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オーバービュー(生活期)

ーバービュー(生活期)
川手信行
JOURNAL OF CLINICAL REHABILITATION
第31巻・第6号(通巻369号)・2022年6月号 P506-511

Key  Words:生活期、リハビリテーション、地域包括ケアシステム、リハビリテーション専門医、活動

【アブストラクト】

Ⅰ.生活期リハビリテーションとは

生活期リハビリテーションという言葉が使われる様になった経緯に、急性期や回復期が終了しても少なからず身体機能や能力が向上することもあり、活動制限・参加制約等の障害は絶えず変化があり、維持しているのではないという視点から意味合いから使われる様になった。

また急性期・回復期リハビリテーションが終了し、退院した後というイメージが強くこれらに付随したものという見え方があるが、急性期・回復期に比べ、経過は長くなるためこちらも優先されるべきものである。

日本リハビリテーション病院・施設協会の出している地域リハビリテーションの定義は「障害のある子どもや成人、高齢者とその家族が、住み慣れたところで、一生安全に、その人らしくいきいきとした生活ができるよう、保健・医療・福祉・介護及び地域住民を含め生活にかかわるあらゆる人々や機関・組織がリハビリテーションの立場から協力し合って行う活動の全てを言う」とされており、これは地域包括ケアシステムの考えと共通する部分もあり、地域が生活となれば生活期リハビリテーションの考えそのものとなる。

Ⅱ.生活期リハビリテーションにおける課題

病院・施設等から自宅へ退院した場合、そこは「住みなれた家」であっても機能障害・活動制限等を抱えた利用者にとっては今まで生活していた環境とは違う生活を強いられる。この様な状況の生活に介入しより良い環境で生活を営むことを支援する必要がある。

しかし在宅でのリハビリテーションにおけるリハビリテーション専門職種の関与は、時間、人共に少ないのが現状である。また活動性の回復に時間を要するため、目標設定がままらなければ、同じような訓練の繰り返しが長期間渡り継続するリスクもある。

特に医療保険下でのリハビリテーション訓練が併用ができない場、リハビリテーション科医による適切なリハビリテーション治療、マネージメントが受けられない場合もある。これにより漫然としたリハビリテーション介入の継続につながり、リハビリテーション依存に陥る可能性も高くなることが課題である。

Ⅲ.生活期における医師の役割

生活再構築のために、利用者個人の身体、環境状況に合わせた、毛べつ的な目標が明確に設定されることが、漠然とした要求を訴える利用者の意志を積極的な参加につなげる。

生活期では患者本人が主役であり、その場には医療従事者は存在しない。そのため本人の考えや意志で主体的に行動、参加することが重要であるため、我々はそれを促していかなければならない。

生活期で患者を長期的に診察することは①健康管理・緊急事態への対応、②機能の維持・向上、③生活の維持・向上、④家族機能の維持・向上、⑤社会参加の促進であると里宇らは述べている。

Ⅳ.おわりに

リハビリテーションの視点から生活期は安定した期ではなく、能力や障害、環境は絶えず変化していることに対して二次的障害や活動性低下のリスクにアプローチをしていくことが重要である。そのためには早期診断、適切な治療とそれに伴う総合的・包括的なリハビリテーションプログラムの立案を行うことがリハビリテーション科医にと求められる。

またこれにリハビリテーション専門職種が患者、家族に関わることが重要であり、その他、ケアマネジャーや保健師、介護福祉士等の専門職種が密に連携をとることが地域包括ケアシステムの展開には必要となる。

【勉強となった点】

生活期と聞くと症状が安定し、身体機能維持のための介入が長期に渡り継続するというイメージがあり、専門職としては持っている専門性を生かしきれないような考えを持っていた。しかし本稿を拝読することで、生活期での身体機能の向上も少なからず見られ、今までと同じ家に帰ったとしても患者本人にとっては身体状況が変化しているので二次的障害を引き起こすことを理解しなければならない。

その上で本人の主体性を引き出すような目標設定や介入が我々には必要であることがわかる。

【最後に一言】

身体機能の著明な変化がないからといって、生活期での漫然とした介入を続けることはリハビリテーション依存者を増加させる。地域でのよりよい生活の営みを支援できる専門職であり、これからも必要とされることが予想される。暮らしの多様性が広がり、個々での生活に焦点を当て生活支援を行う必要がある。

執筆:本多竜也

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