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バレンタインデーに思う、企業のダイバーシティ推進への向き合い方

こんにちは、プリンセススクゥエアーLGBTs担当のワカクサです。今年のバレンタインデーは金曜日でしたね。午後のコーヒー休憩の頃に、レズビアンの友人から連絡が入りました。

「ちょっと愚痴を聞いてくれる? 体調にも悪いだろうから電話でサクッと」

愚痴を言うにも相手に配慮する心遣いが嬉しいです。本題はというと・・・。

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友人の勤める会社は昨年、人事部内に「ダイバーシティ推進室」が設置されたばかり。企業のダイバーシティ(Diversity/多様性)推進と言えば、まず女性活躍推進法(こちら)が浮かびます。2024年の日本のジェンダーギャップ指数は146ヶ国中、118位(こちら)。特に経済・政治の分野でジェンダーギャップが大きく、男女の賃金格差の縮小や女性管理職比率の向上が求められています。

また育児・介護休業法(こちら)もたびたび改正されています。子どもの年齢に応じて柔軟な働き方を認めると同時に、介護離職する労働者を減らすことが目的です。障害者雇用促進法(こちら)では、従業員数が一定以上の企業に法定雇用率以上の障害者を雇用することを義務付けています。

これまで労働者と言えば、心身ともに健康で8時間フルタイムで勤務し、育児や介護に関わらない日本語ユーザー、つまり健常者の異性愛者の日本人のシスジェンダー男性を想定していました。しかしそれ以外の人も労働者として企業活動に参加することで、労働力不足の解消や過去にない発想からサービスを生み出すことができる。さあダイバーシティ推進だ! こんな流れが日本にはあります。

約1年前、友人は「やっとウチにもダイバーシティ推進室ができたよ~!」と喜んでいました。

「室長がミドル世代の女性なの! ウチの会社、女性社員が育児と仕事の両立が難しくて辞めちゃうことが多くて。そうしたら自動的に在籍年数が長い社員は男性ばかりになるじゃない。そしたら管理職も男性、と言うかオッサンばかりになって、新しい企画に及び腰になるんだよね。男性が育休を取るなんて経験してない人たちだから、その部下の男性社員だって育休取りたいです、なんて言いにくいじゃない。個人的にはLGBT研修やりましょうよって何回言ったことか! だからダイバーシティ推進室には期待してるの。今年は研修ができたらいいなあ。そのときは講師に呼ぶからよろしくね!」

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「でさ、今日バレンタインデーだからって、室長が人事部の男性社員にチョコレートを配って回ったの。もうがっかりどころじゃないわ。『義理チョコだから~』じゃないんだわ。怒りでコーヒーが淹れられそう」
「ダイバーシティ推進室の室長がそれ!? コーヒーどころじゃないわ、焼き芋が焼けそうよ」

私は企業のダイバーシティ推進の根幹には<人権を守る>という考え方が必須だと思っています。労働者として二流三流とされてきた女性や障害者をひとりの労働者として尊重し、労働力のみ期待されてきた男性も家事や育児に関わるひとりの人間として尊重する。そういったパラダイムシフトのもとに、企業はダイバーシティ推進の施策を考えるべきだと思っています。

しかし友人の会社のダイバーシティ推進室長は、「バレンタインデーは女性が男性にチョコレートを渡す日」という、シスジェンダーで異性愛者しか想定されていない恋愛と資本主義がマリアージュした慣習を疑いもせず、追認する行動を取りました。よりによってダイバーシティ推進室長が!

おそらく、友人も私もここが最も怒りを感じたポイントです。こと性別について言うなら、女性と男性の性別役割分業は企業において真っ先に問題視されてきたはずです。男女雇用機会均等法(こちら)をはじめ、総合職(=男性)・一般職(=女性)といった職位区分を再考する動き(こちら)、男性はスーツにネクタイ、女性は化粧してスカート、といったドレスコードに反対する#就活セクシズム(こちら)、性別に関する無意識の思い込み(アンコンシャスバイアス)に対しての男女共同参画局の啓発活動(こちら)などを知っていれば、何が問題かわかるはずです。

「女性がバレンタインデーにチョコレートを配ったら、男性はホワイトデーにはお返しを考えないといけなくなるし、それは双方の経済的・時間的負担です。今までやってきたからという理由で配るくらいなら止めましょう。そのリソースを家族との時間や、自分の趣味や自己研鑽に使ってください。また女性から男性に、男性から女性に、というルールも他人に期待するものではありません。女性でも男性でもそうでない人でも、やりたい人は各人でやってください」とでも言ってくれれば、私たちの中で株が上がったのに!

「会社の考えるダイバーシティ推進って何だろうね? 会議はオッサンたちでやるから、コピー機の紙が切れたら補充してくれて、宅配便が来たら取りに行ってくれて、お客さんが来たら出迎えてお茶を淹れてくれる雑用係を安く長く雇いたいです、ってこと? ダイバーシティ推進室はできたけど、実際のところ自分に期待されてることは変わらないのかと思うと、モチベーションがダダ下がりだわ」

そんなふうにため息をつく友人に、私の体力が回復したらチョコレート尽くしのアフタヌーンティーのカフェに行くことを約束して電話を切りました。チョコレートで受けたダメージはチョコレートでしか回復できないのです。

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皆さまも会社にもダイバーシティ推進の取り組みはありますか? その性質に逆行するような慣習はありますか? 取り止めになったイベントはありますか? なぜ続けるのか、止めるのか、説明はありましたか?

日常のちょっとしたことに、その人の、その企業の、ダイバーシティ推進への向き合い方、あるいは本気度が見えるものです。これからも共によりよい社会を考えるきっかけを発信していきますね。

次回はひな祭りの日を前に、「トランスジェンダーの日」の現状をご紹介し、いただいたご質問に答えて参ります。お楽しみに!

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