実はこれ、会計と経営の基本です!(2-5)
これをわかっているのと、わかっていないのとでは、まったく見る世界が違うといっても過言ではありません。むしろ、これを知らなかったら、経営の数字を見ていても、税金の金額にしても、腑に落ちないことばかりのはず。
「売上っていつ売上になるのか」という話です。
これは経営戦略上の会計を考える上でも、大前提となる話。
売上の計上=お金が入金した時ではない・・・計上とは、売上をカウントするのタイミングのことです。(カウントとは、今日がその売上を上げた日である、と金額とともに帳簿に記すこと)
では、売上はいつカウントするのか。
ずばり、それは、
モノを引き渡した時です。お金の入金は無関係なのです。(専門用語で「引渡基準」という)
車の販売なら、車を納車した日。
建設業なら、工事が終わったとき。
モノを売らないサービス業であれば、そのサービスを提供したとき。
たとえば、家事サービスなら、その家事が終わったとき。
毎月の継続課金のサービスなら、毎月末または締め日。
売上は、お金がいつ入金したかに関係なくカウントしていきます。
たとえば、自分が車の中古車販売業を営んでいるとしましょう。今月、1台100万円の車をお客さんに10台納車したら、今月の売上は1,000万円になります。もし、まだお客さんから代金を1円ももらっていなかったとしても、今月の売上は1,000万円なのです。
もちろん、売上があるからといって、利益が出ているとは限りませんが、売上の基準が、お金の入金と関係ないとすると、「利益が出ているのにお金は手元にない。」ということが起きてきます。
ちなみに、モノを引き渡したけど、まだお金を回収していないときの、そのお金のことを”売掛金”といいます。
そして、税金は、利益があれば発生するので、「お金が手元にないのに納税しなくてはいけない。」ということも起きてしまいます。
では、なぜ、売上のタイミングをモノの引き渡しのときにするのでしょうか。
それは、売り手が買い手にモノを渡すと、その時点で買い手は、代金を支払わなければいけないことが決定するからです。いつお金を支払うかは別として。難しい言い方ですが、モノを引き渡すと、売り手はお金をもらう権利が発生し、買い手は、お金を支払う義務が発生します。
「モノを渡したんだから、当然お金はもらえる。だからモノを渡した時に売上をカウントしよう。」ということです。また、商売というのは、”商品”が主役だから。と考えると腑に落ちやすいでしょうか。
そもそも、商品を渡すときに、代金も同時にもらえば、売上の計上のタイミングとお金の入金のタイミングが同じになってわかりやすいですよね。
ただ、商人と商人(会社と会社)のやり取りになると、モノの引渡しが頻繁になって、都度お金を渡すのが大変になります。だから、「月末で締めて、代金はまとめて請求するからね。」といってツケ払いが始まったのです。
やはり、商売は、商品が主役だから。と考えるのが分かりやすいのではないでしょうか。
商売をやっていなければ、ツケ払いはなかなかやる機会がありません。スーパーで買い物をする主婦で、毎月末で締めて請求書をもらう人はいませんよね。つまり、モノをもらうときに即お金を払います。ふだんの生活では、買い物といえば現金引換えなので、商売をやっていなければ、この売上の引渡基準というのは、なじみがなくて当然です。
税理士や会計士は、ふだんからこの会計ルールの頭で生きているので、起業して間もない経営者と話をするときも、当然のごとくこのルールで話をしてしまいがち。これが、税理士や会計士と経営者との間で話がかみ合わない原因になることもあります。
この「お金ではなく、商品が主役の売上計上のルール」は、会計の大原則になっており、経営において利益の確認をするときも、さらに税金計算をするときも、この原則で話が進んでいきます。
この原則を知っているだけで、陥りやすい経営や税金の落とし穴を回避することも多くあるはず。意外にも「知らなかった。」という声は聞きます。「商品が主役の売上計上ルール」として府に落としてもらえたら、嬉しいです。
前回の記事まで、過去の記事から見てもらってるあなたには、MQ会計表の活用方法など直接原価計算の話をざっと紹介してきました。今回の記事では、少しMQ会計表を離れた話をはさみました。いよいよ、次回から自社の直接原価の把握に入っていきます。
今回はここまでです。
では、また次回の記事で。