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100万人に5人。息子の難病がわかっても、私が笑顔でいられた理由。
去年の夏、私たち家族に起きたこと。
小学2年生の長男が「首が痛い」と言い出したのが6月くらい。
「寝違えたかな?」
「ゲームばっかりやってるから、姿勢が悪いんじゃない?」
そんなこと言ってるうちに、深夜に首が痛いと泣きながら起きるようになり、小児科に行ったけれど原因がわからず。
近所の整形外科でレントゲンを撮っても特に問題なし、経過観察で…と言われて痛み止めの塗り薬をもらうも、良くならず。
経過観察2回目のレントゲンもおかしなところはなし。
でもその日の夕方、整形外科の先生から突然の電話があった。
「なにかおかしい気がする。紹介状書くので念のため、CTが撮れる病院に行ってもらえませんか?」
先生がわざわざ電話くださるなんて…と不思議に思いながら大きな病院に連れていき、結果は後日…とのんびり帰ったら、また整形外科の先生から電話が。
「CTの結果が届きました、すぐに病院に来てください」
長男は小学校なので私ひとりで病院に行くと、
・首の3番目の骨の中身が溶けて空洞になっている
・いつ折れてもおかしくないスレスレの状態で首を支えている
・外側はしっかりしているので、レントゲンだけではわからなかった
頭が真っ白になって、何が起きているかわからず。
寝違えたとか姿勢が悪いとか言ってる間にそんなことになっていたなんて。
夏休み初日には大きな病院へ。
いろいろな検査をして、採血して、注射が大嫌いな長男は泣き叫んで胸が痛かった。
どうやら首の骨以外に転移はしていなさそう。
だけど、こんな症状は珍しい。原因不明。
詳しくは首の骨の中の検査をしないとわからない、と、3日後から検査入院することに…。
ひどい状態だったら、頭蓋骨に穴をあけて肩で頭の重さを支える器具をつけることになるかも。
そうしないと、いつ首の骨が折れるかわからない、本当にスレスレです、と。
混乱で現実が受け入れられず。
息子はいわゆるHSC(ひといちばい敏感な子)で、ひとりでお泊りなんてしたことがなかった。
「病院に一人で入院」なんて聞いたらパニックで失神してしまうかも。
私たち親からは胸が痛くて説明できない。
病院の先生から、息子に今の症状、3日後からひとりで入院するという事実を伝えてもらった。
泣いているのをバレないように下を向いている私たち夫婦の横で、冷静に受け止める8歳。
「手術は、眠る薬を吸い込んでするから痛くない、怖くないよ」という先生に、その薬はどんな匂いなのかを質問していた。
(子どもはイチゴやバニラの匂いが選べると、この時初めて知った)
そして、「病院ではパパやママとお風呂に入れないから」と、入院までの3日間、それまで甘えて親にやってもらっていたシャンプーリンスを自分で練習し始めた。
この頃には先生から最悪の場合も聞かされていて。
歩けなくなるかも、寝たきりになるかも、このまま、小学校にはもう行けないかもしれない。
悪性だったら、何が起きるかわからない。
そしてこの時、涙が止まらない私たち夫婦に先生がかけてくださった印象的な言葉。
「調べれば調べるほど、質問もたくさん出てくると思います。
ご不安でしょうから、もちろん質問にはすべて答えますが、聞けば聞くほど不安になるのでおススメはしません」と。
夫はふさぎこんで、長男の前でも泣いてしまうようになった。
部屋に閉じこもって出てこない。
どうやら、ずっとネットでいろいろ検索して、医療関係の知人に連絡を取っているようだった。
夫が泣けば泣くほど、私は泣いちゃいけないと感じた。
4歳、3歳の下の二人の妹も大切だし、長男だって親が泣いてたら絶対に気付く。
長男の状況を姉妹の保育園の先生に伝えたら先生も泣いて。
もともとお世話になった地元の整形外科の先生にお話に行ったら、私の後ろで聞いていた看護師さんが泣いているのが視界に入った。
私は、先生を信じて、病気についてはいっさい調べないことを決めた。
私の代わりに、長男を想って泣いてくれる人がたくさんいる。
だったら、私は笑っておこう。
病院では、先生が他の病院にもデータを送り、連携しながら様々な仮説を立ててくれていた。
だから、結果が出るまでは知識のない私がいろいろ考える必要はない。
できるだけ笑顔で、子どもたちと楽しく。
頭の中ではずっと、将来、大人になった長男に
「あなたが小学校2年生の夏休み、たいへんだったんだよ、
パパがずっと泣いてたよ」とみんなで笑っているところだけを考えた。
私が病気についてまったく調べず、子どもたちとニコニコしているので夫は「自分が頑張るしかない」とますます情報を集め、悲しい事例をたくさん知って、ますます泣くようになってしまった。
私からしたら、「夫が泣くから、私は泣かない。」
夫からしたら、「妻があまりにノンキだから、自分が調べるしかない。」
そんな感じだったと思う。
夫には悪いことをしたと思うけれど…
夫婦で泣くのだけは、何か違うと思った。
息子が入院した2週間。
コロナで長い時間いられないので、夫婦で午前と午後に分けて必ず病院に行った。
最初の2日間は夜にひとりで泣いていたと、看護師さんがこっそり教えてくれた。
姉妹は「お兄ちゃん元気かなぁ」と言いながらもいつも通りに見えたけど、とっくにトイトレが済んだ4歳の長女が大量におもらしするようになった。
ちょうどトイトレ中の2歳次女と一緒に、保育園から大量の汚れたパンツとズボンを持ち帰るので二人分で毎日の洗濯物が大変なことに。
長女は長女で、異変を感じてストレスだったのだろう。
何もしてあげられず、ただただ大量のパンツとズボンを洗濯した。
長男の手術では、首の骨に触るので大きな血管や神経に触れる、その後遺症のリスクも聞かされて。
手術当日、手術室に向かう息子を見たら泣いてしまうから、見送ることはできないと夫は神社にお参りしてから遅れてやってきた。
手術は無事に成功、結果がわかるまでも長かったけれど。
結果は「ランゲルハンス細胞組織球症」という小児がんの単一臓器型。
なんと、投薬でおさまり生存率は100%、命の別状はないという、子ども100万人に5人が発症するとても珍しい症例だった。
それから退院、この症例に詳しい病院に転院。
毎週通い、点滴を打った。
転院先では先生に
「事前のレントゲンを見て、もう歩けない状態で来ると思っていた」と言われた長男。
首を守るギプスはずっとつけていたけれど、彼は私たちの想像をはるかに超えて奇跡的な状態だったらしい。
そしてこの病院でも
「この病気に関するブログやネットはあまり見ないほうがいいです、どんどんつらくなるので」
とお話された。
今は情報があふれていて、調べれば調べるほど、私たちもいろいろな情報を手に入れることができる。
だけど、先生を信じて、病気についてはいっさい調べない。
できるだけ笑顔で、子どもたちと楽しく過ごす。
頭の中でずっと、将来、大人になった長男に
「あなたが小学校2年生の夏休み、たいへんだったんだよ、
パパがずっと泣いてたよ」とみんなで笑っているところだけを考える。
私はこう決めて本当に良かった。
彼はそこから奇跡的な復活を見せ、夏休み明けには何事もなかったように首にギプスをはめて小学校へ登校。
空洞になった骨の内部は薬のおかげでしっかりと詰まってきて、なんと10月の運動会には普通に参加することができた。
大きな病院にうつってからの検査、入院、手術、退院まですべて夏休み中に終わったので、この夏休みを知らない学校の子どもたちからは
「急に首に変なギプス付けてきて、体育見学してるぞ???」
と不思議がられたくらい。
私たち家族は、このまま夏休みが終わっても、もしかしたら一生学校にはもう通えないかもしれない、とも思っていたのに。
本当に不思議。
でも、この夏の経験で感じたこと。
情報は世の中にあふれているけれど、信じる未来だけを見据えて余計なノイズをシャットダウンすることも必要なこと。
本当に信じる未来があれば、奇跡は起こるかもしれないこと。
そして、夫へ。
私の分までたくさん泣いてくれてありがとう。
この文章、夫は見ないだろうし本人には言わないけど。笑。
そして我が家は今日も、子ども3人で大騒ぎ。
そんな当たり前の日常が、どれだけ愛おしいか。
「あなたが小学校2年生の夏休み、たいへんだったんだよ、
パパがずっと泣いてたよ」
そうやって笑うのは、いつのことかしら。
今から楽しみです。
本当に、ありがとう。
この経験で彼は本当に成長した。
薬の副作用で満腹感がなくなり、ものすごい食欲。
もともとほっそりしていた体型が、あっという間にふっくらして丸顔に。
でも薬が終わったら自分でお菓子を減らして、体型もすぐ戻った。
この一連のできごとが彼の生きる上での自信になっている。
この当たり前の夏に感謝して、今日も1日が過ぎていく。
神様、本当にありがとうございます。
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