なかなか講演・執筆依頼が届かない研究者へ
はじめに
2024 夏季休暇シーズン真っ只中、世間的にはリフレッシュ期間ですが、この期間を活用して、依頼を受けた講演や執筆を行なっております。今回は、研究・学位取得・論文投稿をしているが、なかなか講演依頼が来ないとぼやきたい方に私見を共有させていただきます。
講演や執筆原稿の役割とは
研究活動を実践している方であれば、学会における特別講演、教育講演、セミナー等の講師を引き受けてみたい、講師の打診を受けたいと思うことがあるのではないでしょうか。少なくとも私はそう思っていました。講演などの企画は、参加者数を獲得しなければなりません。魅力的なテーマと講師を揃え、動員数を達成することが命題です。それぞれの学会や講演企画により、テーマ(目的)があると思いますので、それについては割愛します。執筆原稿であっても、魅力的なテーマ×魅力的な講師という組み合わせが非常に重要です。
仲良し同士で講師を引き受けあっているわけではない
学会に参加してみると、仲が良い知人同士で当番制のように講師・座長を引き受けあっていることがあります。参加者の中には、何回か学会に参加してみるとそのような構図を考え始め、それに割り込むことが難しいと判断して、次第に学会参加を縮小し始める方がいます。確かに、専門学会になればなるほど、その様に見えるかもしれません。学会の会場周辺では、仲良し同士で懇親会が行われているのを見ますし、学会会場でも仲良し同士で良く話をしています。ただし、仲良しだから講師・座長を引き受けあっているのではありません。講師を引き受けられる方の絶対数が不足しているのが原因です。
講演の講師等の要件
知名度が一つの要件に思うときもありますが、国際的に著名な賞でもない限り、何を持ってして著名であるのかわかりません。私が新人理学療法士の頃は、学会や協会で〜〜長、理事などの役職にある方を著名人と考えていたぐらいですから、定義なんぞは存在しません。今回は、知名度以外の要件を述べたいと思い、以下に講演の講師等の要件について私見を列挙します。
専門性を企画・運営担当者に認識されている者:専門性がある方は、多数存在しています。ただし、専門性を周知できずに、企画・運営担当者に専門性を認識されていない方が多い様に思います。それは、学会発表や投稿論文の頻度が低頻度であるからです。コツコツ努力する方々の集団が学会に参加する訳ですから、それだけでは専門性が企画・運営担当者が認識しづらいですよね。 やはり、高頻度になりやすい大学院教員や理学療法士数が多い病院・施設に勤務している方が講師になりやすくなります。これは、個人で臨床研究活動を取り組む方より、チームで研究活動に取り組む方が講師になりやすいということです。個人で進める研究活動から、チーム(複数)で研究活動を推進することを鍛えておきたいですね。
信頼・共感される人間性を有する者:近所付き合いや職場内の人間関係でも同じことで、面識がある者の中で講師を依頼したり、執筆を依頼したりしますので、人物的に信頼・共感されることが良いように思います。依頼が乏しい方は、人間性を知ってもらう機会に恵まれていないことがあります。例えば、学会参加しても知人が増えない方、懇親会などのイベントに出席しない方などです。 学会に参加したら発表者と積極的に交流する単純な話ですが、単純なことができない研究者が意外と存在します。先輩や指導教員に頼りきりの方こそ、受け身の学会参加に慣れてしまっていて、それを修正するのにとても時間がかかります。私の職場に勤務する助教の一人は、2年あっても抜け出していません。発表を聞いて、質問をするところから交流を始めてみましょう。そして、学会企画のイベントにも参加して、隣の席の方と交流を行うところから始めてみましょう。 自分を知ってもらう機会は学会の中に用意されています。
同じ専門の方と交流(人脈)がある者:実技のワークショップなどに参加する目的は何か? それは同じ専門領域の方と人脈を構築することとと実技を内省するためです。勤務先が異なる方々との交流経験が多い方は、ほとんどの場合、民間のセミナーや院内セミナーなどの講師依頼を受けています。特に、新人や若手と言われるような時期から開始すると良いかと思います。私自身は、少し遅れて参加し始めましたが、元々上下関係や先輩後輩等を求める人間ではありませんので、気軽に話しかけてもらえるのでいつも助かっています。ただし、私は年齢が上の方には、敬語を使わなくて良いよと言われても、敬語しか使えないので仕事上での距離感以上にはなりません。
珍しい経験がある者:貴重な経験を共有して欲しいと依頼を受けるかもしれません。私の場合は、理学療法の業界では珍しく海外大学で客員教授をして、海外における特別講義の経験が比較的多く、海外大学院生の指導教員をしています。そのような経験から講演をお願いしますと打診されることが時々あります。
まとめ
今回の私見は、周囲に認識してもらえるような学術活動(学会発表、論文投稿)を行いましょう、そして、自分を良く知ってもらうために交流する機会があれば積極的に参加してみましょうという話でした。講師には、講演準備や質疑応答等の機会があり、自分自身の取り組みを内省できる学習機会があります。まずは、1回、講師依頼、執筆依頼が皆さんに届くことを願っています。