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【インタビュー後編】ケアマネジャーの役割を活かし、誰もが主体的に生きる社会を作りたい

介護職向けの研修や介護事業所の業務支援などを行うかたわら、介護と仕事の両立を支える人材育成などに取り組む進さん。

インタビュー前編では日頃の取り組み内容や取り組みのきっかけについてお伺いしましたが、後編では、活動を行う中でのやりがいや苦労、業界の未来についてお話を伺いました。

進 絵美(すすむ えみ)氏
株式会社進スタジオ 代表取締役/ケアマネジャーを紡ぐ会 会長/企業と産業ケアマネを紡ぐ会 代表
ケアマネジャー向けの研修や介護事業所の業務支援などを行う株式会社進スタジオを運営。そのほか、介護と仕事の両立を支える産業ケアマネジャーの資格創設にかかわり、人材育成にも力を入れている。

介護業界から利用者、企業、国全体へと幸せが広がっていく​​

— 活動をする中でどのようなことにやりがいを感じますか。​​

進さん:介護業界で働く方も、仕事と介護を両立する方も、企業も、産業ケアマネが関わってきちんとマネジメントすれば、幸せにできると思うんです。介護が必要な人を支えるのは当たり前ですが、その周りの方も、介護しながら働いてる方も、その方が働く企業も、もっと大きく言うと国全体も支えることができるんだと思っています。そのようにつながっていく仕組みを仕掛けていけることが、とても面白いと思っています。ケアマネジャーとは、本来それができる仕事なんですよ。そう思いながら、日々、小さなことから活動しています。 

皆が人生の主役として主体的に生きる世界を​​

— 介護業界の課題はどのようなところにあると思いますか。​​

進さん:(パネルを見せて)「主役は誰だ」でしょうか。私もそうだったように、ついつい他人のせいにしたくなるんです。でもそういう人ってしんどそうだったり、楽しくなさそうに見えるんですよね。すべて自分次第じゃないですか。「主役は誰ですか」と問いかけていきたいんです。

事務所の一角に飾られたパネルには
「#主役は誰だ」というメッセージが大きく掲載されていた。


— 介護業界だけの話でしょうか。

進さん:最初は介護業界だけの話だと思っていました。ただ独立してから、介護業界以外の方たちとも多く出会うようになり、この人は誰の人生を生きているんだろうと感じることが増えました。皆、自分が主役だと思えていないように感じています。おこがましいですが、その点に気づいてもらいたいし、気づかないのはもったいないなと思います。

ただ、おそらく気づかないほうが楽なんですよね。目の前のことは何とかなってしまうので。でもそれでは結局、誰かのせいにして自分がつらくなったり、どんどん楽しくなくなったりしてしまいます。自分を主役にするということは何かのせいにはできなくなってしまうので、自分自身の様々なスキルやエネルギーを使いますし、しっかり思考する必要もあります。その労力を避けて誰かのせいにしていたことに気づいたとき、その労力を惜しんでいた自分をいったん認めないといけませんから、少し自分が情けなく感じたりします。ですから余計に目を背けてしまうのでしょうね。私はそういう方に伴走して、乗り越えるための力になりたいと思っています。

— 主体的に生きるにはどうしたらよいと思いますか。

進さん:私はケアマネジャーを紡ぐ会の副会長から教えていただきましたが、きちんと自分を満たせるようにならないといけません。疲れてることに自分で気づいて、それを誰かに癒してもらうのではなく、自分でできることを見つけていく必要があります。シャンパンタワーの法則を知っていますか?

シャンパンタワーは、最上段にグラスが一つあり、下に向かうにつれグラスの数が増えて、ピラミッド状になっています。シャンパンを愛やエネルギーに見立てて考えます。一番上のグラスは自分です。2段目は家族といった身近な人、3段目は友人や職場の同僚、4段目はお客さんや利用者さん、その下は地域や社会と考えます。

シャンパンタワーは一番上の段から注ぎますよね? エネルギーはまず自分に注ぎ、あふれると2段目の家族に向かいます。そこも満たされてあふれると、その先に向かいます。だんだん下まで満たされていくんですよ。皆が満たされるんです。誰かのケアをしたいと思ったら、まずは自分の愛やエネルギーを自分に注がなければいけません。人のグラスから注ぐと結局、自分はいつもからっぽで、本来注ぎたい人たちにも注げなくなってしまいます。だからまず自分自身を満たしてあげましょうという法則です。

— 今後、やっていきたいことは何でしょうか。

進さん:産業ケアマネの活躍の場をもっと広げたいです。今はまだ誕生したばかりですが、多くの人に知ってもらい、当たり前の存在にしたいです。働く人も、介護する人も、介護が必要な人も、企業も国も満たされると思います。産業ケアマネが当たり前の存在になれば、介護の暗いイメージが変わります。社会保障費が足りないとあえいでいるこの国全体が変わります。皆が自分の人生の主役として幸せになれると思います。

あとは、私が気づくことができたように、まだ気づいていない誰かが気づくきっかけをつくりたいと思っています。私は本当に偶然にも気づくことができましたが、それぞれの気づくタイミングやきっかけがどこにあるかは誰にも分かりません。ですから、もっと活躍するケアマネジャー、産業ケアマネを増やし、多くの人が気づくきっかけを得る機会を増やしていきたいと思っています。そのためにいろいろなところで発信することを意識して活動を続けていきたいです。

— 進さんが思う、業界や地域の理想的な姿はどのようなものでしょうか。

進さん:皆が主役になっていたらいいですね。誰かのせいにしている人、つらそうな人に囲まれるのは苦しいんです。皆が誰かのせいにするのではなく、それぞれが自分の人生の主役として主体的に生きていくことができたら、私が理想とする社会です。

— どのくらい先の未来に、そのような世界が実現すると思いますか。

進さん:正直、きれいごとだなとも思ってます。ですがそういうことを目指せる社会であって欲しい。否定するのではなく、そうなったらいいなと思える社会にはなっていて欲しいですね。30年ぐらい必要でしょうか?私が介護が必要になる頃にはそうなっていたらうれしいです。

— ありがとうございました。


※ 掲載内容は取材時点(2024年2月)の情報です。


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