「売上」の金額にだまされるな(3-1)
この”「売上」の金額”というのは自社の売上金額のことです。
自社で売上目標を設定して、目標達成に向けてみんなでがんばる。という会社もあると思います。
でも、この売上目標、先に”粗利”目標を決めてからでなければ、「せっかく目標売上を達成したのに、かえって利益が減ってしまった」という最悪の事態を招きかねません。
なぜ「売上が上がったのに利益が減る」のか、それは単純に固定費が増えたからではありません。売上が上がったのに粗利が減ってしまうことがあるからです。だから、先に”粗利”目標を決めてから売上目標を決める必要があります。
事業や会社経営の目的は、売上を上げることではなく、利益をあげることですよね。
今回のテーマは、粗利を重視した戦略を立てる上で、まず前提となる内容です。
3−1 売上PQの拡大よりも粗利MQの拡大が重要
こんにちは、松本充平です。
今回から、「step3 自社の重点注力商品を明らかにする」
このステップに入っていきます。
ここでいう、重点注力商品とはなにか。
それは、自社の商品またはサービスラインナップなかで、それをお客さんへ提供するにあたり、同じ労力と同じ時間を費やした時、最も粗利を多く稼ぎ出すことができる商品やサービスのことです。
この自社の重点注力商品を、探し出す、または再認識することがこのstep3の目的です。
その前提として、売上PQの拡大よりも粗利MQの拡大が重要であることを改めて説明します。
まず、想像してみてください。
あなたは、ある企業の社長。ある自社の1つの商品Aの売上を上げていきたいと考えています。そのある商品Aとは、以下のようなスペックです。
ある日、社長であるあなたが社員に言いました。
「今月は、商品Aの売上目標を前月比10%アップする!」
現状売上3,000の10%アップ、つまり売上3,300を目標に掲げました。
そこから、自社の営業マンたちは、必死の努力で仕事をし、販売活動を行いました。
そして、1カ月後。
結果は、売上3,320 !
現状から、売上10%+αアップ、社員の営業マン、がんばりました。きっちり目標達成!!しかもちょい上積み。
で、中身は?
数量Qが「83」(+23個up)・・・たくさん売りました!
売価Pは?「40」(△10)・・・2割引きでたくさん売った!
がんばって広告費も増やさず、値引きで数量Qアップを実現し、売上前月比110%達成。やった!
「ん?でも喜ぶのはまだ早い。」
原価単価Vはそのままで、数量Qが83だから原価VQは1660(+460)。
原価単価Vは変わってないが、たくさん売ったから原価VQは増加。
「あれれ、粗利MQは1660(△140)にさがっちゃった!」
せっかく売上PQ目標は見事達成したのに、粗利MQは下がってしまった。これでは本末転倒。社長としても、ボーナスを出すわけにもいかず...
がんばった結果が、マイナスでは営業マンも意気消沈。
なぜ、こんな結果になってしまったのか。
1か月前にさかのぼって振り返ります。
社長が社員に言ったわけです。
「今月は、売上目標を前月比10%アップする!」
この時点で、あなたはピン、ときたでしょうか。
え?「売上前月比110%が目標?」ところで売価Pと数量Q、どっちをどうするんだ??
とピンときたでしょうか。
売上PQアップなら、少なくとも5つの手段があります。
①Pだけあげるか
②Qだけあげるか、
③PさげてQあげるか、
④Pあげて、Qさげるか、
⑤P,Q両方上げるか、この5つです。
その手段の中には、損失につながるものもあるわけです。
今回なら3つめの「PさげてQあげる」という手段を社員は選択しました。しかし、結果、売上PQは増加したにもかかわらず、粗利MQは減少。
ただ、必ずしも「PさげてQあげる」という手段が損失につながるわけではありません。
結論から言うと、Pを下げすぎたんですね。Pを20%も下げて販売してしまった。原価VそのままでPをこれだけ下げたら、粗利単価Mは30から20へ33%も減らしたことになります。
粗利単価Mを33%も下げて粗利MQを大きくするには、相当なQアップが必要です。
ちなみに、今回のように「P」を20%減にして当初の粗利MQ1800を現状維持するには、Qは90(+30)にしなければなりません。
この例の実績は83(+23)でしたので、あと7つ足りなかったわけです。
せっかく売上PQを10%もアップしたのに、結果利益Gを減らしてしまった。これではがんばった社員への利益の還元もできないですよね。
良かれと思って必死にやって成果出した!と思ったら意図せずして損失を出してしまった。
こんな悲しいことを防ぐにはどうしたらいいのか。
シンプルでカンタンな方法があります。それは、
「粗利MQ」の金額を目標設定する❕❕
売上PQの目標を設定する前に、大前提として粗利MQをいくら増加したいのか、これをまず決める必要があります。
増加したい粗利MQを決めてから、この粗利MQを実現するために、売上PQはいくら増加する必要があるのか、という順番です。
売上とは、単なる指標でしかありません。
粗利MQに基づいた売上でなければ、数字上いくら大きくても意味はあまりありません。取引規模の大きさを表すくらいの意味しかありません。
いくら売上金額が大きくても、黒字なのか赤字なのかもわかりません。
だからこそ、利益を上げるためには、売上PQの拡大よりも粗利MQの拡大が重要なのです。
戦略は、粗利MQから考える。
逆算で、必要な売上金額を算出していくことが合理的な方法です。
まさに、一倉定氏の「経営は逆算である」。これに集約されます。
今回はここまでです。それではまた次回の記事で。