生活期リハビリテーションと栄養管理の考え方
生活期リハビリテーションと栄養管理の考え方ー摂食嚥下障害の視点も含めてー
藤本篤士、大塚佐季子、阿部沙耶香
JOURNAL OF CLINICAL REHABILITATION 第31巻・第1号(通巻364号)・2022年1月号 P38-47
【内容要約】
生活期リハビリテーションにおける栄養面での介入は二次的障害予防に深く関わっており、そのための栄養評価が列挙されている。また栄養評価とサルコペニアの関連について記載されている。
【アブストラクト】
Ⅰ.生活期リハビリテーション目標
一般的な生活期リハビリテーションの目標はADLの改善維持、生活習慣の維持、記憶・認知機能の改善向上等がある。また栄養管理目標として骨格筋量維持、日常生活活動度の低下予防が重要であり、リハビリと栄養面でのアプローチが低栄養とサルコペニアの予防となる。
Ⅱ.栄養評価
栄養評価にはESPEN(欧州臨床栄養代謝学会)やASPEN(米国静脈経腸栄養学会)、PENSA(アジア静脈経腸栄養学会)、FELANPE(ラテンアメリカ栄養療法学会)、JSPEN(日本臨床栄養代謝学会)等によるGLIM基準が正解的な標準評価となってきている。本稿には低栄養診断のアルコリズムが掲載されている。
しかし生活期リハの現場では簡易的な評価ツールとしてMini Nutritional Assessment Short Form(MNA®︎-SF)が強く推奨されている。この評価は6項目から構成され、「低栄養」、「低栄養のおそれあり」、「栄養状態良好」と判断される。
最も簡便な評価としては体重変化が指標となる。だが浮腫等の体重変動に対する注意が必要である。
Ⅲ.リハ栄養ケアプロセス
リハ栄養ケアプロセスは、リハ栄養アセスメント・診断推論、栄養診断、ゴール設定、栄養介入、モニタリングの過程で構成される。スクリーニング評価を行い、ICFで生活期の全体像を捉えることが必要である。また栄養診断ではアセスメントより栄養障害、サルコペニア、栄養摂取の過不足と診断する。介入期間は3ヶ月に一回が目安となることが多く、「食べることは生活の一部であり、人生である」ことを念頭に持続可能なケアを行う。
Ⅳ.低栄養への具体的な対応の目安
1日のエネルギー消費量は、基礎エネルギー消費量をHarris Benedictの式で算出し、活動係数とストレス係数を乗じて、総エネルギー消費量を求めるものが一般的である。
日本での研究報告では栄養状態維持のために必要となる活動係数は、BMI 18.5Kg/m²未満で1.7、18.5kg/m²以上25kg/m²未満で1.4、25kg/m²以上で1.2とある。
体重増加を見込むためには1日あたりに追加すべきエネルギー蓄積量を算出する必要があり、目標体重から現体重を引き、体重1kgあたりに該当する約7,000kcalを乗じたエネルギー量を日数で除すると求められる。また高齢者の場合、1kg体重増量に8,800〜22,600kcal/kgの栄養摂取が必要という報告もある。
高齢者の筋蛋白合成を促すためには体重1Kgあたり1.0〜1.5gのたんぱく質摂取が望ましいとされる。
Ⅴ. サルコペニアの診断
サルコペニアとは加齢に伴う筋肉量減少であり、原因は原発性サルコペニアでは加齢、二次性サルコペニアでは不活動、低栄養、疾患の4大要因である。日本ではAWGS2019が診断基準として強く推奨され、骨格筋量、筋力、身体機能指標で サルコペニアと評価される。
生活期では①下腿周径、②指輪っかテスト、③握力、④5回椅子立ち上がりテストが簡便な評価ができると推奨される。
日本の高齢者(75〜79歳)男女とも約22%、80歳以上の男性約32%、女性約48%がサルコペニアという報告もある。
Ⅵ.サルコペニアへの対応
加齢性サルコペニア対策として、レジスタンストレーニングとたんぱく質やアミノ酸の摂取が効果的であるとされている。不活動性であれば、早期離床、運動、安易な安静や絶飲食の防止、生活期ではデイサービス利用、家庭内での趣味、家事活動等による引きこもりの予防が必要である。(具体的に2〜3Mets以下のADL活動は制限しない)また摂食嚥下機能の維持も重要である。
Ⅶ.サルコペニアの予防
サルコペニア予防にたんぱく質とアミノ酸摂取が必要であり、重度腎機能障害がなければ、1.0〜1.25g/kg体重/日以上の良質なたんぱく質の摂取が推奨される。高齢者の場合、ビタミンD欠乏症と身体活動レベル低下にも注意が必要である。(日本では65歳以上のビタミンD摂取目安は8.5μg/日を適用)
Ⅷ.生活期リハビリテーションの栄養管理のトピックー摂食嚥下評価の重要性
誤嚥により体力低下、発熱、肺炎等が誘発されるため、生活期での摂食嚥下評価は非常に注意が必要である。
評価方法としてはKTバランスチャートやMASA等がある。
【勉強となった点】
全国には「栄養ケア・ステーション」となるネットワーク体制が整備されており、医師の指示により管理栄養士が訪問栄養指導が月に2回まで介護保険を利用し、栄養や食事管理、指導を行うことができる。
管理栄養士により持続的な指導に基づく、栄養管理が本人・家族、介助者の負担軽減につながり、生活期では重要である。
【最後に一言】
生活期においてはリハビリテーションの効果を持続、増大させ、二次的障害予防のためにも栄養管理を同時に行うことが必要である。
また生活期では細分化された評価は時間や場所、技術等を必要とすることもあり、より簡便な評価によるスクリーニングが必要である。
また管理栄養士の訪問栄養指導も重要となり、リハビリテーションを含めて多職種連携が生活期ではさらに重要となる。
私たちリハビリスタッフにおいても日頃から栄養面の視点を保つことが早期発見につながる。
執筆:本多竜也
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