サウナで多くの人が死亡してるの?
気になる記事を読みました。タイトルは以下です。
「サウナで年間1万7000人が死亡している」は誤り【ファクトチェック】
2023年8月の記事です。内容は、サウナで年間1万7千人が死亡しているという記事が出回ったが、それは間違いで、一般的な入浴の際に起こる急死と混同されてしまったようだというものです。
日本ファクトチェックセンター、良い仕事してます。なかの人にサウナ好きがいるのでしょうか。ファクトチェックセンターの記事が正しいと思います。サウナでは、一般的な入浴中に起こるような急死は、あまり起こらないと考えます。
詳しい内容は上のリンクの記事を見て頂きたいと思います。ここではファクトチェックでも取り上げられている、「1万7千人」という数字の基となった研究について紹介したいと思います。
日本健康長寿医療センター
「2011年一年間に約17000人が入浴中に死亡」
https://www.tmghig.jp/research/release/cms_upload/20121221_takahashi.pdf
上のリンクから記事へ飛べます。この研究の内容は、一般的な、特に家庭内での入浴に関連した急死のことで、サウナという文字は一つもありません。いかに言っても、家にサウナを置いている人はごく僅かでしょう。私もmy バレルサウナを持てたらなと思うことはありますが、ほとんど夢みたいな話です。
こういうのが30万円で買えるなんて、素敵です。でも借家住まいの身分ですので、買えません。ちなみにこのバレルサウナは、Sa!una という会社のものです。
普通に暮らしていて、バレルサウナが置いてある家は見たことがないので、そこで急死する案件が統計に上がってくることはないでしょう。
ちなみに、サウナ案件の事故死の例としては、沼に併設されたサウナ施設で、冷水浴で泳いでいるときに亡くなってしまうという事故が発生しています。この件は、サウナによる循環動態の変化が原因ではなく、泳いでいて溺れてしまったようです。なんとも痛ましい事故で、ご冥福をお祈りします。
東京都健康長寿医療センターの報告に戻ります。概要としては、入浴中の急死の例として多いのは、80歳以上の高齢者が過半数を占めており、大半が冬場に発生しているということです。
よく聞く言葉としては、ヒートショックというものがあります。脱衣場と浴室の温度差が大きすぎることにより、心臓発作や不整脈を起こして突然死してしまうようなイメージです。
一方、お湯に浸かったあとで溺れてしまう例も少なくありません。入浴中に溺れてなくなってしまうケースです。以前、入浴中の急死について調べたことがあります。入浴中の溺死は、浴室と脱衣場の温度差によるヒートショックに加えて、他のメカニズムが原因になることもあります。
そのメカニズムは、お湯につかって副交感神経(リラックス状態)が優位になっている状態から、さあ出ようと急に立ち上がったときに、いわゆる立ち眩みを起こして、意識を失いそのままお湯に浸かって溺れてしまうというものです。
副交感神経が優位になっている状態では、一般的に血圧や脈拍が低い状態ですが、肩までお湯に浸かっていると、全身に水圧がかかり、それほど血圧が下がらないようです。そこから急に立ち上がってしまうと、血圧が一気に下がり、気を失ってしまうことがあるというメカニズムです。
とくに、入浴中の急死が多いとされる後期高齢者では、自律神経系の調節機能も脆弱なところがあり、すとんと血圧が下がってしまうケースがあると考えられます。
水圧の血圧への影響といっても、筋肉や脂肪をたんまり備えた中高年への影響はあまりないと思います。問題になってくるのは、筋肉も脂肪も削げ落ちて、全員に血管が浮き出ちゃってるような高齢者に対する影響が問題になるということです。
そんなところから、健康的な入浴方法として「半身浴」が進められています。半身浴はお湯を腰くらいまでにして、主に下半身を中心に浸かる方法ですが、気を失っても溺れるリスクが低い訳です。また、水圧の血圧への影響も少ないです。しかしながら、日本の入浴は首まで湯に浸かる文化なので、なかなか浸透しないと思います。
半身浴では物足りない気がするのと、上半身が寒く感じてしまう人も少なくないと思います。上半身が寒く感じると交感神経が刺激されるので、立ちくらみは起こりにくいかもしれませんが、そのぶんリラックス感が低くなりますよね。
実は、私の実家が独居老人の多い大団地群のなかにありまして、この入浴中の急死がたびたび発生しているらしいです。実家の母親から、「どこどこの誰さんが風呂入っているときに溺れて亡くなったみたいだ」といったことを聞くことがあります。なので、入浴中の急死について調べたことがあったのです。
ちなみに、サウナ・ラウンド中の自律神経(交感神経と副交感神経のバランス)の動きは、入浴中の動きとは逆になると思います。熱いサウナ室では交感神経が優位となり、冷水浴では中立、外気浴で副交感神経が優位になります。副交感神経優位の状態(血圧↓ 脈↓)では、通常はととのい椅子に座ってるか横になってるかなので、普通のサウナ施設で溺れることはなさそうです。
ここからは哲学的な論考になります。後期高齢者の入浴中の急死については、本人サイドとして考えると、必ずしも悪い事ではないかもしれません。後期高齢者が、気持ちの良い入浴中に意識を失い、そのまま亡くなる訳で、痛みや苦しみをほとんど感じないで逝くことになります。(ただし不審死になり、警察が介入するので家族は大変ですが)
もし中途半端な状態で発見されてしまうと、病院の救急センターに運ばれ、気管にチューブを入れられて人工呼吸、血圧を上げる薬をばんばん使われて全身がむくみ、救命されたとしても半身不随になり要介護状態になってしまいます。
どちらが良いとか悪いとかいう問題ではありませんが、自分事として考えたら、理想の死に方かなと思ったりもします。あくまで思考実験みたいなもので、もし自分の家族が風呂場で倒れていたら、すぐに救急車を呼び、BLS(一次救命処置)を始めるだろうということは申し添えておきます。
現段階のまとめとしては、入浴中の急死の多くは一般家庭のお風呂場で、冬場に、80歳以上の後期高齢者に多く起こりやすいということですね。普段サ活にいそしむ諸氏は、とくに気にせずサ活にいそしめばよいと思います。
ただ一方で、サウナに入ると血液がドロドロになるなどの不健康イメージも根強くあるようなので、サウナ中の救急事例がどれくらいあるのか、引き続き調べてみたいと思います。
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