創作におけるアドバイスとの接し方
自分の作品は面白くないかもしれない。
創作をしていると、多くの人が陥る落とし穴です。
そこから逃れる方法は、そんなに多くありません。代表的な道は3つほどです。
・投稿サイトに投稿して見てもらう
・創作コミュニティで見てもらう
・コンテストに出して見てもらう
などでしょうか。
共通点は他人に見てもらうこと。自己評価ができないのなら、自分以外の視点で作品を評価してもらうしかないからです。
しかし、この工程でつまずく人が、思った以上にたくさんいます。
界隈に生息している人たちの意見は一枚岩ではなく、優先順位も、壁の撃ち抜きかたも多種多様だからでしょう。集まってくる感想やアドバイスは千差万別です。
しかし、作者がベクトルの違う意見を無作為に受け入れてしまうと、作者は自身の芯を失って、作品は迷走してしまいがちになります。
人間は無意識に『正解』を追い求めてしまう生き物です。そして、自分が知らない、理解できない領域はないものとして扱うことがほとんどなので、アドバイスは相手の作品と自分の『正解』を比較しながら行われます。
しかし、実際はその人の優先順位や置かれた環境、特性、ターゲット層など、様々な要因で『正解』は変化します。しかも、『正解』は複数あることがほとんどで、その『正解』同士が衝突してしまうこともままあります。
例えば、小説家界隈では「読者に読んでもらうための作品」と「自分が書きたい作品」のどちらを優先するかについて、衝突が発生します。それは本来対立概念ではないにも関わらず、どちらかが正解であるとする言説を持ち込む者が後を絶ちません。
だから、外部の混沌としたアドバイスをすべて受け入れようとすると、作者は正解間の矛盾によって壊れてしまいます。
前置きが長くなりました。今回のテーマは『創作におけるアドバイスとの接し方』です。
先ほど例示した概念の衝突も、自分が何を優先して創作しているか把握できれば、混乱を避け、相手を否定せず、有用なアドバイスだけを取捨選択できるようになります。
【タイプ分けマトリクス図】
ざっくり言うと、作者の内面から迸るものを優先するか、読者に読まれることを優先するかで分類したものです。
このあたりは、以前もまとめました。
https://note.com/project_hisa/n/n065682819a7a
これだけだとわかりにくいので、事例別に考えてみましょうか。
「読んでもらえなければ意味がない。書きたいものを捨ててテンプレを書け」
こういうアドバイスを他人にする人は、作者が読者志向が高い傾向にあり、作者の書きたいものを優先しない傾向があります(①タイプ)。
作者が側の目標、芯の部分が「自己表現の一環として小説を書き、それを多数の人に読んでもらいたい」(②タイプ)であった場合、書きたいものを捨てることは最大のブレにつながります。
恋愛に例えるなら、「あの子と付き合うにはどうすれば良い?」と相談したのに、「じゃあコンパ行こうぜ」と誘うようなものです。そもそも話が噛み合っていません。
噛み合っていないアドバイスで悩む必要はありません。
「小説は芸術なのだから、読者に媚びず高尚なものを書くべきだ」
こういうアドバイスをする人は、作者志向が高い傾向にあり、読者受けについてはあまり考えていません(③タイプ)。
作者側の目標、芯の部分が「多くの読者に読んでもらい、専業作家になりたい」(①タイプ)であった場合、このアドバイスはアンマッチで真に受けるべきではありません。
恋愛に例えるなら、「あの子と付き合いたい」「モテたい」と言っている人に対して、「ありのままでいろ。そして自分からアタックせず、相手が来るまで待て」とアドバイスするようなものです。
もしもそのアドバイスを受けて、「あの子と付き合いたい」と言っている人がそのアドバイスを受け入れたとしたら、いずれ「あの子」は誰かに持っていかれ、本人は闇墜ちしてしまうでしょう。「相手が来るまで待て」るのは、自分に来なかった場合に後悔しない精神力がある人だけです。
アドバイスもコミュニケーションの一部です。しかし、人は良かれと思って自分にとっての正解をアドバイスし、ゴールの違う相手を迷わせます。
本来はアドバイスをもらう時、相手にどんなアドバイスが欲しいか指定して双方で前提をそろえることが理想なのですが、そんな理想的な場は滅多に作れません。
一人一人、ゴールは違います。そこを認識できていない野放図なアドバイスは、いくら発信者が実績をだしていたとしても、本来無価値です。
それでもベクトルがそろっていさえすれば、学べることは多数あるでしょう。
まずは自分がどういったタイプの創作者なのか分析してから、相手がどういうゴールなのか読み取り、それからアドバイスを取捨選択すれば、迷いは少なくなるかもしれません。