お金を稼ぐ人、育児をする人、どちらが偉い?
最近読んだ中で最も考えさせられた本がこれ。
(女性向けのように見えるけど、男性にもぜひ読んでほしくて、父にも読むようにすすめた)
育休中の私は社会から取り残されてしまったような気持ちになっている。
私が長女のオムツを変えて、四六時中授乳をして、絵本を読んで、離乳食を食べさせて、やっと寝てくれたから家事をして、家事が終わらぬうちにまた長女が起きて、お風呂に入れて、そしたら上の子が帰ってきて、ご飯をあげて、上の子をお風呂に入れて、いっしょに遊んで、寝室で絵本を読んで、1時間かけてやっと眠りについてくれて、夜間の授乳に備えて22時半までに寝たいから、残された1時間半をどう使おう?と考えている間に、社会はどんどん動いていく。
私が子どもを追い回している間に多くの同期は昇進し、来年仕事に復帰したら、私の上司になっている。
キャリアを着実に築いている友人の輝きが眩しい。
社会的ポジションがないと、途端に自分は社会において価値のない人間のように思えて、何者でもない自分が寂しくてたまらない。
いやいや、ちょっと待って。
どうして社会的ポジションだけが人間の価値を測る指標のようになってるの?
家族の中の稼ぎ手が1番偉いという風潮になぜなってるの?
そもそも育児や介護などの『ケア』が、お金を稼ぐ仕事よりも劣るものなの?
どうしてケアは社会において評価の対象にならないの?
という疑問を投げかけているのがこの本の内容だ。
家族のケアは社会において評価に値しない?
会社に勤めていると、育休中の期間は職歴としてノーカウントとなる。
ボーナスはもちろんもらえないし、評価は良くて平均にしかならないし、昇進も遅れるし。
すなわち、育児は会社における評価は0なわけで、評価するに値しないものとされている。
むしろ育休後に復帰しても、人員としては1でカウントされるのに、時短やら早退やらでマンパワーはせいぜい0.7。
なんだか肩身は狭いし、年次だけ重ねてできる仕事も伴わないし。
そりゃ会社としては評価しにくい。
だが、育児を通して身に付くものもたくさんある。
仕事をしている以上に、自分を律しなければいけない状況が非常に多いこと。
相手の様子をよく観察して、手を出しすぎず、放置しすぎず、適切なタイミングを見計らって、それとなく次のステップに導いてあげること。
相手のペースをみて、根気強く待つこと。
相手の気持ちや理解度を考慮して、伝え方を工夫すること。
褒めること、感情的にならずに叱ること。
相手をよくみて、気持ちを推測すること。
相手の気持ちを代弁すること。
自分の気持ちをわかりやすく伝えること。
こうして簡単に思いつくものだけ並べてみても、仕事において重要なスキルが日々鍛えられていることがわかる。
特に部下を持つようになったとき、とても重要な意味合いを持つだろう。
私は上記のスキルは子育てする前からそれなりには身につけていると思っていたけれど、いざ子どもを目の前にすると、まだまだ自分は未熟なのだと身に染みて思う。
大人の世界は矛盾が弾き出されて、理路整然としているから、理屈さえ整えていれば負けることは少ない。
でも子どもを相手にするとその当たり前は通じない。
2歳の息子はものすごく気分屋で、言ったことがすぐ変わる、これまで出会った中で最も身勝手な上司のようだとよく思う。
泣き叫ぶ息子に対し、『それは道理が通らないよ…』と何度呟いたことか。
もちろん子どもに道理などないのだが。
『育児は育自』というだけある。
このような育児で身につけたスキルは仕事で確実にいきてくるだろうし、育休取得率の高さや取得者の人数の多さは、会社のイメージ向上、人材確保に役立つし、多様性の向上にも繋がる。
長い目で見れば、会社にとって育児経験者が増えることはプラスになるはずだ。
もちろん仕事に時間を捧げ、直接的に貢献してくれている人は大きく評価すべきだ。
ただ、育児も一種の研修や出向のような状況だと捉え、ノーカウント評価でなくてもいいのかなと思う。
家族のケアと仕事に優劣はない
『仕事で成功することが人生の成功である』という偏見に囚われる必要はないのだ。
でも、子育ては十分意義のあることなのだから、仕事まで貪欲にならなくていいのよ、ということではない。
ケアも仕事も共に重要なのだ。
それは夫婦でそれぞれ役割分担している家庭において、それぞれの地位を尊重するという意味で捉えることもできるし、1人の人間の中においてもそうなのだ。
私は子どもたちの世話を放り出して仕事で成功したいとも思わないけれど、そのために自分自身の社会における活躍を犠牲にしたくもない。
両輪回してやっと自分が自分でいられることに気がつく。
いくつかの車輪のうち、1つが壊れて止まっていたらうまく車が動かないように、私はきっと全ての車輪を動かすことで前に進むことができるのだろう。
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