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日本思想、美術から読み取れる信仰の変化(十界)

  宮治昭の『生死輪(六道輪廻図)から観心十界図へ~仏教世界観を美術から読み解く~』の資料を基に、『十界』についてや、信仰のスタイルの変化について知識を広げてみようと思います。

上図は、『歓心十方界図』といわれ、日本の江戸時代にこの版画が随分と作られました。
上の方の文字が並んでいる部分は、仏道に入ることを勧める内容が記されており、下の絵の部分は「心」の文字を中心に、六道と四聖が大円内に描かれています。

私が、特におもしろいと感じた部分は、円の部分や一つ一つの十界を区切る線が描かれているのですが、それがただの線ではなく、よく見てみると小さな〇をたくさん描いて線のように見せているところです。

 念仏を唱えた回数でその小さな〇に墨を塗り、百万遍唱えたといわれています。『歓心十方界図』を前に、念仏を唱えることによって、浄土に往生ができるという信仰スタイルが流行っていたそうです。 念仏というのは「易行」で誰にでもたやすくでき、往生が保障できいい意味でとても楽なものだと思います。さらに今回の上の図で、念仏を行った回数に合わせて墨を塗るなど、目に視覚として自分の信仰の成果を見られるようにするとは、さらに分かりやすい精神世界に変化していっていると感じます。

 大変な修業をし、苦しい思いをしながら自分がきちんと救済してもらえるか不安な世界より多くの人が幸せになるようになったと思い、私はとてもいい時代の流れだと思いました。 私は、宗教を信仰していない人間ですが、もし違う時代に生まれていて宗教を信仰しているのが当然だとしたら、仏教が日本に入ってきて神道と融合されてきた念仏で救われると思える時代になってからの方が幸せなのではないかと、考えさせられました。 

参考文献
宮治昭『生死輪(六道輪廻図)から観心十界図へ~仏教世界観を美術から読み解く~』、禅研究所紀要 (47):2018 p.35-65

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