マガジンのカバー画像

その株いくらで買いますか?

28
ゴールドマン・サックス勤務だった頃、世界で上位を争う収益を叩き出していた株式運用部でグローバルヘッドに言われたこと。 「安く買って高く売れ」 よい会社でも、きちんと安く買えて…
運営しているクリエイター

2021年2月の記事一覧

ゲームストップ株騒動の基礎知識(6)  結局、株式市場の民主化とはなにか?

RobinhoodのHPには、会社のミッションについて以下のように書いてあります。和訳すると、すべての人にとって金融を民主化すること。 今回のGME株騒動に関連し、「株式市場の民主化」という言葉がほうぼうで使われました。1月末に聞いていたClubhouseのルームでも、とある大手企業の社長が「ところでゲームストップってなにが起きてるの?」と切り出して、著名VCのかたが「結局これは民主化の動きなので、それはいいことだと思いますよ」とまとめておられました。シリーズ最終稿では、そ

ゲームストップ株騒動の基礎知識(5)  証券会社が取引を止めるとき

wsbに集い、みなでGME株を買うことに賛同したのは実に多種多様な人たちだったのだろうと思われますが、今回の一連の動きについてはその背景に、08-09年の金融危機に端を発する貧富の差の拡大があると言われています。 上記はwsb上でバズった投稿ですが、今回のGME株押し上げは、金融危機時に職や住まいを失って2度と立ち直ることのなかった父親のための弔い合戦だというのです。 格差が社会問題化したのは最近のことではありませんが、アメリカ社会はその貧富の差が拡大するあまり、緊急時に

ゲームストップ株騒動の基礎知識(4)  空売りを悪とする見方

ゲームストップ株について語るとき、「空売りは悪だ」という意見がテックやVC業界からよく発されます。Elon Muskの空売り嫌いは有名で、一時期空売りに晒され株価が低迷したテスラの苦い経験がその裏付けになっていることは間違いありません。量産に成功する前の時期、今の株価には倒産確率が何%で折り込まれているという見方が日常的になされていました。 YouTubeに登場するような著名VCの面々にも空売りを辛辣に批判する人がいます。自分たちは成長資金を供給し、新たな事業を生み出してい

ゲームストップ株騒動の基礎知識(3)    13Fに示されたショートポジション

さて、ゲームストップ騒動の発端は2019年に遡ります。以下、簡単なタイムライン。(Chamath Palihapitiyaが人気YouTube番組で語った内容に終値とツイートを追記。ファクトチェックしていませんが、こんな感じで展開していったんだなぁということが分かることを目的に) ・2019年6月 DFVがレディットの掲示板wsbに、2021年1月限のコールオプションを$50k分相当購入したことを書き込み ・2020年8月 Michael Burry が3%持分を取得。GM

ゲームストップ株騒動の基礎知識(2)    347.51ドルへの軌跡

さて、まず抑えるべきはゲームストップという会社のバリュエーションです。過去2週間のうちに数多の報道がされ、動画が流れ、Clubhouseもありましたが、個人的にはその半数も追えていないように思います。ただ、株価の意味について掘り下げたものはほとんどなかったんじゃないでしょうか。 舞台劇として理解するだけでも十分示唆に富む事件ではありますが、一般レベルを少し超え、ものさしを携えて全体像を把握するためには120倍に高騰したからといってバカにせず、まずは愚直にみてみましょう。

ゲームストップ株騒動の基礎知識(1)  主な登場人物

日本でClubhouseが流行りだした1月後半、NY市場ではゲームストップという会社の株価急騰に市場関係者の目が釘付けになりました。年初に11億ドル(=1200億円)しかなかった時価総額が1月27日終値では227億ドル(=2.4兆円)に。こんな現象は20年以上相場をみている私も初めてのことです。 この会社、年初どころか昨年4月につけた底値の時価総額は1.8億ドル、つまり200億円弱しかなかったので、9ヶ月で120倍以上に上がっています。 日経報道などを読まれた方も多いと思