成長期の膝関節周辺のスポーツ障害と理学療法
成長期の膝関節周辺のスポーツ障害と理学療法
塩田真史
Journal of Physical Therapy Vol.38 No.9 2021.9 P 821-829
【アブストラクト】
病態
1)骨成長の観点 2)身体機能の観点 3)バイオメカニクスの観点
発生のメカニズム
評価
1)主訴 2)炎症所見 3)機能評価
理学療法の考え方
1)患部の炎症症状 2)アライメント 3)筋柔軟性 4)筋機能 5)動作改善
【構成】
代表的な疾患として、オスグッドシュラッター病(OSD)、Sinding-Larsen-Johansson(SLJD)がある。OSDとSLJDについて病態とメカニズムの理解や理学療法の進め方について述べられてる文献である。
【内容】
成長期の膝関節周辺に発生するスポーツ障害の代表的な疾患として、OSDとSLJDがある。骨成長の観点から、脛骨粗面が力学的に脆弱なapophyseal stageに至るまで牽引ストレスが加わり、脛骨粗面部や膝蓋骨下極の炎症、部分的剥離などが生じてapophyseal stageからepiphyseal stageにかけ発症する。
身体機能の観点より、大腿四頭筋・下腿三頭筋の柔軟性低下、大腿四頭筋の求心性筋力と遠心性筋力のアンバランスという筋力が問題視されている。
バイオメカニクスの観点より、運動の質や量が向上し、比較的高負荷頻度の運動や特定の競技動作を反復することで大腿四頭筋が過緊張、不良動作が過収縮を招き牽引ストレスが加わることが発症の要因。
評価では主訴、炎症所見、機能評価が重要。OSD、SLJDの主訴は疼痛である。主訴の聴取により、疼痛の急性発生/慢性発生及び発症からの経過、受診時点と動作場面での疼痛を調査する。炎症所見はOSDでは脛骨粗面、SLJDでは膝蓋骨下極を確認する。
機能評価ではアライメント、関節運動パターン、可動域・可動性、筋力、動作分析を行う。
理学療法の考え方として、大腿四頭筋の過緊張を防ぐことがポイントである。患部の炎症症状への対応として、アイシングなどの物理療法と活動制限による可及的早期の消炎である。
アライメントへの対応として、OSDやSLJDでは膝蓋骨上方偏位や脛骨前方偏位を改善するため、大腿直筋、中間広筋、ハムストリングス、腓腹筋のストレッチを行う。筋柔軟性への対応は、大腿四頭筋の柔軟性改善、ハムストリングス短縮や足関節背屈制限の改善も行う。
筋機能への対応は、大腿直筋優位となり広筋群の機能不全や萎縮が多く、広筋群の機能改善を行う。動作改善としては、大腿四頭筋の過活動抑制するような動作改善を行う。
大腿四頭筋の過緊張を確認改善することは、正常機能の維持や再発予防にもつながる。スポーツ復帰にあたっては、患部の骨成長段階することが重要である。
【面白かった点と感想】
代表的な疾患であるOSDとSLJDに対して、どのように評価し治療を行なっていくかのポイントが分かりやすく記載されている文献と感じました。
【結語】
学生時代にOSDの経験があります。何も知識がなく痛みに耐えながら安静期間を設けるだけでした。そんな成長期の患者を一人でも助けになるような知識が詰まっている文献です。是非読んでください。
記事:琢麻
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