宮沢賢治が亡くなる直前に書いた手紙
風のなかを自由に歩けるとか、
はっきりした声で何時間でも話ができるとか、
自分の兄弟のために何円かを手伝えるとかいうやうなことは
できないものから見れば神の業にも均しいものです。
そんなことはもう人間の当然の権利だなどといふやうな考では、
本気に観察した世界の実際と余り遠いものです。
どうか今のご生活を大切にお護り下さい。
上のそらでなしに、しっかり落ちついて、
一時の感激や興奮を避け、
楽しめるものは楽しみ、苦しまなければならないものは苦しんで
生きて行きませう。