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【カネボウ】キモエモな天野喜孝コラボ化粧品を発売したワケ
「怖いもの見たさ」という本能がなぜ人間に備わっているのか?その理由には諸説ありますが、個人的に納得感が高いのは、人間は未知の物を恐れる生き物であり、その未知の正体を知ることで安心感や心理的備えを得ようとする行為であるという説です。キッズたちが「怖い怖い」と言いながらホラー系動画を見るのをやめられないのも、本能なのでしかたがないのです。
最近、ワケがわからなすぎて、不眠症になってしまいそうだった限定プロダクト施策がありまして。それがこのカネボウのミラコレ(ミラノコレクション フェースアップパウダー2024)の天野喜孝コラボです。
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化粧品に天野喜孝…しかもミラコレだと…?といった具合に、その謎すぎる意図が気になって夜もまともに寝つけませんでした。このままでは不眠症になってしまう寸前でした。最終的には戦略が解読できてよかったです(結果は後述します)。
この天野喜孝氏、40代おじさんのわたくしにはブッ刺さるイラストレーターでございます。ほかの40代あたりの男性たちも多くがそれに共感することでしょう。一方で、女性からの認知度ってどうなのよ?と考えると…う~ん。ミラコレのコラボ相手としては微妙じゃないか?となってしまうのです。
ちなみに、天野氏は人気ゲームシリーズ「ファイナルファンタジー(以下FF)」のファミコン~スーファミ時代(1987年~1994年に発売されたシリーズ作品1~6に相当)のキャラデザやパッケージデザインを手掛けており、当時のFFといえばこのちょっぴりキモコワだけれど幻想的な天野氏のイラストレーションが連想させられます。
今っぽい言葉で表現するならばキモエモい(キモコワいけどどこかエモい)的なワーディングになりますかね。
※FF7以降のイラストも含まれてますがご容赦を↓
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彼の描くキャラクター達は、どれも顔が真っ白で、目も鋭く座ってて、なんだか幽霊っぽい雰囲気があるのです。正義のヒーローたちなのになぜか悪者にも見えなくもない。でも、そのキモコワさに、つい目が奪われるのです。
つまり天野氏は、人間の本能である「怖いもの見たさ」心理をうまく作品に取り込んだアーティストであると言えます。
狙いは…やっぱりオジさんたちなの?
その後のFF7以降は、キャラデザやキービジュアルは彼の作品ではなくなりました。イメージイラストやロゴという従来よりは要素の薄まった形でFFには関わりつづけてはいるようですが、現在のFFシリーズで天野氏の面影はずいぶん薄い印象です。
また、FFシリーズ以外に彼の代名詞といえるようなビッグコンテンツもないようですので、若者やほとんどの女性層(ゲーマー女子除く)にはあまり馴染みがないアーティストといえます。つまり、彼のイラストレーションを使うということはすなわち「オジさんを狙う」ということになるはずなのです。
いや、もしかしたら、オジさんの私が知らないだけで、女性たちの支持を得うるなにかあるのかもしれない。とも考え、まわりの女性にこのミラコレのアートを見せながら聞いてみたのですが、20代は全員「知らないし、ちょっと怖い」と全滅(そりゃそうよね…)。
30代後半あたりから「FFの人…かも?」と自信なさげな回答がちょいちょい出てくるものの、それも少数派。魅力についても「このイラストだから買いたくなるかというと…」という微妙な回答ばかり。
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やっぱり天野氏のアートは、女性層に対してのアプローチには(一部のFF好きゲーマーでもない限り)あまり向かないよね、とあらためて思わされた次第です。
…となると、やっぱり男性なのか?しかもFF6までの当時を知るオジさんたちが狙われているのか?という分析の路線がどうしても現実的になってきてしまうのです。
たしかに、フェイスパウダー(いわゆるおしろい)はテカリ防止に役立つので、オジさんたちのアブラぎったお顔にはちょうどいいです。実際に、メンズ用フェイスパウダー需要は着実に伸びている領域ですから、狙いどころの1つとしてはアリではあるのですが…。
狙いは、ソッチじゃなくてアッチ?
ただ、いかんせん腑に落ちないのが、今回この動きをしているのが「おしろい市場15年連続売上No.1」をうたうミラコレであるところなのです。カテゴリトップのブランドが、こんな大勝負に出る必要性がマーケ戦略上あるのかって話です。
普通ならないんですよねぇ、むしろカテゴリトップブランドは大きなパイを狙うべきというのがセオリーなので。40代のオジさんにしろ、ゲーマー女子にしろ、ミラコレが狙うにしてはパイが小さすぎるので、そこまで挑戦しなくても、もう少しこのブランドに適したコラボ相手はいくらでもいるじゃないか、と思ってしますのです。
…ほんと意味わからない。何を考えてるのよカネボウさん(中身は花王さん)は…。と、いろいろ考えを巡らしているうちに、ある一つの仮説に行き着くのです。これは...
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