脳卒中急性期血管内治療の進歩とリハビリテーションの実践
脳卒中急性期血管内治療の進歩とリハビリテーションの実践
桑島敦氏・奥村浩隆
総合リハビリテーション Vol.50 No.3 2022.3 pp225-233
★今回の記事はこんな方にオススメ!
・脳血管疾患に関わることの多い方
こんにちは!未だ花粉症と格闘中の‘テツ’です!
今回は脳卒中治療における血管内治療についての記事を紹介します。
私は臨床の中で脳卒中の方に触れる機会が少ないので、今回の記事で皆さんと一緒に知識を付けようと思います!
【脳血管内治療について】
脳梗塞超急性期における脳血管内治療は、新たなデバイスの開発やエビデンスの構築により治療拡大が期待される分野です。
2015年には新たなデバイスを用いた機械的血栓療法(Mechanical Thrombectomy;MT)の安全性と有効性が証明され、
2017年にはその結果を受けて発症6時間以内にステント型脳血栓回収機器を用いた血栓回収治療を開始することがグレードAで推奨されました。
2019年には治療適応時間が拡大され、6時間を超えた脳梗塞でも神経徴候と画像診断で治療判定を行い、最終健常確認時刻から16時間以内のMT治療開始がグレードA、16~24時間以内のMT治療開始がグレードBとなっています。
2021年では脳血管内治療の推奨が更に拡大しています。
【血栓回収療法について】
脳卒中治療ガイドライン2021ではMTを含む経動脈的血行再建療法に関する変更点について触れていきます。
●MTの治療推奨の拡大
今回記載された例についてはすべて発症6時間以内にMTを開始することを考慮しても良い(推奨度C)と記載されています。それぞれ、追加された理由を見ていこうと思います。
・広範囲脳梗塞(ASPECTS3~5):
前方循環系の主冠動脈急性閉塞例を対象とした7試験の統合解析において、90日後mRSの有意な改善効果を認めたため
・軽症例(NIHSS6未満):
症候性頭蓋内出血の発生や、90日後の転帰は内科治療群と差がなかったため
・中大脳動脈M2閉塞:
90日後のmRS 0~2は内科治療群よりもMT群で改善傾向を認め、症候性頭蓋内出血の発生も0%であったため
・脳底動脈閉塞(発症8時間以内):
内科治療群よりMT群の転帰良好であったことと、症候性頭蓋内出血による死亡率が低かったため
※有効性が安全性を上回ると判断された場合にMTを開始することを考慮しても良い
・発症前mRS2:
治療前に機能障害があっても、治療後は同様に良好な転帰が得られたため
●t-PAと血栓回収療法
t-PAは発症から4.5時間以内に治療可能な急性期脳梗塞患者に対して、来院時遅くても1時間以内の投与が推奨(推奨度A)され、発症時刻が不明で発症4.5時間以内の可能性が高い場合は、t-PAを考慮しても良い(推奨度C)とされました。
今回の改訂ではt-PAの回避が検討され、脳梗塞に対してMT単独治療 vs t-PA併用療法を比較したRCTでは90日後の転帰mRS、死亡率、有効再開通率、症候性頭蓋内出血の発生、合併症に差が認められませんでした。この結果を受け、脳卒中治療ガイドラインではt-PAを行わずにMTを開始することを考慮しても良いこと(推奨度C)が記載されました。
【MT後のリハビリについて】
脳卒中治療ガイドラインの急性期リハビリテーションについて推奨度Aとして記載されているものを見ていきます。
多職種で構成された専門チームで、集中的治療と早期リハビリができる脳卒中専門病棟であるstroke unitであること
リハビリ評価尺度を用いること
リハビリプログラムは脳卒中の病態、個別の機能障害、ADL障害など評価・予後予測に基づいて計画すること
リスク管理を行い、早期離床や装具を用いた歩行訓練など積極的なリハビリを早期から実施すること
バイタル徴候に配慮して行うこと
早期離床について「どのくらいに時期に開始すれば?」と思う方も少なくないと思います。
24時間以内の超急性期リハビリの場合には、頭部挙上時の脳血流低下による虚血性ペナンブラ領域の損傷、血圧上昇、転倒などのリスクを伴う一方で、機能予後改善、廃用予防、ADL獲得に有効であるという報告があります。
今回のガイドライン2021では24~48時間以内のリハビリ計画立案~開始が推奨されています(推奨度A)。
【Impressions】
今回の紹介した記事のように、情報が日々更新されていることを常々感じるところであります。脳卒中に関する知識おいても「学生の頃は…新人の頃は…」と感じることも少なくないと思います。
様々なガイドラインが更新され続けており、情報を追いきれないことがしばしばありますが、最新の知見が示されている資料ですので、その都度確認をしていきたいですね。
●明日からできること!
・脳卒中ガイドライン2021の内容でリハビリに関する内容について熟読してみる
文責:テツ@永遠の若手理学療法士
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