私にとって本は

私は読書が好きだ。本は私に知識、教養、思想、等たくさんのことを教えてくれる。専門書や新書はもちろん小説からだって学ぶことがある。

しかし小説は特に人によってとらえ方が大きく違うため、人によって学ぶことも違し、著者の好き嫌いだって顕著に表れると思う。

初めて太宰治の「トカトントン」を読んだのは14歳の時だ。主人公にだけ聞こえる「トントントン」という特有の音と、それに生活を支配されていく主人公の心象表現、主人公からある作家への手紙という形の文章に惹かれて、自分の愛読書になった。

読書のための時間が多く取れない為、同じ本をなんども読み返すことがあまりないが、太宰治の作品だけは、何度も読み返している。特にこの「トカトントン」は厳しい部活動が生活の中心だった13、4歳の時、高校に入学したての二年前、自分に絶望して自殺さえ考えていた去年の秋、同じ作品なのに私が感じたことは大きく違った。

しかしこの作品は私に大きな影響を与えたが、私を救ってはくれなかった。特に最後に読んだとき、主人公に完全に感情移入していて、泣くことさえあった。しかしその物語の終わり方のせいか、朽ちていく主人公のように私も廃人になってしまったような感覚だった。

私の感じたあの感覚は、あの時だったからこそ感じたものだったと思う。味わった感動の積み重ねが今の私を形成していると強く感じる。



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