大学教授になって英語を教えよう!:個人研究費について(2)
旅費について
大学の専任教員になると、学会に参加して発表をする、あるいは共同研究の打ち合わせをするといったことが頻繁にあると思います。そのため、学会会場や打ち合わせのための会場に行くための旅費が必要になってきます。時によっては宿泊する必要もあり、宿泊費も必要になってきます。このような旅費や宿泊費も研究費で支出することが可能です。ただし、これは普通に立て替え払いをするという形での使用ではなく、たいていの場合あらかじめ出張の伺い書を提出する必要があります。
拒絶されることはまずありませんが、出張の伺い書を学長宛あるいは所属する学部やセンターの長に提出します。その後、出張命令書のような書類が発行されることで、正式な支出が可能になります。自分で申請していて所属長から出張の「命令」が来るというのは不思議な感じがするかもしれませんが、これで正式にこの出張が大学に正式に認められたことになります。
私が働いていた大学では出張「命令書」が発行されていましたが、どうして出張の「許可書」ではだめなのでしょう。これは申請が認められたら申請したとおりに旅行しなさいという意味が含まれているからです。場合によっては「出張が認められたのだから、そして時間的に余裕もあるから、足を少し伸ばして当初予定と違う所にも行ってみよう」とか、「出張は認められたけれど、急に都合が悪くなったから全体の日程をずらして全部1日ずつ前倒ししよう」といったことをしたくなるかもしれませんが、これはやってはいけません。なぜなら、出張は公務であり、出張中に何か事故があった場合には、公務災害として扱われるからです。申請と違う勝手な場所に行っていたり、予定を大幅に変更したとなると、私用の旅行とみなされることもあり、公務災害の扱いを受けることができなくなります。出張中の事故で死亡したとなると大学から保険金が支給されることがあると思いますが、あくまで公務として予定通りの旅行をしているから支給されるのであり、私的な旅行が含まれておりそこの部分で事故があったとなると大変厄介なことになります。
なお、学部や学科の業務として学生引率などがある場合には、個人研究費ではなく学部などの予算から旅費が支出されるので、通常は個人研究費を使う必要はありません。
国内旅費について
出張に関する国内旅費の支出については、大学ごとの規定があります。このため、教員側で電車等交通機関の料金を調べなくとも、担当部署の職員の方が大学の規定により計算をしてくれます。つまり見積書を提出するなどの手間はありません。目的地の住所、そして最寄りの駅などをあらかじめ記載しておけば、大学の規定によってその金額を計算し、教員の銀行口座に送金をしてくれるようになっています。ただ、いつ振り込まれるかについては大学によってさまざまです。国内出張の場合には事前に旅費が振り込まれたケースがほとんどでした。ただ、海外への出張の場合、帰国後に振り込まれるケースが多かったと記憶しています。
旅行の起点は大学です
出張で旅行の起点は大学になります。自宅ではないので注意が必要です。基本的には、大学から出発し、出張先に旅行し、最終的に大学に帰着するという形での旅行として出張旅費が計算されます。勤務先と自宅の間については、通常通勤手当が出ており、電車・バス通勤の場合には手当で通勤定期を買っているはずですから、その部分は旅費計算には入りません。
遠隔地に出張しなければならない場合、航空機を使うケースがあると思います。ただその場合には航空機利用が可能な最低限の距離が決まっています。例えば、大阪市内の大学に勤務している人が、東京に出張する場合、基本的には新幹線対応となります。確かに大阪から東京まで航空機の利用はできるのですが、例えば出張先まで600キロメートル以上の場合でないと航空機の利用はできない、などといった規定があります。600キロメートルであれば、大阪ー東京間はほんの少し距離が足りません。ただし、例えば割引の航空券があり、新幹線利用よりも、旅費が大幅に安くなるといった場合には、出張伺い書にその旨を記載することで、航空機の利用が許可されることもあります。
宿泊について
宿泊についても、大学に規定があります。また、通常は職位によって支出可能な宿泊費の上限が決まっています。つまり教授、準教授、あるいは助教などの職位によって宿泊費の上限が異なります。もちろん職位が高い方が上限の金額は高くなります。宿泊費の支出方法は大学によって異なりますが、たいていの場合は職位によって決まった金額が自動的に支給されるケースが多いようです。最近ではあまり考えられませんが、規定の宿泊費の額よりも安く宿泊できる場合には、出張伺い書に記載して実費支給を依頼する方法もあります。ただ、最近では全国どこに行っても宿泊料金がかなり上昇しているので、規定の宿泊費ではカバーできないケースがほとんどです。その場合、特別な場合を除き差額は自分で負担することになります。
なお、最近ではホテルなどの領収書だけではなく、宿泊証明書も提出しなければならないケースがあります。あるいは、ぴったり規定どおりの金額での支給を希望する場合には宿泊証明書だけで済む場合もあります。でも、どうして宿泊証明書が必要なのでしょう。実は、まともな人が考えればあり得ない状況なのですが、実際には他人が宿泊し、出張申請した先生の名前で領収書をもらってくるということも不可能ではないわけです。つまり、第三者が遊びに行くのにあるホテルを利用し、チェックアウトするときに友人の、つまり出張予定の大学の教員の名前で領収書を作成してもらうということが実際のところ不可能ではありません。このため予約をした教員本人が「確かに宿泊をした」ということを証明するために宿泊証明書を要求する大学があるのです。過去にどこかの大学で、遠隔地で実施される学会に出張する手続きを行い、実際には自分は出張せず自宅でぶらぶらしていていて、旅費と宿泊費をそっくり着服していたというケースがあったようです。このため、本当に出張に行ったことを確認されるケースが増えてきているようです。先ほど述べた宿泊証明書のお話は、まさにその対策です。
嘘のような本当の話
さらに、最近時々大学教員の間で話題になるのですが、出張した場所、例えば学会出張の場合であれば会場の大学や民間の会議場など、その学会に確かに参加したことが証明できるように、会場の入り口の看板や案内図を入れて自分を撮影し、その写真を後ほど提出させるという大学が実際にあるとのことです。ただ、悪知恵を働かせる人はいくらでもいるので、適当に画像を合成して写真を作ってしまうような輩が現れそうな気もします。あるいは、学会であれば、参加していた別の大学の教員などに「A教授はたしかにOOO学会に参加されたことを証明します」といった証明の文書を書いてもらい、後ほどその書類を提出させるという大学もあるように聞いています。1部の非常識な大学教員が行った行為のために、このようなばかばかしい手続きが増えてきているという事は大変嘆かわしいことです。
第三者に対する旅費・宿泊費の支出について
さて、旅費や宿泊費の請求ですが、自分が出張する場合だけではなく、遠隔地の別の組織に所属する研究仲間を自分の大学、あるいは研究集会を行う場所に招聘する場合にも使えます。その場合には、別途旅費、宿泊費等の請求のフォーマットが大学にありますので、それを記載して申請を行います。これも事前の申請が必要であり、宿泊を行った場合には宿泊証明書の提出が必要になる場合があります。
国際学会について
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