【インタビュー後編】地域の福祉を通じてすべての人が笑顔になる社会へ
介護事業の運営コンサルティングや地域の人材育成を行うかたわら、介護業界の待遇改善のために政治団体を立ち上げるなど地域福祉のために幅広い活動に取り組む三浦さん。
インタビュー前編では日頃の取り組み内容や活動のモチベーションについてお伺いしましたが、後編では、活動を行う中での苦労や業界の未来についてお話を伺いました。
介護離職0を目指し、中小企業側の想いにも寄り添う
— 三浦さんが取り組みを行う中で、苦悩や苦労はありますか。
三浦さん:それぞれの活動で別の苦悩がありますね。例として、ワークサポートケアマネジャーの話をしましょう。家族が高齢者を介護する場合、仕事と介護のバランスが問題となることが非常に多くあります。家族介護に人を取られると働き手が減りますから、数年前から、国も「介護離職0」をうたって動き出しています。
ここでケアマネジャーの出番です。介護離職しなくて済むように、介護保険の使い方や市町村の制度を紹介して提案することができます。時短や休暇などの労務管理は、社労士の方が提案するでしょう。でも休暇後にどうやって働き続けるかという提案はケアマネジャーの役割です。そのような働き方を提案しようと思い、ワークサポートケアをはじめました。
しかし日本は中小企業が圧倒的に多いので、介護を理由に職員が休んだり辞めたりしてしまうと、閉業や事業所の閉鎖につながることさえあります。そのような中小企業の方々の介護離職や休業の問題にしっかり向き合えていないのが、今の苦悩ですね。でも、そこを助けないといけないと思っています。
そこで今は、関わっている企業の方々と解決の方法について相談しています。無理強いして彼らのビジネスを破綻させるわけにはいかないので、協力してくださるところから、少しずつはじめているところです。
皆が笑顔になる社会を作りたい
— どんどん活動が広がっていく中で、やってきて良かったと思う瞬間はどのようなときでしょうか。
三浦さん:周囲の意識が変わっていくのはうれしいですね。私たちは、大阪市介護福祉連盟という政治団体を作っています。立ち上げた理由は、ケアマネジャーの意見が行政に届き、行政が介護保険事業計画などをケアマネジャーの目線で作ってほしいという想いからです。
4、5年前に、地域のケアマネジャーの方々の声を陳情という形で、ある大阪市会議員の方を通して話をしていただきました。すると、私たちも肌感として大きく変わったと感じるようになりました。
ケアマネジャーも市民です。市民の声が議員を通してちゃんと行政に届いて、いい仕組みに変わっていくという実感を多くのケアマネジャーが持てたのです。法律や条例はなんとなく上から落ちてくもんだと思っている方が多いでしょう? しかし今は下からも積極的に意見を上げるものだという考えがだんだん皆さんに広がってきています。その変化を見ると、やって良かったと思います。
— 今後取り組みたいことはありますか?
三浦さん:私としては、地域福祉にずっと取り組んでいきたいですね。地域にある課題を一個ずつクリアしていき、より良い地域を作りたいです。
もう一つは介護の業界をよくしていくこと、これがとても大事だと思っています。高齢化社会が進み介護業界の利用者は増えていきますが、関わる介護職の人数は減っていくでしょう。そこで、業務を効率化することはとても大事になります。生産性向上のために、ICT化やOMO(オンラインとオフラインの融合)化を進めることが、今、私が一番やりたいことです。もうアナログで動くのをやめようという話です。
— 三浦さんにとって業界や地域の理想的な姿、未来像とはどのようなものですか。
三浦さん:働く人たちが笑顔になってほしいですね。そのためにはもっと経済的・時間的に余裕を持てるようになることが必要でしょう。経済的な余裕は社会保障の問題もありますが、時間的な余裕は生産性で変わります。ですから、OMO化を当たり前のことにしたいです。そうすれば、時間的なロスも減るでしょう。皆があちこち走り回ることなく、情報を普通にやりとりする未来が一番いいと思いますね。
これは介護業界で働く方々だけのことではありません。皆が笑顔になる社会にならないと意味がありません。介護業界だけがOMO化しても意味がないと思うのです。とりあえず、私は目の前にある自分の業界を考えますが、理想は、例えばAさんの介護情報を、離れて暮らす息子さんも知れるし、ケアマネジャーも確認できるといったように、さまざまな情報を皆で共有できる世界ができたらいいと思います。
— そういった未来が実現するには、どのぐらいの時間がかかると思いますか。
三浦さん:国も動いているので、10年ぐらいでしょうか。現在、国はマイナンバーを使った医療情報基盤を作っています。今後、マイナンバーをもとに、Web上にアクセスすれば個人の情報を必要な人が見れるようになるでしょう。さらにそこから福祉にも繋がっていく世界、それはきっとそれほど遠い未来ではないと信じています。
— ありがとうございました。
※ 掲載内容は取材時点(2024年2月)の情報です。