「投資単位の引下げに関する考え方および方針等について」という適時開示情報について
こんにちは、プロ証券家のCNMです。
今回は題目の通り、「投資単位の引下げに関する考え方および方針等について」という開示について扱います。
概要
前段
「投資単位の引下げに関する考え方および方針等について」あるいはこれと同様の適時開示情報は、直近の1ヶ月間だけでも40件以上が開示されています。
一例として、半導体の有名企業であるアドバンテストが、本日6/26の15時に以下の開示を出しています。
投資単位について
上場市場において有価証券は通常、単元株ごとに取引されます。
単元株というのは、株式売買取引時の最低単位です。日本の取引所では、上場企業は1単元100株ですので、株価が10,000円の企業であれば、10,000円×100株=1,000,000円が最低売買額となります。
投資単位というのは、ここでいう最低売買額を指します。
したがって、投資単位の引き下げとは、1単元を売買するときに最低限必要な金額を下げるということです。
目的
投資単位の引下げによる目的は、主に2つあります。
株式の流動性を高める
株価の安定を図る
投資単位が引下げられることで、大きな恩恵を受けるのは個人投資家です。
大規模な資産運用を行う機関投資家や外国投資家と異なり、日本の個人投資家は配当や株主優待目当てに少額を動かしているケースが少なくありません。
少額を運用する多くの個人投資家にとって、投資単位が50万円以上というのはハードルが高いことが容易に想像がつきますので、これら個人投資家の投資参入機会を増やすことによって、株式の流動性向上と株価安定の恩恵を一挙に得ようというのが、大きな目的となります。
方法
投資単位の引下げといっても、実施方法は「株式分割」に限定されます。
株式分割とは、文字通り株式を分割することで、例えば1株を2分割する場合、100株が200株になります。
ただし、これは株数の話であり、評価額(株式の実質的な価値)への影響はありません。すなわち、1株あたり10,000円であれば、2分割で1株あたり5,000円となりますので、100株が200株になっても、評価額は同じままということになります。
状況
本項では、日本証券所グループHPの「投資単位の引下げ / 株式分割の仕組み・効果」というページから各情報を引用します。
株価の相関はよく分かりませんが、投資単位が50万円以上の会社が、近年かなり少なくなっていることがうかがえます。
投資単位の引下げの状況
日本証券所グループによると、投資単位が50万円以上の会社(高投資単位会社)の割合は、近年10%を下回る水準で推移しており、2024年3月末時点では、93.3%の会社が50万円未満となっています。
市場区分別の状況
投資単位の分布状況
規則
投資単位に関する上場規則は主に2つあります。
以下、それぞれ見ていきましょう。
望ましい投資単位の水準への移行及び維持に係る努力等
あくまで努力義務の範囲に収まっていますが、ここでは上場内国会社(つまり日本の上場企業)は、投資単位が50万円未満となるようにしてください、と規定されています。
投資単位の引下げに関する開示
さて、本題の「投資単位の引下げに関する開示」ですが、これは有価証券上場規程に定められており、これに則って適時開示情報が出されます。
投資単位が50万円以上の会社は、事業年度経過後3ヶ月以内に、投資単位の引下げに関する考え方及び方針等を開示しなければなりません。
事業年度というのは決算期間のことですので、例えば3月決算企業であれば、6月末までに投資単位引下げに関する開示をする義務があるということです。
最後に
先のグラフに見た通り、2024年3月末時点で、投資単位が50万円以上の上場企業は257社存在しています。
上場企業の約7割が3月決算ですので、6月末を迎える今週末には、かなりの量の「投資単位の引下げに関する考え方及び方針等について」という適時開示情報が出てくるものと予想されます。
投資単位が50万以上の企業というと、大企業が多数を占めますので、適時開示情報を見て、「大企業で同じようなものがたくさん出てきた!」「何か大きな動きがあるのかも?」と慌てず、単にそのような義務があるのだと落ち着いて対応しましょう。
それでは、良い証券ライフを。
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