考えて動かす学校(プロジェクトの学校)で学んだこと
昨年の冬、遠野のローカルプロデューサー 富川岳さんが講師を担う「考えて動かす学校」を受講しました。
2019年11月から2020年2月までに全5回。受講してほぼ1年。この講座を受けて実際に活動に反映させていることや、変わったことなど、いろいろ思うことがあるのでnoteに記します。
考えて動かす学校
そもそも、考えて動かす学校は何を学ぶのか?
岳さんの言葉をお借りすると、課題に対する「考え方」と、プロジェクトの「動かし方」を学ぶ学校です。詳細は岳さんのnote、そしてこのnoteを読み進めていただくとわかると思います。
花巻市の地域おこし協力隊に任用されてから間もなく受講したため、今思えば早い段階で、それまで学生だった頃には全く未知の世界だったプロデュースの手法について学べたことは幸運でした。
考えて動かす学校では、
1、基礎プランニング論
2、プロジェクト設計論
3、伝わる企画書論
4、プロジェクトマネージメント論
5、プレゼン論
の5つのフレームを学びます。
今回は、受講後に参考にしていることや実際にプロジェクトで活用していることなどを、受講回毎に自分の活動を通してお伝えします。
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1、 基礎プランニング論
第一回目は「基礎プランニング論」ということで、プロジェクト設計の基本を学びます。その中でも印象に残り、実際に活用しているのが、プロジェクト共有の手法とSNSの動かし方です。
【プロジェクトの共有のために】
どうしても1人だとプロジェクトを行うことが難しく、さまざまなプロジェクトを技術者(ライターやカメラマン、デザイナーなど)や仲間と共同で行うことが必要です(協力隊に成りたての頃は、一人でもプロジェクトを動かせると思ってました…)。
プロジェクトでは必ずと言っていいほど、伝えたい・知ってほしい対象「ターゲット」を決めます。そのターゲットは、プロジェクトチーム内や委託先への共有が必要になります。
しかし、ターゲットが自分の中では大まかにイメージできていても、イメージを他人に伝えることは容易ではありません。言葉だけでは限界があります。
そこで、岳さんがよく使うのは本屋。大きな本屋(岩手だと盛岡のTSUTAYAなど)で自分がイメージするものに近い雑誌を探し、その雑誌のイメージを仲間と共有することでイメージをつかみやすくします。
この雑誌を使ったイメージの共有方法。
実際に自分がプロジェクトを考える際には、一番イメージに近い雑誌を何点か選び、それを企画書に盛り込んでいます。
【SNSは熱量を示す場】
プロジェクトを周知させる有効な手段として、SNSがありますが、正直SNSは見るだけ。発信は億劫に感じていました。
岳さんはSNSで熱量を常に示していて、そのことでそれに共感する人が集まっています。実際に岳さんの普段の投稿を見てみると、SNS(特にFacebook)では岳さんの思いがストレートに綴られています。
そこで、自分がなぜSNSを億劫に感じていたかを考えると、「協力隊として」こうつぶやかなきゃいけない、「無理に明るく」発信しなきゃいけない、など、自分の本心を無意識に出さずに発信していたからだと判明。
それに気づいてからは、協力隊としてではなく、本当に自分の心が動いて、伝えたいことを発信するようになりました。発信のハードルがかなり低くなり、更新が滞ることがなくなりました。
SNSでプロジェクトの進捗や気持ちを伝えることで、メリハリがつき、実際に形になりやすい気がします。今後発表予定、花巻市の窯元「台焼」の新作 “najimi” は考案当初から発信していて、それを楽しみにしてくれる人がいたからこそ、徐々に徐々に形になっていきました(現在はロゴやパッケージをデザイナーと制作中)。
▲今後こういうことをやりたい、と伝えると、共感してくれる人や応援してくれる人が反応してくれる。
▲台焼にて、“najimi” のロゴとパッケージデザインのミーティング。
【自分が楽しむ!】
そして、何よりも本人が楽しむこと。それが伝われば、プロジェクトも成功につながるという考え方は、今も重要視していて、ものづくり/工芸が好きなことを気持ちよく伝えるようにしています。
2、 プロジェクト設計論
“プロジェクトを行う“といっても、
自分がやりたいこと・できること(スキル)・求められていること(ニーズ)が違うのが普通です。
第二回目は「プロジェクト設計論」。この3つがベースとなったプロジェクトの特徴や掛け合わせ方、事業分析、資金調達について学びます。
【やりたいこと、できること、求められていること】
3つがベースとなったプロジェクトの特徴を見ながら、自分の特性は「やりたいことベースで考えることが多い」だと再確認。
そこで、自分がやりたいことをスキル(工芸の研究やそれを話すこと)、ニーズ(今まで工芸のニーズを深く考えたことがなかった)と組み合わせてプロジェクトを考えることが必要だと判断しました。
現在Youtubeでは、(名前を伏せていますが)モノについて発信を開始。とにかく続けることが目標です(スキル)。また、商品開発の際には名前や形など、実際に周りの方々に意見をもらいながら、一番誰もが欲しい!いい!と思ったものをものづくりに生かしています(ニーズ)。
▲講義の時間に書いたもの。今と比べたらやりたいことが変わってたり、自分の能力を見直したことによるできることの変更、活動やヒアリングによってニーズの捉え方が変わるなど、変化も大きい。
▲実際に名称を決める時の候補。これをいろんな人に見てもらって、どれが一番作品のイメージと合っているか判断してもらった。
【事業分析】
自分が行う工芸・ものづくりのプロジェクトは、PPM分析や競争地位の4類型ではどのような位置になるのか、考えるきっかけになりました。
これらは有名な分類方法ですが、きっかけがないと意外と考えることがなく、そういう意味では改めて考えるきっかけになりました。
【資金調達】
行政予算、クラウドファンディング、助成金、融資、など予算の取り方はさまざま。今回の講座で各予算の特徴を知れたことで、今後のプロジェクトに生かせます。
プロジェクトでは資金調達がハードルになります(少なくとも自分は)。
それでも、資金集めは「ファン集め」や「自分の事業の整理」にもなると考えると、やる気が出てきます。
今後、花巻の工芸でとある商品を開発予定なのですが、その資金調達はクラウドファンディングで行う予定です。
▲岳さんが実際に行ったクラウドファンディング
3、 伝わる企画書論
第三回目「伝わる企画書論」。
岳さんの企画書を実際に見ながら、企画書の書き方をみっちり学びます。
企画提案する相手方によって、内容やページの割り振りを変えることが重要だと学び、今後独りよがりな企画書ではなく、見る人の立場になって考えようと思えました。(講座では伝える人ごとの企画書の書き方について学べます!)
岳さんが普段使っている細かいテクニックも、こっそり活用しています。
【岳さんの企画書】
自分が気になるのは、ものづくりに関するプロジェクト。
遠野で昔から作られる藁馬「馬っこ」を富川屋が「ノ馬」としてブランディング。その企画書を実際に見せていただきました。
そこでは、作り手の確保や、「遠野の馬」全体を考えたプロデュースなど、モノづくりだけにこだわらないプロジェクトになっていて(視野が広い!)、とても参考になりました。
▲ノ馬の企画書の一部
4、 プロジェクトマネージメント論
第四回目は「プロジェクトマネージメント論」。スケジュール管理、チームづくり、ファン・応援者のつくり方などを学びます。
【スケジュール管理】
岳さんが普段作っている実際のスケジュールの目安を示してくれたことで、今後のプロジェクトのスケジュールづくりの参考にできました。
▲企画中の商品開発(仮)のスケジュール。岳さんのスケジュールをかなり参考にして作りました。
特にプロジェクトスケジュールの中に、関係者への挨拶や事前の情報発信(ここが意外と重要であるのにも拘らずプロジェクトが進むと手が回らなかったり、大変だからおろそかにしたりする)も含めていて、抜かりない計画に脱帽。ここもかなり参考にしています。
【チームづくり】
チームづくりでは、プロジェクトに関わる人の可視化が重要。
自分がプロデューサーとしてプロジェクトを動かすとしたら、ほかの担当を誰にするのか、自分でどこまでやるのかしっかり決めておくことが大事です。
自分の特徴として、良くも悪くも今まで何事も一人で解決してきたことが多く、どうしてもチームで物事を動かすことに苦手意識がありました。
今も苦手意識はありますが、いろんな仲間と一緒にプロジェクトを動かせるようにするのが今後の目標です。
特に、「発信する内容がフィルターをかける」というのは衝撃を受けました。基礎プランニング論でもお伝えしましたが、自分の思うままに、自分の思いが伝わるように発信するようになると、反応も良く、そこに共感してくれる人が声をかけてくれることも増えました。
【ファン・応援者の作り方】
ファンの作り方では、「助けてもらい、仲間になってもらう」というのが印象的でした。工芸の体験をしていただいた方は、工芸やものづくりに興味が深い方。その方たちと一緒に何かできればと現在思案中です。
▲和傘の制作体験の様子。工芸に興味が深い方々と一緒に何かやりたい。
5、 プレゼン論
第五回目では、「プレゼンの手法」について、岳さんのプレゼンを参考にしながら学びます。
プレゼンは、説得するのではなく、納得してもらうこと。
納得してもらうためには何が必要なのか。いくつかコツを教えてもらったのですが、ここでは印象に残ったことを2つ。
①小さくてもよいので実績をつくることで、相手の納得度が上がる。
→自分が執筆した記事や開発した商品を示すことで、実績を伝える。
▲台焼の職人と開発した新作「najimi」
②本気度を伝える。
→自分の活動の様子や、工芸が好きな思いが実際に形になっていることを示し、本気度を伝える。
以上の2つは実際に盛り込み、プレゼンの際に活用しています。
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各回に分けて、実際に参考にしていることを記しました。
協力隊として活動し始めて1,2か月の私が、第一線で「動かし」ている岳さんから、プロジェクトについて学べたこと。全くわからないという大きな不安要素を感じずに協力隊の活動をスタートできたことは、かなりありがたかったです。
そして、さまざまな手法を学べたことはもちろん自分の身になっているのですが、何といっても自分が好きなとこ・得意なことを生かして何かを動かしたい、と熱意を持った仲間が見つかったことが大きいです。
岳さんから学んだ手法は、協力隊として着々と進んでいる中、困ったときの道しるべ、という感覚。
▲各回のまとめ「ご本尊シート」は、プロジェクトを進行中に確認し、見返すことで適宜修正を行っています。
協力隊として2019年10月に活動を開始して、現在2年目。
1年活動してようやく土台ができてきたという感じです。
これからが自分の力を発揮するとき。「自分が1年活動した経験」に「岳さんの手法」を取り入れ、仲間とともにプロジェクトを動かしていきます。
いただいたサポートは今後の活動に活用致します。