彼女と私

彼女は秋に来た。

姿を見たのは一度だけ。
私は彼女が嫌で、会わずに済むよう全力だった。

ただ、ここは私のテリトリー。
負けられない戦いが始まった。

私は彼女の妨害を始めたが、
それを鼻で笑うように彼女は何度も来た。

彼女と私の冷戦は続き、
毎日来る彼女に私はだんだん諦めが芽生えた。

秋も深まる頃、妨害のなくなった彼女は
早々に私との間に蓋をした。
姿は見えなくなり、彼女のいた痕跡のみが残った。

私は私で忙しく、彼女のことを気にする間もなく
忙しなく冬を越えた。

ふと思い出し、外に出たのは桜の頃だ。
彼女の蓋があいていた。
どうやら旅立ったようだ。
ひっそり出発したのだろう。
…挨拶くらいあってもよかろうに。

そう思いながらも新しい春、新しい旅立ちを
私は心から祝福した。

そして今、ここに引っ越してきて2回目の秋が来る。

彼女の子供は帰ってくるだろうか?

去年より緑の増えた私のテリトリー、
1畳半のこのベランダに。

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