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徒然『たっちゃんのドリル』

ーチャレンジ1年生・4月号・こくごドリルーー
日に焼けた、その冊子を、私はずっと大事に取ってある。長男のたっちゃんが小学校にあがる時、まさに親も子も胸ふくらませていた頃。私はそのドリルを一緒にやった記憶は全くない。きっと、一人でやったんだろうなぁと想像する。

馴染みのキャラクターが描かれたその冊子は、カラフルで楽しそう。表紙をめくると、最初に『線のなぞり書き』の単元。そこには直線やうずまきに少しはみ出ながら線がなぞられている。小さいたっちゃんが、ペンを持って必死で描いてる姿が目に浮かぶ。

もう少しめくると『ひらながの書き』の単元。さかさまにしたことばを書くページだ。『さか』なら『かさ』と書く必要があり、少し難しい。たっちゃんの書いた答えも少し怪しくなっている。

 次の単元は『影のなまえ』。4つめにキツネの影があり、たっちゃんの書いたひらがなは『きつれ』このあたりから彼の暴走が始まる。うちわは『うちれ』、ねこは『れこ』、極めつけは、ももの字がちょうど鏡で映したように反対向きになっていたことだ。可笑しくて可笑しくてたまらない。

 最後の単元は、『からだの部分のなまえを書く』。笑った男の子がお腹を出している。『みみ』『くち』『はな』までは大丈夫。『へす』…へす?『ぬ』…ぬ?

日本中の一年生がこうして、字を覚えていくんだな…と思いながら、今は30歳を超え、ややこしいこと言ってくる長男だが、私はこのドリルをめくるたびに、6歳のたっちゃんに笑かされ、元気をもらうのだ。

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