なにを原価と捉えるか (2-6)
こんにちは。松本充平です。
今回のテーマは、「何を原価と捉えるか」。
1-1から解説してきた直接原価計算によるMQ会計表を利用する上では、原価をどうとらえるかということがキモになります。原価VQを決定することが、すなわち粗利MQを決定することだからです。
そもそも、「原価とはなにか」、「直接原価計算となにか」、確認したい方はこちらへ。「戦略に有効な”直接原価計算”とは」
2−6 自社を直接原価計算へ変換 ~ 真の「原価」を決定する ~
現状自社が“原価”として把握している中身には、どんなものがふくまれているでしょうか。
まずは、その中身を見てみましょう。
その中身を精査し、売上が立つときに、必ず必要なもので、かつ、販売数量に比例して増えるもののみを原価として拾い出しましょう。
具体例を出して、具体的な判断基準を説明していきます。
たとえば、パンを製造して販売している事業の場合、パンの原料である小麦粉の仕入金額は、材料費としてまさに原価といえます。
一方で、パンを焼くときの光熱費代を原価に入れていないでしょうか?
パンを製造するときに必ず窯に火を入れる必要があるので、製造費として原価に含めている場合があります。
しかし、パンを作るのに必要な費用でも、パンが売れない場合もあるはずです。
つまり、パンの焼き窯の光熱費は、販売数量に比例しない費用、すなわち固定費です。
もう一つの観点として、売価Pに対して、金額が小さな費用も、原価から外します。
たとえば、パンの販売時に袋詰めして手渡すときに、その袋は、販売と同時に必要で、かつ、数量比例して消費するものです。
しかし、数百円の売価Pに対して、袋代は単価数円。つまり、無視できる金額です。
もしも原価に含めるとしても、袋を棚卸する手間も発生するので、袋代は原価の性質はもっていますが、原価に含めることはおすすめしません。
このように、原価としてカウントするときに、金額が僅少なもので、かつ、カウントに手間がかかるものは原価に含めません。
特に売価P、原価V、粗利M、数量Qは、その日のうちに実績把握することがベストです。
集計に手間がかからないようシンプルに原価を考えることも重要になります。
原価が決まれば、その原価以外の費用をすべて固定費とすればOKです。
1つ注意点としては、固定費には借入金の利息を含めましょう。
固定費とは、決算書の販売管理費が主なものになりますが、借入金利息、すなわち支払利息は、販売管理費に含まれません。
この借入金利息もかならず固定費に含めてください。
直接原価計算にあたって、自社の原価として必要最低限のものは?
「販売・提供と同時に発生し、かつ、数量比例する費用」
実際に、自社で何の費用を原価としているのか、それを確認するとき、ひとつの手段は会計帳簿の中身を確認すること。または、自社の実績管理表のようなものをつけている場合は、その中身を見ることになるでしょう。
取り扱っている商品が複数ある場合には、その商品毎に見ることが必要になります。
本気で商品毎に原価を把握し、つまり粗利MQを把握していくためには、会計ソフトでもかなり綿密な設計をする必要があるし、もしくは会計ソフトとは別に管理表を用意する必要があります。
また、その会計ソフトの設計や管理表の設計も、業種によって最適なレイアウトが必要になります。
一気に全部やらずに、まずは、自社の主力の商品から始めるのが肝心です。
あらためて、自社の商品の原価にはどんな費用が含まれているか、みてみると思わぬ発見もあるかもしれません。ぜひ、見直しをしてみてください。
今回は、ここまでです。
次回の記事では、step3として、「最小限の労力と時間で、最大の成果を得るために、粗利を重視した戦略の考え方」に入っていきます。
それではまた。