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「座れない男」と「荷物が座る座席」と

初めましての方、そしていつもご覧下さってる方、sanaのnoteに足を運んで下さり、ありがとうございます。皆さんが縁あるいつかの星に繋がる時のために、sanaの現場からの何かをころんとお届け出来たら、と思っています。

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ありがとうございます。

2024年3月下旬から書き始めた初小説。
第22話~第29話を本日新たに順次アップしていく予定です。
1つ目のお話は「七色書房とサビアンシンボル占い」第1話~第8話
2つ目のお話は「岩のように重たくなる足」第9話~第15話
3つ目のお話は「熊男とお茶を」第16話~第21話
4つ目のお話は「椅子に座れない男」第22話~第29話 

七色書房の七色処方 ~その始まり~(PRIZM) - カクヨムはこちらから↓

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★「荷物」が座り続ける座席

とある日のこと。
カフェでお茶していると、とあるカウンターの座席に座っているご婦人が自分の隣の席に自分の荷物を置いていました。それは後から来たお客さんがそこに座るようにと案内されたことで、端から見ていた私も荷物があることに気が付いたわけですが。

荷物を置いたそのご婦人は、もう一人のご婦人と一緒に来ていたようで、足元の荷物置きに入りきらない荷物を左隣の席に置いていたようです。
店員さんから声をかけられて、申し訳ありませんが、と言われたのだと思われるのですが、荷物をゆっくりゆっくり、え、どこに置けっていうのかしら?という様な感じで、すでに入っている荷物置きの荷物の上になんとか崩れないように「もぅー大変だわ」という感じで重ねて置いていたようでした。それで隣の席は空きましたから、待っていた方が座れます。

空けたその席にご婦人が座りました。待たされていたようで、おそらくは荷物が置かれていたことや移動したことは見て知っていたと思われます。そのご婦人も、座席ごとに用意されていた荷物置きを使っていました。そしていくつもの袋を抱えています。崩れやすいからでしょうか、カウンターの上にも置いていました。

しばらく三人のご婦人方が並んで座っていたことになりますが、私が面白いと思ったのはその後のことです。

最初の二人連れのご婦人方が帰っていきました。店員さんがカップや水を片付けて、机と椅子を拭いて仕上げて、カウンターの中へと戻っていきます。
その直後。
片付けた席の左側を空けてもらって座っていたご婦人がむくっと立ち上がって、空いたばかりの右隣の席へとズレて座るために黙って移動したのです。そして、今まで自分が座っていた座席には、なんとカウンターの上に置いていた袋状の荷物をでんっと置いたのです。それも先ほどの方と似たようなサイズ、似たような膨れ具合の紙袋とナイロン袋と。

「さっきと同じやん!」

私の心の声でした。

その後、いつの間にかそのご婦人はお茶を飲んで、帰って行かれたようで、店員さんがまた片付けをしていました。店員さんもそこに荷物は置かないで下さい、と言いたげな感じが出ていて、でも言えないという状態でした。
いやぁ、されたことは、する、ということなのか、人というのは面白いもんだなぁと思って、考えていました。

するとまた一人のご婦人がやって来ました。
いくつもの席が空いているカウンター席の、なんと先ほどから話題の(私の中で)同じ席に連続三人目のご婦人が座ったのです。途端に唖然としたのです。
そのご婦人は顔色一つ変えること無く、手荷物を左隣の席にどんっ、どんっと置いたからです。似た年代、似た顔立ち、似た雰囲気、似た座り方と似た荷物たち。しかも先ほどの方のように見ていたから真似た、されていたことを自分もした、という風景じゃ無いんですね。おそらくはこの三人目の方は何も知らない、だろうと思われるのです。

「またまた、さっきと同じやんっ!」

店員さんが、えっ!と身体ごと一瞬ひるんだのを、私はしっかりと目撃してしまいました。私も同じく。
嘘みたいなこの連続の三連打に、一体何が起きているんだ! と、面白くなってしまって、もう笑いが止まりませんでした。この世のマトリックスがバグって、連打して似ているものを打ち出し続けているのかと…。あぁ止めてー。

実際その後のことは、私が席を立ったことでわかりませんが、そんな日もあるっていうことで、私の観察日記に記録されたのでありました。



あなただけのこの人生の物語を紐解いて歩きましょう。
昼の地球で、夜の宇宙で、丸ごと一日どうぞよい旅を。
cafe prizm sanaでした。


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