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投球障害の運動療法

投球障害の運動療法
高村隆、高見悠也、佐久間孝志
理学療法ジャーナル Vol.54 No.5 MAY.2020 P489-491
 

●内容のまとめ

野球における投球動作では、重心の並進運動と回旋運動のコンビネーションが重要。破綻する事で、局所的なストレスがかかり、投球肩障害が生じやすくなる。

今回の文献では、投球相を5相に分けて解説している。

 

1相:ワインドアップ期

投球動作は、下肢から上肢にかけての運動連鎖によって遂行される動作で、投球動作において、1相は重要な相ではあるが、肩に直接的な障害は起こりにくい。

 

2相:早期コッキング期

この相では投球方向への並進運動を行い、運動エネルギーを作る。下肢のエネルギーを上肢に伝えるために重要な相であり、この時肩は水平外転角度が最も大きくなる。

この際に、肩甲上腕関節の過度な水平外転は避けるべきである。この際の肩関節痛は、肩峰下インピンジメントによる物が多い。

今後の動作につなげるために、肘下がりは防ぐ必要がある。支持脚では、十分な並進運動を起せなければ、不良姿勢での投球になるため、上記2点は、評価が必要。

 

3相:後期コッキング期

前相までに行った並進運動を回旋運動に変える必要がある。その後、肩の外旋方向へのストレスが大きくかかる。この外旋運動は能動的なものでは無く、体幹の回旋によりボールを持った腕が後方に残った状態であり、この時の肩関節痛は、SLAP損傷や、肩板断裂などがある。上記の外旋強制により肩板関節面や後上方関節唇の接触が増えインターナルインピンジメントが起こり、これらの原因であると考えられる。

肘には、内側にメカニカルストレスがかかり、UCL損傷なども起こりやすい。

 

4相:アクセレレーション期

並進運動から回転運動への移行による運動エネルギーをボールへと伝える相。この時、肩への圧縮力は、全体を通して最大となる。ボールリリースまでの外旋から内旋への変化が最も大きく、内線の角速度は大きくなる為、肩峰下インピンジメントが起こりやすい。この時肘には、肘頭と肘頭窩内側のインピンジメントによる骨棘の形成や肘頭骨折がある。

 

5相:フォロースルー期

ボールに伝達されなかった余剰な運動エネルギーを分散する為、上肢の減速が必要で、この時肩は体重と同等の牽引力がかかりさらに最大内旋まで至り水平内転していく。この時筋の遠心性収縮によって負荷を吸収していると考えられている。この繰り返しにより、後方筋群の疲労に伴う障害が生じる。SLAPやBenett損傷の原因になる相でもある。肘にも同様に肘頭や肘頭窩内側のインピンジメントによる骨棘形成や疲労骨折が挙げられる。

 

★クボちゃん’S ポイント

今回まとめた項目以外にも、雑誌には評価すべき点などもまとめてあり、とても参考になる記事であった。

投球肩障害として取り上げられていたが、肩に障害のある患者様、利用者様を対象に介入する場合にも使える考え方が記載されている為、Assessmentする際の引き出しの一つとして、是非読んでおきたい記事である。

記事:クボちゃん

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