら今、窓の外を覗いてみてください」
私「ちょっと怖いこと言わないでください。でも分かりました……。あそこか、この部屋からも木が見えます。縦に細長い、円柱の木」
梨川「円柱の木……針葉樹ですか……?落ち着いて聞いてください。それはきっと糸杉です。イエス・キリストが磔にされた木もイトスギですね。絵にこの木が描かれた場合『死と喪』を意味します」
私「『死と喪』……。なぜ参加者たちは……ありがとうございます。また気になることがあれば電話させてもらいますね」
私はは鳥肌が立つのを抑え、さらに詳しく調べることにしました。あっ絵の隅に小さな文字が書かれてある。それは作者のサインでしたが、何か続きが書いてあるようでした。額縁で見えない部分を確認するため、わたしは勇気を出して絵を外し、額縁を取り外しました。そこにはこう書かれていました。
「この館の主人を見つけよ。彼が全ての鍵を握っている。」
わたしはそのメッセージが何を意味するのか考え込みました。
第三章:館の主人
わたしは館を探索し始めました。各部屋にはさらに奇妙な絵が飾られており、どれも何かを暗示しているようでした。
私「この館にはたくさんの絵があるけど、館の主人の絵はないな。なぜだろう。他に何か情報がある絵は……この館にある絵のうち、何枚かはこの館そのものが描かれている。。。そこに何かのヒントがあるのかも」
私「この絵、この部屋だ。この絵も何か違和感がある。なんだろう……。窓はあるけど、今度は、空が見えてるな。窓、窓……数が今と違う?この絵では5つだけど、今は4つ……この館は入り組んでいて間取りが分かりづらいけど、奥にはまだ謎の空間があるんだ」
ここで電話が鳴った。
私「あっ梨川さんからだ。」
梨川「心配して電話をかけてしまいました。何か変わったことはないですか?」
私「大丈夫です。でもおかしな絵をまた見つけました。この部屋、絵では窓が5つなのに今は4つなんです。今、そのおかしな空間を調べているところです」
梨川「ちなみにその絵には何が描かれているんですか?
私「女神っぽい絵です。今、写真を撮って送りますね」
梨川「なるほど。この絵は誰と誰か分かりますか?女性の一人は三日月の髪飾りをつけていますよね?矢筒や仕留めた動物たちが描かれているので、これは狩の女神アルテミスだと分かります。もう一人は侍女の妖精でしょう。
でも後ろを見てください、鷲が描かれていますよね。このアトリビュートを持つ神は何か分かりますか?ゼウスです。ゼウスがアルテミスに化けている場面なんですよ。ギリシャ神話にはゼウスがアルテミスに化けて、侍女の妖精を手籠にする話があるんです。この絵のメッセージは『すり替わり』です」
やがてわたしは、一つの部屋の奥にある秘密の扉を発見しました。扉を開けると、中には古びた机があり、その上には分厚い日記が置かれていました。わたしは日記を開き、館の主人である画家の告白を読み始めました。そこにはこう書かれていました。
「側近の一人が盗みを働いていると思われる。わたしの地位を脅かし、この家を乗っ取ろうとしている。」自分の身を案じる文章が並んでいる。彼は、自分の絵で暗に真実を表現するために、これらの作品を飾っていたのでした。
第四章:最後の試練
私その事実に戦慄し、すぐに館を離れようとしました。しかし、館の出口は開かず、私は迷い込んだままです。
しばらくすると、ささやく声が聞こえた。「お前もこの家を狙っているのか?」それは館の唯一の生存者である管理者でした。かつての主人を殺し、自分がこの館の所有者としてすり替わった犯人。自分がこの館を所有し始めてからも、かつての自分のように誰かがこの館を狙っているのではと疑心暗鬼になり、狂ってしまったのでしょう。
私は、脱出の方法を考えながら逃げました。「あのメッセージを思い出します。『この館の主人を見つけよ。彼が全ての鍵を握っている。』脱出するための何かがあるのではないか。」
私は、主人の絵を見つけました。それは、風景の中に溶け込んだ小さな画家の姿でした。大々的に描くとすぐに捨てられてしまうと思ったのでしょう。一流の画家は、自画像をあえてひ弱でみすぼらしく描くことがあるともいいます。
その絵の中に隠された鍵を見つけ出すことに成功しました。わたしはその鍵を使い、ようやく館から脱出することができました。
その館のその後は私には知る由もありません。
私の話に異様に興味を示していた、梨川さんが、好奇心でその館を訪れないことを祈ります。
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