インガ [scene004_16]
染井義昭。
彼と初めて会ったのは、そのときだった。
第一印象は、正直なところ———すまない、君の親父さんを悪く言うつもりは無いんだが———「なんだ、このくたびれた男は」だった。
小柄な身に羽織った白衣には皺が寄っていて、頬から顎にかけて数週間は放置していただろう無精髭が生えている。こけた頬と目の下に出来た隈は、どれほど多忙なのか知らんが、まともに睡眠を摂れていないだろうことを物語っている。
疲労感を身に纏った、いつまでも現役を引退させてもらえない年代物の中古車を思わせる風