3歳から数であそぶカードゲーム「リスさんのおいでおいでゲーム」の誕生秘話
開発のきっかけ
きっかけはPRINT PLAY!の開発者(私)が、自分の3歳の息子に「数」の面白さを知ってほしいというのが一番の願いでした。息子は物を見ながら「1、2、3〜」と数を数えることはできますが、途中で飽きてしまうのか「6」あたりからふざけてしまいます。当然「数字」を読むこともできません。
無理やり数字を覚えさせるのも違うなと考え、本人が真剣に数を数えるきっかけづくりとして「数の面白さが実感できるアナログゲームを作ろう!」という結論に至りました。
コンセプト
開発にあたり、「ハゲタカのえじき」という「数」を使った有名なアナログゲームが頭に浮かびました。ルールはシンプルで大人は楽しめるのですが、3歳児にとっては「ー(マイナス)」や「10以上の数字」が出てきたり、イラストが怖く(大人向け)、単純に子供にとってはプレイ時間が長いためプレイするのは難しいと思いました。
そこで、「ハゲタカのえじき」という定番ゲームの面白さを活かしながらも、小さな子供でも楽しみながら「数」を学ぶことができるという視点でゲームを開発することに決めました。もちろん、大人だけでも楽しめることは必須です。
数が主役のシンプルな「あそびかた」
まずは大人も楽しめるために、「ハゲタカのえじき」の面白さでもある駆け引きの要素は必須でした。その中でいかにオープンに子供と「数」を楽しめるか。息子の様子を見ながら下記の条件を元に「リスさんのおいでおいでゲーム」の構想を組み立てていきました。
・数えやすい「1〜10」のみを使用する
・「数」が学びやすいデザイン
・子供でも覚えられるシンプルな設定とルール
・短時間で勝負がつく(子供の集中力が持つ時間は短いため)
「リスさんのおいでおいでゲーム」を抽象的に説明すると、高いリスク(数)を賭ければ高いリターン(数)が得られるゲームです。リスクとリターンを「数」で明確に表現できるため、シンプルかつ平等な駆け引きを楽しむことができます。
手札は他のプレイヤーに見られても進行を妨ぐことはありません。手札としてカードを持てないお子様はテーブルの下に広げたり、裏面にしてのぞいたりして楽しむことができます。下記は完成した「リスさんのおいでおいでゲームのあそびかた」のページです。
世界観に入り込める「ストーリー」
「あそびかた」が決まっても、その設定やデザインが魅力的でなければ子供は興味を示しません。数々のアナログゲームを息子と一緒に遊びましたが、小さな子供にアナログゲームをプレイしてもらうのには「ストーリー」が重要であることを強く実感しています。例えば、すごろくでも「自分は海の上を漂う探検家。誰よりも早くゴールにたどり着くとお宝が全て手に入る!」というストーリーがあると息子のやる気が全然変わります。
大人は経験と想像で「ストーリー」を補うことができますが、小さな子供は「ストーリー」を明確にすることで世界観に入り込み、モチベーションが維持できます。「リスさんのおいでおいでゲーム」のストーリーは下記になります。食べるのが大好き!動物に優しくしたい!という息子もテンションが上がります。
ここはきのみがだいすきなリスさんがあつまるもりのなか。
おなかをすかせたリスさんを、きのみをつかっておびきよせよう!
だれがたくさんのリスさんをGETできるかな?
小さな子供でも親しみが持てる「デザイン」
デザイナーと相談しながら「動物」と「食べ物」というお子様に人気のテーマから「リスさん」と「きのみ」をモチーフに選びました。リスさんはなるべく個性が出るようにカードごとにイラストを変えていて、本末転倒な想いなのですが勝負に関係なく「このリスさんほしい!」とお子様に思ってもらえるといいなと思います。
成長に合わせた「数」の学び方
息子を見ていて、「数」を身につけるにはステップがあるのではないかと推測しました。息子はステップ2への入り口あたりだと思います。
ステップ1:物の「多い・少ない」(大きい 小さい)がわかる
ステップ2:物の数を数えることができる
ステップ3:数字を読むことができる
ステップ4:足し算ができる
本ゲームはどのステップにいるお子様でも楽しめる。かつ、ゲームをすることで次のステップへと興味を持つことができることを狙っています。登場する数は両手で数えられる1〜10までですが、10が多いお子様にはカードを抜いてもゲームが楽しめます。例えば、1〜5のみのカードを使うことで数字への難しさは軽減し、ゲーム時間も短くプレイすることができます。
大人がプレイすると短時間に感じますが、子供の集中力が持つ時間は限られているので、ゲームのプレイ時間も調整ができるように意識をしました。息子は今のところは1〜7,8くらいまでがちょうど良さそうです。
「数の大きさ」を「イラストの大きさ」で
ステップ1のまだ数を数えることができないお子様には、直感的に「大きいリスさん=良い!(大きいポイント)」とわかるように1を最小、10を最大の大きさでリスさんのイラストを表現しています。感覚的に大きいリスさんが欲しい!と思えるような工夫です。ルールの特性上、それだけの感覚でも十分に大人と互角に勝負することができます。
きのみカードも単純に「量が多い=良い(大きいポイント)」と一目でわかるようにレイアウトされています。
構想段階ではリスさんカードもきのみカードと同様に、リスさんの数を増やしていくことを想定していましたが、煩雑になりすぎてしまうというデザイナーの意見をもらいながら個性が光るリスさんが誕生しました。
全てのカードに「数を数えられる要素」を
ステップ2の物の数が数えられるお子様にわかりやすく、全てのカードは何かしらの数が数えられるようにデザインにしています。きのみカードのイラストの数はもちろん、リスさんカードはカードの上部に「●(丸)」をレイアウトして、「1、2、3〜」と数を数えることが可能です。
大人には必要のない要素ですが、小さなお子様でも楽しめる「数」を意識したデザインというコンセプトに沿ってこだわった要素のひとつです。大人が見ても主張しすぎない表現に落とし込むことができたかなと思います。
それでいて「数字」が一番の主役
お子様に楽しんでもらうことは意識しつつ、やはりゲームで重要な役割を果たすのは「数字」。すべてのカードの数字はパッと見てわかるデザインにしています。
また、ゲームの最後に集めたリスさんのポイント(数)の合計を計算することになるのですが、数が数えられるお子様はリスさんカードの上部の「●(丸)」をすべて数えるのことに挑戦してみても良いですし、計算ができるお子様にとっては足し算の良い練習になるのではないかと思います。
いざ息子とプレイ!
3歳の息子と家族でプレイしたところ息子は楽しんでプレイしてくれました!そして驚くことに...通算すると息子が一番勝っているのではないでしょうか。他のプレイヤーの裏をかくことが重要なゲームなので、考えすぎると大人が逆手に取られてしまうことも少なくありません。
知り合いや大人だけでのプレイも検証しましたが、ルールがシンプルなのですぐに始められて、駆け引きが面白いと好評でした。運というよりは自分の選ぶ選択の連続なので、そこが面白さへと繋がっているのだと思います。
印刷データで配信する理由
このゲームをデータ配信しようと考えたのは、お家での家族時間を少しでも楽しくできたら!という想いです。幼稚園や小学校、保育園の先行きが読めない中で、自宅での遊びやお勉強の時間が増えているご家庭も多いと思います。私の息子もまだ保育園へは行けていない状況です。(2020年6月時点)そんな中で少しでもアナログゲームで家族の時間を楽しみ、学びにつなげていただければ、開発者としてこれほど嬉しいことはありません。
「印刷データの配信」というカタチにしたのは、実際のモノよりもデータをお渡しし、ご自宅で印刷できるほうが安心して楽しめるのではないかという想いです。印刷してカットするという工程ですが、手作りが楽しめるのも印刷データならではの魅力なのでは?と思います。
印刷データを配信するにあたって気をつけたこと
印刷データをもとに実際にご自宅でつくっていただくことを想像した時に「印刷データをどのように印刷すれば良いのか?」「どのようにカードを切ればいいのか?」「どうやってあそぶのか?」と疑問が次々に出てきました。印刷データを提供するには「つくりかたの説明」と「あそびかたの説明」が特に重要に感じました。
できる限りシンプルでわかりやすく。実際にお話してお伝えすることができない分、図を使いながら、より丁寧な説明を意識しています。印刷データ購入後の「つくる」→「あそぶ」がスムーズにできてはじめて完成!ということを実感しました。
第1作品として販売を開始!
「リスさんのおいでおいでゲーム」はこのように生まれました。そして、PRINT PLAY!の第1作品として無事に販売を開始することができたのです。
第2作品の開発が進行中
「リスさんのおいでおいでゲーム」の経験を経て、第2作品のゲームも現在進行形で開発しております。アナログゲームならではの、体を使って遊べる内容で企画中です!(内容が変わる可能性が十分にございます)
皆様にお楽しみいただけるように頑張ります!