芯のないペンシル
気付けば34歳になった。
思い描いていた姿はそこには無く、ただ惰性で日々を過ごしている。
それなりに言われたまま生きてきた。
よくわからない理由で、小学生の時に習っていた剣道では主将。中学では生徒会副会長。
高校に入り、クラス委員長に販売実習の店長。水泳部の部長も務め3冠王になった事もある。
大学に進んでもゼミの幹事を務め、そのまま会社員に。
辞めたかった会社をうまく辞めきれず、言われたままの配置転換を経てだらだらと6年続けた。
無論、それなりに一生懸命やってきた。
一生懸命やればうまくいく、わけではないが。
会社を辞め、フリーターのような生活を謳歌していた頃、大学の先生の紹介で先輩と出会った。
地域おこし協力隊という制度を使い、ある町の臨時職員のような立場で町おこしの仕事をした。
といっても、基本的には言われたことを卒なくこなすことがメインで、
自発的にこれと起こしたことは数えるほどしかない。それでもそれなりにやってきた。
地域おこし協力隊には期限があり、ほとんどの人が起業、創業などを経て定住に繋げるという制度だ。
町の期待も感じていた僕も先輩に言われるがまま会社を作った。約3年間、言われたことをやった。
身体が壊れた。
うまくできなかった。
上手に変換してくれるパソコンが無くなったら、言われたことすら記せなくなった。
カチカチと音を立てるだけのペンシルだけが残った。
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