多発性嚢胞腎(PKD): 培養皿糖分濃度増加で嚢胞膨張
多発性嚢胞腎に関しては日本では指定難病 ガイドラインも存在
降圧療法、飲水励行、蛋白制限・カロリー制限などが推奨され、トルバプタン投与も健保適応とされている。
今回の報告から、糖質制限とSGLT2iがfocusされていくだろう
腎臓オルガノイドを新しい研究環境で培養した結果、世界中で1200万人以上の患者がいる難病、多発性嚢胞腎(PKD)の治療にdownstreamな影響を与える可能性がある。この研究の重要な発見の一つとして糖がPKDの特徴である液体を含んだ嚢胞の形成に関与していること。この研究成果は、『Nature Communications』誌に掲載された。糖分の取り込みは、腎臓が常に行っていて、培養皿の中の糖分濃度を上げると、嚢胞が膨張することを発見。そして、腎臓での糖吸収阻害 薬剤を用いると、この膨張が阻害された。しかし、これは血糖値というよりも、腎臓の細胞がどのように糖を取り込むかに関係している可能性を示唆。多能性幹細胞から培養したオルガノイドでPKDを研究、オルガノイドは腎臓のミニチュアとして取り扱う。オルガノイドは腎臓のミニチュアに似ており、管につながったろ過細胞を含み感染や治療に対して人間の腎臓の反応と同じように反応することができ、実験的模型として検討。
Glucose absorption drives cystogenesis in a human organoid-on-chip model of polycystic kidney disease
Nature Communications (2022).
Sienna R. Li et al,
DOI: 10.1038/s41467-022-35537-2
https://www.nature.com/articles/s41467-022-35537-2
多発性嚢胞腎(PKD)では、腎臓や他の臓器の尿細管から液体を含んだ嚢胞が発生します。ヒト腎臓オルガノイドは、PKDの嚢胞形成を遺伝学的に特異的に再現することができるが、嚢胞形成の基礎となるメカニズムは不明である。本論文では、PKDオンチップマイクロ生理学システムにおいて、オルガノイドに流体せん断応力を与えると、分泌経路ではなく吸収経路でシストが拡張することを示す。また、拡散性の静的条件が流体の流れの一部を代替し、体積と溶質濃度がこの効果の主要なメディエーターであることが示唆された。驚くべきことに、オルガノイドのシストライニング上皮は、培地に向かって外向きに分極しており、分泌機構を否定している。むしろ、嚢胞形成は、外側に向いた上皮の内腔へのグルコース輸送によって駆動されており、これは薬理学的にブロックすることが可能である。PKDマウスでは、グルコースはシストを通して腎間質へ取り込まれ、腎間質は尿細管から剥離し、拡張を許可される。このように、吸収はヒトのオルガノイドにおけるPKDシストの成長を媒介することができ、病気のメカニズムや治療法開発の可能性を示唆している。