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口腔環境と身体機能

口腔と身体機能には深い関係があります。
健康な身体は口から作られるところが大いにあるのです。
今回は口腔と身体機能の関係について過去の研究から解説していきたいと思います。


1. 口腔の健康が全身に影響する理由


食事をすることは単に栄養を摂るだけでなく、咀嚼(そしゃく:噛むこと)や嚥下(えんげ:飲み込むこと)などの機能を使うことで、体全体の機能にも影響を与えます。特に高齢になると、口腔機能の低下が フレイル(虚弱) につながりやすいことが分かっています。


☑︎口腔と身体機能のつながり
• しっかり噛める人は 筋力が維持されやすい
• 噛むことで 脳が刺激され、認知機能が低下しにくい
• 口腔内の細菌が増えると 全身の炎症や病気のリスクが上がる

例えば、高齢者の 7.4〜8.7%がフレイル に該当し、さらにその予備軍(プレフレイル)は 40.8〜48.1% にもなります。フレイルが進行すると、筋力が低下し、転倒のリスクが増えたり、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)を起こしやすくなったりします。

2. 口腔と筋力・歩行能力の関係


近年の研究では、「噛む力」と「筋力」には深い関係があることが明らかになっています。弘前大学の調査では、40〜79歳の男女を対象に 歯の本数と握力・歩行能力の関係 を調べたところ、以下の結果が得られました。
• 男性は歯の本数が多いほど全身の筋肉量が多かった
• 女性は歯の本数が少ないと歩くスピードが遅くなった

また、口腔の健康が良好な高齢者は 筋力低下(サルコペニア)のリスクが低く、転倒しにくい ことも報告されています。

なぜ噛むことが筋力に関係するのでしょうか?
その理由は 噛む刺激が三叉神経を通じて脳を活性化 させるからです。脳が活性化すると、運動機能の調整がスムーズになり、筋力の維持につながります。

3. 口腔ケアで予防できる病気


口腔の健康は、以下のような病気とも深く関わっています。


① 誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)

食べ物や唾液が誤って気管に入り、肺に細菌が侵入することで起こります。高齢者の肺炎の約70% は誤嚥が原因とも言われています。

予防策:口腔ケアで口の中の細菌を減らすことが重要! 


② 糖尿病

歯周病が悪化すると、炎症性物質(IL-6やTNF-α) が血液中に増え、インスリンの働きを妨げることが分かっています。
糖尿病患者の 約50%が歯周病 にかかっていると言われており、歯周病の治療をすると血糖値が改善する という報告もあります。

③ 心疾患・脳卒中

歯周病菌が血流に入り込むと 動脈硬化を促進し、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高める ことが研究で示されています。
実際に、心疾患のある患者の動脈内から 歯周病菌(Porphyromonas gingivalis) が検出されたケースもあります。

④ 認知症

歯が少ない人ほど認知症のリスクが高いことが分かっています。
理由は、
1. 噛む刺激が脳を活性化するため
2. 歯が少ないと栄養状態が悪くなるため

つまり、歯を大切にすることは 脳の健康にも直結 しているのです。

4. 今日からできる簡単な口腔ケア方法


毎日の口腔ケアが、全身の健康を守るカギ です。
以下の方法を試してみましょう。

① 正しい歯磨き
• 1日2回以上、3分以上しっかり磨く
• 歯ブラシは 1ヶ月ごとに交換
• 歯間ブラシやフロスを使い、歯と歯の間の汚れも落とす

② 舌を清潔にする
• 舌苔(ぜったい)を取るために、舌専用ブラシ を使う
• 奥から手前に優しくこする

③ よく噛んで食べる
• 1口 30回 噛む習慣をつける
• 硬めの食材(根菜やナッツなど)を取り入れる
• 左右の奥歯を均等に使う

④ 唾液を増やすための体操
• 「パタカラ体操」
• 「パ・タ・カ・ラ」 とはっきり発音する(10回×3セット)
• 口周りの筋肉が鍛えられ、唾液の分泌が促進される

まとめ


「たかが歯」と思われがちですが、口腔の健康は全身の健康を守る重要なカギ です。
歯をしっかりケアすることで 筋力の維持・誤嚥の防止・生活の質の向上 につながります。

今日からできる簡単な口腔ケアを続けて、健康な毎日を送りましょう!

みなさんの口腔ケア習慣はどうですか?
「これを試してみた!」など、コメントでぜひ教えてくださいね!

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