再会　超短編

「久しぶりね」



「久しぶりだな」



「何年ぶりかしらね？」



「さあね、今更何なんだ。自分勝手が過ぎるだろ」



「うん。でも、会いたくなっちゃったから」



「君はいつだってそうだ。俺の都合なんてまるでお構い無しで」



「ごめんなさい。でもね、それでもあなた、私の事ずっと好きだって言ってくれてたじゃない」



「そんな昔の話もう忘れたよ」



「あら、そうなの？」



「ああ。俺はあの日君を失ってから必死の思いで何とか立ち直ったんだ。今更刺激しないでくれよ」



「そっか。立ち直れたのね、偉いじゃない」



「全く。君は相変わらずだな」



「そうかしら？あなた結婚したのね」



「ああ。もうすぐ2人目の子供も産まれる」



「そうなのね、幸せそうで良かったわ」



「君も元気そうだな、なんてそんな言い方はおかしいか」



「ふふ、確かにそうね」



「笑えないよ。それより何か用事があって会いに来たんじゃないのか？」


「ううん。別に本当に少し顔が見たかっただけ。元気そうで良かった。ありがとう。じゃあもう行くわね」



「いや、あの、ちょっと待って、」



「どうしたの？」



「どうして、何故、君は死ぬ事を選んだんだ？」



「何故？んー。何でだろう？もう忘れちゃったわ」



「本当に君は勝手だな。君が死んだ後、僕がどれだけ辛い思いをしたのか君に分かるか？」



「そうね。じゃあ、あなたのせいよ。私はあなたの事を愛し過ぎてしまった。だから、一番幸せな時に死ぬ事を選んだの」



「え」



「知らないの？大切な物の方が直ぐに擦り切れちゃったり壊れたりするものなのよ」



「でも、死んでしまったら壊れるどころか何もかもが全部終わりじゃないか」

「ううん。失う事の方が怖かったのよ。だったら全部無かった事にする方が良いかなって」

「そんな馬鹿な話」

「ふふ、マヌケな顔しちゃって、あなた少し老けたみたいね」

「なんだよ、当たり前だろ」

「なーんて全部冗談よ。あなたのせいじゃないわ。でも、これ以上話すつもりなら、あなたも一緒に連れて帰っちゃうわよ」



「そんな、ちょっと待ってくれよ」



「相変わらずね。そんな事私に出来る訳ないじゃない。それに私にだってもう彼氏くらい居るのよ」



「死んでるのに？どうせそれも冗談だろ」



「どうかしらね」



「まぁ君は相変わらず綺麗だからな」



「何よ。仕返しのつもり？でも、そう言ってもらえるなら死んだ甲斐もあるってものね」



「どうだろうね」



「じゃあ私、本当にもう行くわね」



「そうか、そうだな。じゃあ、元気で」



「うん。そうね、私は死んでも元気だもの。でも、あなたはあまり長生きしなくて良いから早く会いに来てね」



「うわ、たまらないな」



「待ってるわね」



「勘弁してくれよ。でも、これでようやくちゃんとお別れが出来る気がする」



「そうね。ずっと勝手ばかりでごめんなさい」



「慣れっこだよ」



「ありがとう。じゃあ、さよなら」



「うん。さよなら」