肩甲上腕関節制限・肩関節周囲炎に関連する「腱板疎部」の重要性とは 理学療法士
今回は腱板疎部の機能や関連する問題点についてまとめたいと思います。
腱板疎部とは棘上筋と肩甲下筋の間に存在し、その部位には腱板がないため、関節包がむき出しになっており、その間隙には烏口上腕靭帯が埋めていると言われています。
また、肩峰下滑液包・三角筋滑液包と関節腔との間にも存在します。
構成は滑液包側滑膜-烏口上腕靭帯-関節包-関節腔側滑膜であり、深層部には上腕二頭筋長頭腱と上関節上腕靭帯が存在すると言われています。
腱板疎部は非常に柔軟性に富む組織であり、機能的には肩甲上腕関節内旋運動に伴い拡大し表面積を広げて、外旋運動に伴い縮小し直線状となるスリーブのような構造をとっています。
また、この部分にはモヤモヤ血管という異常で未熟な毛細血管が出現しやすく、炎症と線維化が起こりやすい場所と言われています。
その腱板疎部を構成している烏口上腕靭帯は肩甲下筋から棘下筋まで腱板を包み込みような構造をしており、腱板の運動に併せた滑走性も必要であることが考えられえる。
また、烏口上腕靭帯が瘢痕化することで肩甲上腕関節内旋・外旋運動ともに制限が起こるとの報告がある。
これらのことを考慮すると炎症期では、できるだけ炎症の慢性化が起こらないよう関節内注射等の処置や脊柱や肩甲胸郭関節の可動域拡大などをすることで肩甲上腕関節内の運動量を相対的に低下させるような動きの確保が必要になると思います。
この時期の腱板疎部へのメカニカルストレス増加はもやもや血管の増加に繋がるため、動作指導や生活指導も重要になります。
また、炎症期を脱した後は線維化を改善するために組織の動きを作っていくことが必要となります。
この時に、上腕骨頭の外旋運動に伴う組織滑走だけではなく、内旋運動の伴う短縮する動きの改善も必要となります。
評価としては、まずは肩甲骨面上30°程度で関節窩に対して骨頭の滑りと転がり運動が起こっているか他動的に緊張が抜けたポジションで診ることが重要であると思います。
さらに腱板筋や滑液包との滑走も必要となるため、腱板疎部の把持しながら腱板筋の自動運動に伴う収縮を行うことで改善を図ることが必要となります。
腱板疎部のトラブルは肩関節可動域に大きく関与するため、丁寧な評価と治療が必要となると思います。
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